今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 中谷 敏 社会福祉法人恩賜財団 大阪府済生会千里病院

監修: 伊藤浩 川崎医科大学総合内科学3教室

著者校正/監修レビュー済:2024/09/18
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 外科的手術が困難な場合の選択肢としてのMitraClipを追記した。

概要・推奨   

  1. 軽症の逆流は無症状である。高度となり血行動態に影響が出るほどになってくると、労作時息切れや動悸が出現する。心房細動が発症すると、自覚症状が顕著となる。
  1. 腱索断裂に伴う急性僧帽弁閉鎖不全症では、激しい左心不全症状が出現する。
  1. 聴診で収縮期雑音を聴取すれば、僧帽弁閉鎖不全症を考える(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 僧帽弁は弁輪、弁尖、腱索、乳頭筋、その付着する左室からなる僧帽弁複合体がうまく機能することにより、スムーズな開閉を行っている。僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁複合体の一部に障害が起き、弁尖間の接合が阻害されることにより僧帽弁逆流が生じる状態である。
  1. 健常人でも、心エコー図検査で軽度の僧帽弁逆流を認めることはしばしばある。これらは放置してよい。
  1. 僧帽弁閉鎖不全症は、弁尖、腱索、乳頭筋の器質的異常のために生じる一次性僧帽弁閉鎖不全症と、左室や左房の拡大または機能不全によって生じる二次性僧帽弁閉鎖不全症に分けられる。リウマチ熱が激減した昨今、一次性僧帽弁閉鎖不全症で最も多い原因は、変性(粘液腫様変性)に基づく弁尖逸脱であろう。多くの腱索断裂も、変性に伴うものと思われる。
  1. 僧帽弁逸脱は、軽度のものも含めればまれな病態ではなく、1,000人中20~60人に認められるという。
  1. 高度の僧帽弁閉鎖不全症では左房容量負荷を生じ、左房容量負荷は肺静脈圧増加を介して肺高血圧を惹き起こし、肺うっ血や運動時息切れを生じることになる。
    また、肺高血圧は、右心系への圧負荷によって右心系を拡大せしめる。拡大した右心室、右心房は、三尖弁輪拡大や右室内tetheringによって三尖弁逆流を起こす(<図表>)。高度の三尖弁逆流は上・下大静脈拡張を生じ、肝腫大、下腿浮腫を来す。
  1. 左房拡大は心房細動を惹き起こし、さらに、左房拡大に伴う弁輪拡大は弁尖接合を浅くして僧帽弁逆流量を増加させる。増加した逆流は、再び左房容量負荷となって弁輪を拡大させ、悪循環に入る。
  1. 病初期では、左室駆出率は正常またはそれ以上に保たれるが、左室拡大が顕著になり代償機転が破綻するにつれ、次第に駆出率が低下してくる。
問診・診察のポイント  
  1. 軽症の逆流は無症状である。高度となり血行動態的に影響が出るほどになってくると、労作時息切れや動悸が出現する。心房細動が発症すると、自覚症状が顕著となる。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
中谷 敏 : 報酬額(エドワーズライフサイエンス(株))[2024年]
監修:伊藤浩 : 講演料(第一三共(株),大塚製薬(株))[2024年]

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僧帽弁閉鎖不全症(含む僧帽弁逸脱症)

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