今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 野村威雄 新別府病院 泌尿器科

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2024/05/29
参考ガイドライン:
  1. ヨーロッパ泌尿器科学会(EAU):EAU guidelines on urological trauma (2005)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
尿道外傷:
  1. 泌尿器外傷の50%程度を占める。
  1. ほとんどは男性であり、女性はまれである。
  1. 転落、交通事故、産業事故、打撲、スポーツ事故などの外傷によるものに加え、経尿道的処置による場合(医原性尿道損傷)がある。
  1. 尿道損傷の程度によりグレードI挫傷(<図表>)、グレードII伸展損傷、グレードIII部分断裂(<図表>)、グレードIV完全断裂(尿道の離解<2cm)(<図表>)、グレードV完全断裂(尿道の離解>2cmあるいは前立腺や腟まで達する)
 
尿道損傷グレードI

尿道延長を認めるが、明らかな造影剤の尿道外溢流を認めない。恥骨結合の解離を合併している。

出典

From Mirvis S E, Dunham C M 1992 Abdominal–pelvic trauma. In: Mirvis S E, Young J W R (eds) Imaging in trauma and critical care. Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, pp 145–242, with permission.
 
尿道損傷グレードIII

後部尿道損傷部から尿生殖隔膜の上下に造影剤の溢流を認める。

出典

From Mirvis S E, Dunham C M 1992 Abdominal–pelvic trauma. In: Mirvis S E, Young J W R (eds) Imaging in trauma and critical care. Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, pp 145–242, with permission.
 
尿道損傷グレードIV

膀胱頚部および近位後部尿道損傷部(矢印)から造影剤の溢流を認める。骨盤左半側の垂直方向への偏移を認める。

出典

From Mirvis S E, Dunham C M 1992 Abdominal–pelvic trauma. In: Mirvis S E, Young J W R (eds) Imaging in trauma and critical care. Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, pp 145–242, with permission.
 
  1. 前部尿道損傷(球部から遠位の尿道)と後部尿道損傷(膜様部から前立腺部尿道)に大きく分類される。
  1. 前部尿道損傷では球部尿道損傷が多く、騎乗型損傷が原因となることが多い。外傷性尿道損傷のうち最も頻度が高い。
  1. 後部尿道損傷では膜様部尿道損傷が多く、ほぼ100%骨盤骨折を伴い緊急性が高い。特に両側恥骨枝骨折に伴うことが多い。
  1. 振子部尿道損傷は、振子部の可動性がよいためまれである。陰茎折症に合併して生じることがある。
  1. 前部尿道損傷では尿道出血に加え、排尿困難、陰茎・陰嚢部の蝶形皮下出血斑などが認められる。
  1. 後部尿道損傷では少量の尿道出血、排尿困難を認め、肛門周囲の輪状出血斑が認められる。出血多量のため前立腺は触知不能となり、出血性ショック状態に陥る可能性が高い。
  1. 尿道造影にて前部尿道損傷では、造影剤の陰嚢あるいは会陰部への浸潤を認め、後部尿道損傷では膀胱周囲への溢流を認める。
  1. 受傷直後の強引な尿道カテーテル挿入は禁忌である。
  1. まずは、膀胱瘻造設を試みる。
 
自己抜去による尿道損傷:
  1. 主に高齢者に多くみられるが、乳幼児にも認められる。
  1. 手術後の不穏・せん妄状態や精神疾患合併患者においても認められる。
  1. 移動時に採尿バッグのチューブが引っ掛かることで、強い力がかかり尿道留置カテーテルが抜去されることがある。
  1. 高齢女性の場合、尿道括約筋の弛緩のために尿道径が開大する場合があり、わずかな外力で尿道留置カテーテルが抜去されることがある。
  1. 男性の場合、尿道留置カテーテルのバルーンが膨らんだまま自己抜去されると膀胱・尿道粘膜の損傷の結果、おびただしい尿道出血を来す場合がある。
  1. 尿道出血に加え、陰茎皮下、陰嚢内、会陰部への出血や尿溢流を認めることがある。
  1. ハサミなどによる尿道留置カテーテル切断による自己抜去では尿道損傷は少ないが、膀胱内異物が生じる場合がある。
  1. バルーンの破裂やカテーテルの切断を引き起こし、カテーテルの一部が膀胱内に残存する可能性がある。
  1. 自己抜去による尿道損傷に伴う尿道出血は、通常は尿道カテーテル再留置による尿道圧迫にて止血されるが、尿道損傷が高度の場合は再留置が困難となり、一時的な膀胱瘻管理が必要となる。
  1. 診断は容易であるが、尿道留置カテーテルが途中で切断されていないか確認することが重要である。
問診・診察のポイント  
尿道外傷:
  1. 受傷機転(骨盤骨折、陰茎・会陰部への外傷など)および外尿道口からの出血から推測可能である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
野村威雄 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:中川昌之 : 特に申告事項無し[2024年]

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尿道損傷(自己抜去の対応含む)

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