今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 大川清孝 大阪市立十三市民病院 顧問/淀川キリスト教病院 消化器内科顧問

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構 国府台医療センター

著者校正/監修レビュー済:2024/05/29
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『JAID/JSC感染症治療ガイド2023の腸管感染症』に沿って、抗菌薬の治療について改訂した。
  1. エンピリックテラピーは、1)血圧低下や悪寒戦慄など菌血症を疑う場合 2)高度の脱水やショックなど入院加療を要する場合 3)免疫不全や人工血管・人工関節置換術後など合併症リスクの高い場合 のようなred flagに合致する場合に行う。また、患者の状態に応じて経口か点滴静注かを選択する。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 感染性腸炎とは、病原体(細菌、ウイルス、寄生虫など)が感染することによって腸に炎症を来す疾患である。人体に入る前にすでに産生されていた毒素が下痢や嘔吐などの症状を引き起こす生体外毒素産生型は厳密には感染性腸炎とは呼べないが、本稿では感染性腸炎に含める。
  1. 原因となる病原体は多種多様である。
  1. 感染性腸炎を起こす代表的な病原体(原因食、潜伏期、血便・腹痛・発熱の有無):表<図表>
  1. 感染性腸炎を起こす病原体ではヒト-ヒト感染(伝染)を高頻度に起こすものもからまったく起こさないものまでさまざまである。
  1. 感染性腸炎の抗菌薬治療は多様な原因微生物と伝染程度の異なりから一定ではない。
  1. 食中毒は経口的に侵入した病原体・毒素・薬物などさまざまな原因物質で起こる疾患の総称である。食中毒の症状は下痢・嘔吐のみでなく、神経症状などを含めて多様である。
  1. 感染症法での届出と食中毒の届出は別個に行われる。
 
法律に関する規制:
  1. 感染症法による規制では、コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスは、3類感染症に分類され、診断した医師は、ただちに最寄の保健所に届け出、また必要に応じて患者及び無症状病原体保有者について就業制限等の措置をする必要がある。また、アメーバ赤痢は、5類感染症(医師による届け出)に分類され、診断した医師は、7日以内に最寄の保健所に届け出る必要がある。感染性胃腸炎は感染症法の5類感染症定点把握疾患であり、全国300カ所の小児定点医療機関から報告される。感染性胃腸炎の報告にあたっての原因病原体の特定は求められていない。小児のため、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎が多くを占める。また、集団食中毒を疑った場合は、ただちに最寄りの保健所長にその旨を届け出る必要がある。ロタウイルスによる感染性胃腸炎は、5類感染症定点把握疾患に定められており、全国約500カ所の基幹定点から毎週報告がなされている。
  1. 学校保健安全法では、コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスは、第三種感染症に指定されており、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」を出席停止の期間の基準としている。
  1. 食品衛生法では、食品、添加物、器具若しくは容器包装に起因して中毒した患者若しくはその疑いのある者(以下「食中毒患者等」という。)を診断し、又はその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない( 食中毒患者の届出の義務 )。
問診・診察のポイント  
  1. 診察ポイントは症状(急性の下痢・嘔吐)の原因が感染か、感染以外かを想定することである。感染以外では病原体以外の食中毒、薬剤性、食物アレルギー、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患初期などがある。なお、赤痢アメーバや他の腸管寄生虫疾患では慢性下痢が生じる。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
大川清孝 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),大塚製薬(株))[2024年]

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感染性腸炎

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