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著者: 松尾光馬 東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座

監修: 戸倉新樹 掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 参与/浜松医科大学 名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2023/09/13
参考ガイドライン:
  1. 日本性感染症学会:性感染症診断・治療ガイドライン2020
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 梅毒患者は急増しており、2022年には1年間報告数が12,000名を超えた。
  1. 2022年1月から早期梅毒であれば1回の筋注で治療が終わる持続ペニシリン製剤が使用可能になった。

概要・推奨   

  1. 第1期、第2期を含めた早期梅毒の治療を行う場合、アモキシシリン(サワシリン、パセトシン)を1回500㎎、1日3回、28日間投与することが推奨される(推奨度1)
  1. ベンジルペニシリンベンザチン筋注を、早期梅毒(第1期、第2期)では単回、後期梅毒では週1回で計3回投与することが推奨される(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum subspecies pallidum:T.p.)による慢性の全身感染症であり、病期や宿主の状態により幅広い臓器に多彩な症状を引き起こす。
  1. 感染のほとんどは性交など濃厚な接触により起こり、輸血や針刺しなどを介する感染は稀である。
  1. 皮疹や臓器症状などを呈する顕症梅毒と、臨床症状は認められないが梅毒血清反応が陽性な無症候梅毒に分けられる。
  1. 感染からの期間、特徴的な臨床症状により第1期から第3期までに分類される。
  1. 感染症新法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)では五類感染症に分類され、診断から7日以内に最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に報告しなくてはならない全数把握の疾患である。
  1. 梅毒の総報告数は、2000年以降2003年まで減少し500名ほどとなったが、2004年以降、無症候、早期顕症1・2期の症例が増えた。2013年には1,228名、2014年には1,683名、2016年では4,518名、2017年では5,000名、2018年には7000名を超え、2021年は78,750名、2022年は12,966名と過去最高の感染者数となった。
  1. 2010~13年の増加は男性が主であり、MSM(men who have sex with men)を中心としたコミュニティーのなかでの感染拡大が主なものと考えられた。
  1. 近年では異性間での感染が増加し、特に20歳台の女性における増加が顕著である。また、交流サイト(SNS)の普及により不特定多数との性交渉が広がっていることも一因と考えられる。
  1. 先天梅毒の報告は減っておらず、妊娠初期の梅毒抗体検査が陰性でも、性的接触のある場合は妊娠中期、後期の追加スクリーニングを検討する。
 
梅毒報告数の年次推移(男女総計:2010~2019年)

国立感染症研究所:発生動向調査年別報告数一覧(全数把握)より作成
https://www.niid.go.jp/niid/ja/ydata/10410-report-ja2020-30

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
  1. 皮膚や粘膜の微細な傷より感染したT.p.は感染局所で増殖する。平均3週間の潜伏期の後、軟骨様硬で紅色局面を呈する初期硬結、その後潰瘍を呈する硬性下疳となる。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
松尾光馬 : 報酬額(マルホ(株)),講演料(マルホ(株))[2024年]
監修:戸倉新樹 : 講演料(サノフィ(株),日本イーライリリー(株),アッヴィ合同会社,協和キリン(株))[2024年]

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梅毒(皮膚科)

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