今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 髙橋愼一 埼玉医科大学国際医療センター

監修: 内山真一郎 国際医療福祉大学臨床医学研究センター

著者校正/監修レビュー済:2024/09/18
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 脊髄梗塞の診断にはMRIが推奨される(推奨度1)
  1. 脊髄梗塞に対する治療法は、脳梗塞と異なり、ヒトでの臨床試験で有効性が確立されたものはない。
  1. 脊髄梗塞の予後は、さまざまで脊髄の障害の程度と原因による。椎間板ヘルニアの脱出した核からの線維性軟骨による塞栓の場合が最も予後が悪い。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 脊髄動脈は脳動脈に比べてアテローム性変化が少なく、また、側副血行路が発達しているため、脊髄梗塞は脳梗塞に比べきわめて頻度が少ない。脊髄梗塞の原因には多くの病態があるが、不明な場合も多い。臨床的に重要な原因は、胸腹部大動脈における解離性大動脈瘤、大動脈のアテローム硬化、大動脈の手術、大動脈からのアテローム塞栓などが挙げられる。
  1. 前脊髄動脈症候群は、前脊髄動脈の支配領域である脊髄腹側約2/3の領域に血流障害が生じ、急速に発現する対麻痺ないし四肢麻痺、病変レベル以下での解離性感覚障害(温痛覚のみが障害され、触覚、振動覚、位置覚は保たれる)、膀胱直腸障害などを特徴とする。発症年齢は若年者から高齢者まで幅広い、発症が急激で解離性感覚障害などを呈する典型例では、診断は容易である。MRIで急性期特有の脊髄腫大や脊髄前半部での高信号領域(拡散強調画像、T2強調画像)を認め、同部位がGd-DTPA造影で増強されれば確実な診断となる。病変部位は頚髄と胸髄、円錐部が多い。
  1. 後脊髄動脈症候群はまれな症候群であり、後脊髄動脈の支配領域である後索障害に由来する病変レベル以下の深部感覚障害、後角障害による病変髄節に一致した全感覚脱失、後側索にまで及んだ場合には運動麻痺、膀胱直腸障害などを呈する。
 
  1. 脊髄虚血の原因はさまざまであり、昔は梅毒によるものが最も多く、次いで、大動脈の動脈硬化であった。現在では大動脈瘤などの手術が増加し、心血管系の手術が原因となる場合が増加しているが、原因が特定されない場合も多い。(参考文献:[1][2][3][4]
  1. 脊髄虚血の原因には、血管炎(結節性多発動脈炎、ベーチェット病、巨細胞性動脈炎)、塞栓性(心房粘液腫、僧帽弁疾患、細菌性心内膜炎、卵円孔開存、突出した椎間板ヘルニアからの線維軟骨性塞栓)、全身性血圧低下(心臓呼吸停止)、外傷性動脈破裂、動脈瘤解離、大動脈狭窄、医原性(胸腰部交感神経切除術、側弯症外科的手術、大動脈撮影、腎動脈塞栓症、臍帯動脈カテーテル術、椎骨動脈撮影、大動脈手術など)、感染症(梅毒、真菌症、細菌性髄膜炎)、その他(鎌形赤血球症、コカイン乱用、抗リン脂質抗体症候群、クローン病、頚椎脱臼、大動脈硬化など)がある。
問診・診察のポイント  
  1. 発症の仕方(突然発症か徐々に進行したか)、下肢のみの麻痺なのか、上肢の麻痺もあるのかどうか、感覚障害はどのレベルからか、感覚障害は解離性感覚障害かどうか、膀胱直腸障害を伴っているかどうか、大動脈瘤などの手術を受けたかどうか、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化のリスク因子があるかどうか、などが問診、診察の重要なポイントとなる。画像診断では脊椎MRI検査で、脊髄を圧迫するような病変の有無、脊髄の髄内病変を明らかにする必要がある。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
髙橋愼一 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:内山真一郎 : 特に申告事項無し[2024年]

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脊髄梗塞

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