今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 濱田利久 国際医療福祉大学成田病院皮膚科

監修: 戸倉新樹 掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 参与/浜松医科大学 名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2022/03/30
参考ガイドライン:
  1. 日本皮膚科学会:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 皮膚リンパ腫診療ガイドライン2020
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版』に基づき、全面的に改訂を行った。

概要・推奨   

  1. ステロイド外用/紫外線療法に対して治療抵抗性の早期菌状息肉症(病期ⅡAまで)に対し、追加治療としてレチノイドはインターフェロン-γよりも推奨できるか?
推奨:治療抵抗性の早期菌状息肉症(病期ⅡAまで)に対し、追加治療としてまずはインターフェロン-γを提案する.GRADE 2D(推奨の強さ:弱い推奨、エビデンスの確信性:非常に低)
  1. 進行期菌状息肉症(病期ⅡB以上)に対する全身治療として、経口エトポシドはインターフェロン-γ、レチノイド、ボリノスタットよりも推奨できるか?
推奨:進行期菌状息肉症(病期ⅡB以上)に対する全身治療として経口エトポシドを第一選択としないことを提案する.GRADE 2D(推奨の強さ:弱い推奨、エビデンスの確信性:非常に低)
  1. 菌状息肉症の局面性・腫瘤性病変に対して、全身または病変局所の低線量(総線量4~20 Gy)電子線照射は、従来線量(総線量20~40 Gy)と比べて推奨できるか?
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
ポイント:
  1. 皮膚リンパ腫は、皮膚に原発もしくは皮膚と親和性が高い節外性リンパ腫の一群。
  1. T/NK細胞リンパ腫とB細胞リンパ腫に分類され、T/NK細胞リンパ腫が病型数、罹患患者数とも多いのが特徴。
  1. ⽶国の疫学調査では、年間100万⼈に12〜14⼈程度の罹患率[2]、わが国の⽪膚科専⾨施設が参加するレジストリでは、年間400人程度の罹患者数[3]
  1. 罹患者数の約半数は菌状息⾁症でもっともポピュラー[3][4]
  1. 菌状息⾁症・セザリー症候群は、臨床病期分類による生命予後の推定が可能[5][6][7]
  1. その他の皮膚リンパ腫においては、病型自体が一番の生命予後関連因子[8]
 
皮膚リンパ腫の病型

出典

大塚幹夫,伊豆津 宏二,大熊 加惠,他:日本皮膚科学会ガイドライン 皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 皮膚リンパ腫診療ガイドライン2020.日本皮膚科学会雑誌 2020;130:1347-1423.
 
成人T細胞白血病リンパ腫の皮疹タイプと生命予後

a:局面型
b:結節腫瘤型
c:紅皮症型
d:紫斑型
Sawada らによると、皮疹を局面型・結節腫瘤型・紅皮症型・紫斑型に分けると、それぞれの生存期間中央値は、114.9カ月、17.3カ月、3.0カ月、4.4カ月で、紅皮症型と紫斑型の生命予後がより不良であった。また各予後関連因子で多変量解析すると、結節腫瘤型と紅皮症型が独立した予後不良因子であった[10]

出典

著者提供
 
菌状息肉症:
  1. 皮膚に初発し、典型的には、斑、局面、腫瘤と進展する末梢性リンパ腫。
  1. 病理組織学的に、表皮向性を伴ったCD4(まれにCD8)陽性T細胞が浸潤する。
  1. 病初期は皮膚に限局し、進行は非常に緩徐のことも多い。
  1. アトピー性皮膚炎や乾癬に酷似することもあり、これら良性疾患との鑑別が必要。
 
菌状息肉症の臨床像と病理組織像

斑(紅斑)、局面から進展すると腫瘤を形成し得る。腫瘤は潰瘍形成をしばしば伴って強い疼痛を合併し得る。病理組織学的にはやや大型で脳回転状の核を有する異型リンパ球が表皮内に侵入し集塊(ポートリエ微小膿瘍)を形成するのが特徴で、これらは通常CD3陽性、CD4陽性のT細胞のphenotype を有している。

出典

著者提供
 
セザリー症候群:
  1. 紅皮症、リンパ節腫脹、末梢血の異常リンパ球出現(白血化)を3主徴とする。
  1. 菌状息肉症から進展する症例もみられるために一疾患群として取り扱われる。
  1. 疾患特異的5年生存率は3割程度とされ、不良である。
  1. 白血化の基準は、クローン性増殖を伴って(T細胞受容体遺伝子にクロナリティあり)、異常リンパ球が末梢血中に1,000個/μL以上出現。形態学的異常が目立たない場合、末梢血のフローサイトメトリーでCD4/CD8≧10、CD4+CD7-細胞≧40%、あるいはCD4+CD26-細胞≧30%のどれかを満たせばセザリー細胞と解釈できる。
 
セザリー症候群の臨床像・血液像

セザリー症候群は紅皮症・リンパ節腫脹・末梢血へのセザリー細胞の出現(白血化)を3徴候とする。フローサイトメトリーで、CD4/8比; 29.3、CD4+CD7-分画; 84%、CD4+CD26-分画; 83.6% と腫瘍性と考えられるCD4+T細胞分画が末梢血中に増加している。

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
  1. 詳細な現病歴が重要である。典型的な菌状息肉症では斑で初発し進行に従って局面・腫瘤を形成するが、腫瘤期でもこれらが混在する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
濱田利久 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:戸倉新樹 : 講演料(サノフィ(株),日本イーライリリー(株),アッヴィ合同会社,協和キリン(株))[2024年]

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