今日の臨床サポート

横隔膜神経麻痺

著者: 花岡正幸 信州大学 学術研究院医学系医学部内科学第一教室

監修: 久保惠嗣 信州大学名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2022/03/02
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 胸部画像検査にて横隔膜挙上を認めた場合、横隔膜神経⿇痺を疑う。
  1. 深吸気位と深呼気位で胸部X線写真(正面像)を撮影し、横隔膜位置に差がない場合、横隔膜神経⿇痺と臨床診断する(推奨度1)
  1. 呼吸不全や換気障害を評価し、⼊院や治療の適応を判断する(推奨度1)
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
花岡正幸 : 講演料(アストラゼネカ株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社)[2022年]
監修:久保惠嗣 : 特に申告事項無し[2022年]

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、前回改訂からのエビデンスを追記した。

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 横隔膜神経麻痺は、片側麻痺と両側麻痺に分けられる。
  1. 片側麻痺の約半数は無症状で、ほとんどが麻痺に対する治療を必要としない。
  1. 重症例ではⅡ型呼吸不全や拘束性換気障害を呈する。
 
右横隔膜神経麻痺

右頚部の手術操作による右横隔膜神経麻痺のため、右横隔膜が挙上している。

 
左横隔膜神経麻痺

左肺門部肺癌(胸部CT)による左横隔膜神経麻痺のため、左横隔膜が挙上している(胸部X線写真)。
a:胸部X線写真
b:胸部CT

出典

img1:  著者提供
 
 
 
  1. 典型的症例集:症例1(参考文献:[1]
  1. 病歴:70歳代の男性。Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群に対し、血管カテーテルによる高周波アブレーション治療を受けた。退院後より、特に体動時や臥位にて増強する息切れを自覚したため、数日後に再診した。
  1. 診察:胸部打診上、左肺底部で濁音を認め、同部の聴診では、呼吸音が減弱している。心音は清で、腹部に異常所見なし。
  1. 診断のためのテストとその結果:胸部X線写真上、左横隔膜の拳上を認め(<図表>)、X線透視では左横隔膜の呼吸性移動が消失していた。スパイロメトリーでは、混合性換気障害と機能的残気量の減少を認め、これらは臥位で顕著であった。横隔膜神経刺激試験では、左横隔膜の反応が消失していた。以上より、カテーテルアブレーション治療に合併した、左横隔膜神経麻痺と診断した。
  1. 治療:気管支拡張薬投与により、経過観察とした。
  1. 転帰:1年後には自覚症状が消失し、左横隔膜神経の回復を認めた。
  1. コメント:片側の横隔膜神経麻痺は無症状のことも多く、過小評価される場合がある。手術手技、穿刺手技、カテーテル手技などに合併した横隔膜神経麻痺は、自然回復する場合もある。
 
胸部X線写真 左横隔膜神経麻痺

左横隔膜の拳上を認める。

出典

img1:  Left phrenic nerve paresis complicating catheter radiofrequency ablation for Wolff-Parkinson-White syndrome.
 
 Am Heart J. 1996 Dec;132(6):1281-5.
 
  1. 両側麻痺は、呼吸困難や起座呼吸を呈し、呼吸不全に対する人工呼吸管理を必要とすることが多い。
 
両側横隔膜神経麻痺

前縦隔腫瘍摘除術の際、巻き込まれていた両側横隔膜神経をやむを得ず切断した。手術後に両側横隔膜の挙上を認める。
a:手術前
b:手術後

出典

img1:  著者提供
 
 
 
  1. 典型的症例集:症例2(参考文献:[2]
  1. 病歴:50歳代の女性。4カ月の経過で進行した呼吸困難のため受診した。6カ月前に上気道炎に罹患し、両上肢の疼痛と四肢近位筋の筋力低下が出現した。2カ月で疼痛は改善したが、その後から呼吸困難を自覚するようになった。
  1. 診察:発熱なし。経皮的動脈血酸素飽和度96%(室内気吸入下)。胸部の視診および聴診は異常なし。上肢近位筋の徒手筋力テスト4/5。筋萎縮は認めない。
  1. 診断のためのテストとその結果:胸部X線写真上、右側優位の横隔膜挙上を認めた(<図表>)。肺機能検査(スパイロメトリー)では、努力肺活量、1秒量、全肺気量、予備呼気量の減少を認めた。さらに、最大吸気圧および最大呼気圧の著明な低下を認めた。横隔膜神経刺激試験では、右横隔膜活動電位30mV、左横隔膜活動電位100mV(正常160 ~500mV)と低下を認め、両側横隔膜神経の軸索障害が示唆された。以上より、神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy)による両側横隔膜神経麻痺と診断した。
  1. 治療:1年の経過観察の後、右横隔膜縫縮術を施行した。
  1. 転帰:運動耐容能は改善したが、呼吸機能に有意な変化は認めなかった。
  1. コメント:横隔膜縫縮術は、原因疾患と経過を考慮し、慎重に判断すること。
 
胸部X線写真 両側横隔膜神経麻痺

右側優位の横隔膜挙上を認める。

出典

img1:  A 56-year-old woman with arm pain, dyspnea, and an elevated diaphragm.
 
 Chest. 2008 Jan;133(1):296-9. doi: 10.13・・・
 
  1. 横隔膜神経麻痺の原因は、肺や縦隔の悪性腫瘍の浸潤や、胸部や頚部の手術侵襲・カテーテル治療によることが多い。
問診・診察のポイント  
  1. 胸部や頚部の悪性腫瘍の症候を確認する。

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文献 

Abstract/Text
PMID 2688182
P G Wilcox, R L Pardy
Diaphragmatic weakness and paralysis.
Lung. 1989;167(6):323-41.
Abstract/Text Diaphragmatic weakness implies a decrease in the strength of the diaphragm. Diaphragmatic paralysis is an extreme form of diaphragmatic weakness. Diaphragmatic paralysis is an uncommon clinical problem while diaphragmatic weakness, although uncommon, is probably frequently unrecognized because appropriate tests to detect its presence are not performed. Weakness of the diaphragm can result from abnormalities at any site along its neuromuscular axis, although it most frequently arises from diseases in the phrenic nerves or from myopathies affecting the diaphragm itself. Presence of diaphragmatic weakness may be suspected from the complaint of dyspnea (particularly on exertion) or orthopnea; the presence of rapid, shallow breathing or, more importantly, paradoxical inward motion of the abdomen during inspiration on physical examination; a restrictive pattern on lung function testing; an elevated hemidiaphragm on chest radiograph; paradoxical upward movement of 1 hemidiaphragm during fluoroscopic imaging; or reductions in maximal static inspiratory pressure. The diagnosis of diaphragmatic weakness is confirmed, however, by a reduction in maximal static transdiaphragmatic pressure (Pdimax). The diagnosis of diaphragmatic paralysis is confirmed by the absence of a compound diaphragm action potential on phrenic nerve stimulation. There are many causes of diaphragmatic weakness and paralysis. In this review we outline an approach we have found useful in attempting to determine a specific cause. Most frequently the cause is either a phrenic neuropathy or diaphragmatic myopathy. Often the neuropathy or myopathy affects other nerves or muscles that can be more easily investigated to determine the specific pathologic basis, and, by association, it is presumed that the diaphragmatic weakness or paralysis is secondary to the same disease process.

PMID 2509822
Asher Qureshi
Diaphragm paralysis.
Semin Respir Crit Care Med. 2009 Jun;30(3):315-20. doi: 10.1055/s-0029-1222445. Epub 2009 May 18.
Abstract/Text The diaphragm is a chief muscle of inspiration. Its paralysis can lead to dyspnea and can affect ventilatory function. Diaphragmatic paralysis can be unilateral or bilateral. The clinical symptoms are more prominent in bilateral diaphragm paralysis. Ventilatory failure and cor pulmonale are usually seen in severe cases. Although an uncommon cause of dyspnea it still remains an underdiagnosed condition. A restrictive process is seen on pulmonary function tests in diaphragm paralysis. The symptoms, oxygenation and vital capacity, usually worsen in supine posture. The diagnoses is usually suspected on chest x-ray and clinical exam and confirmed with sniff test or phrenic nerve stimulation/diaphragm electromyography. In most unilateral cases no treatment is needed, especially in the absence of underlying lung disease. In more severe cases modalities such as diaphragmatic pacing or plication of the diaphragm can be used. In bilateral diaphragm paralysis or in patients with ventilatory failure continuous positive airway pressure or mechanical ventilation and tracheostomy are generally needed. Prognosis is good in unilateral paralysis, especially in the absence of underlying neurological or pulmonary process. Prognosis is usually poor in patients with advanced lung disease, bilateral paralysis, and chronic demyelinating conditions.

PMID 19452391

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