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著者: 巽浩一郎 千葉大学 真菌医学研究センター 呼吸器生体制御学研究部門

監修: 巽浩一郎 千葉大学 真菌医学研究センター 呼吸器生体制御学研究部門

著者校正/監修レビュー済:2024/02/21
参考ガイドライン:
  1. 日本呼吸器学会:新 呼吸器専門医テキスト
  1. 日本呼吸器学会:臨床呼吸機能検査 第8版
  1. 日本呼吸器学会:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン 改訂第2版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、呼吸不全患者における酸素療法(HOT)適応についての症例を追記した。
  1. 労作時低酸素血症は必ずしも労作時息切れの原因にならないことを追記した。 

概要・推奨   

  1. 慢性呼吸不全の治療には、①現在の症状軽減、②将来の危険因子の減少の観点が必要である(推奨度1)
  1. 胸痛、息苦しさで来院のときは、虚血性心疾患と同時に急性肺塞栓症も考慮する必要がある(推奨度1)
  1. 重症慢性呼吸不全患者に対する在宅酸素療法は生命予後を改善する(推奨度1)
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  1. 1回換気量は10 mL/kg以下(6~8 mL/kg程度)に、吸気終末のプラトー圧は30 cmH2O以下になるように設定する。1回換気量を設定する場合の体重は実測体重ではなく、predicted body weightを用いることが推奨される(推奨度2)
  1. FIO2は低酸素血症を防ぐために1.0で開始する。PaO2が低下している場合は、PEEPを初期設定(5 cmH2O)から3~5 cmH2Oきざみに上げて平均気道内圧を上昇させる。PEEPの上限は20 cmH2Oとすることが推奨される(推奨度2)
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  1. 換気量低下によるPaCO2の増加は頭蓋内圧亢進症状の危険性がない場合は容認し、過度に換気量を増加させない(permissive hypercapnia)。PaCO2はpH>7.2でPaCO2<80 mmHgを目安とする(推奨度3)
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  1. 肺高血圧症に対する在宅酸素療法(HOT)の導入に際して組織低酸素の有無を考慮する。心拍出量が低下している症例ではPaO2が60 Torrまで低下していなくてもHOTの導入を考慮する(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 室内気吸入時の動脈血酸素分圧が60 Torr以下となる呼吸障害、またはそれに相当する呼吸障害を呈する異常状態を呼吸不全と診断する。呼吸困難(息苦しさ)はイコール呼吸不全ではないことに注意する。
  1. 呼吸不全を、動脈血二酸化炭素分圧が45 Torrを超えて異常な高値を呈するもの(II型呼吸不全)と、然らざるもの(I型呼吸不全)とに分類する。
 
呼吸不全の分類

呼吸不全はI型(肺不全型)とII型(換気不全型)に分類される。

出典

著者提供
 
  1. 急性呼吸不全と慢性呼吸不全では、病態も治療方針も異なる。
  1. 慢性呼吸不全とは、呼吸不全の状態が少なくとも1カ月間持続するものをいう。なお、慢性呼吸不全の急性増悪は、急性呼吸不全ではない。
  1. 呼吸不全の基礎疾患ごとに病態と治療が異なるので、基礎疾患の把握が必要である。
 
  1. 動脈血酸素分圧が70 Torr以上あれば、飛行機での旅行は酸素なしで可能である(推奨度3)(参考文献:[1][2]
  1. まとめ:慢性呼吸不全の患者から飛行機旅行が可能かどうかの問い合わせがあったとき、どのように対応するか。
  1. 代表事例:飛行機の高度が高くなると、健常人でも低圧になるため酸素分圧は低下する。
  1. 結論:安静時の動脈血酸素分圧が70 Torr以上あれば酸素なしで搭乗可能である。
  1. 追記:安静時の動脈血酸素分圧が70 Torr以上でも、飛行機の中では低酸素血症に陥っている可能性は高い。
 
  1. 肺高血圧症で心拍出量が低下している病態では、動脈血酸素分圧が70 Torr以上でも組織低酸素を呈することがある。肺高血圧症では、動脈血酸素分圧の値にかかわらず在宅酸素療法(HOT)の導入を考慮する必要がある(推奨度2)(参考文献:[3]
 
肺高血圧症における心拍出量の違いによる組織低酸素(混合静脈血酸素分圧)の違い

肺動脈性肺高血圧症の自然経過として肺血管病変の進行は非可逆的Irreversibleである。肺抵抗血管の狭窄(肺血管抵抗PVRの増加)を治療介入により改善することは2020年の段階では認められていない。右室の代償機能が十分であれば、平均肺動脈圧(mPAP)はPVRの増加と並行する。しかし右心機能の低下に伴い心拍出量が低下するとmPAPも低下する。心臓から全身への酸素供給指標が混合静脈血酸素分圧(PvO2)である。PvO2は心拍出量が保たれているとき(心係数cardiac index ≥2.5 L/min/m2)には保たれているが、右室不全すなわち心係数低下時にはPvO2は低下する。組織低酸素を回避するためにはPaO2を高い値で維持する必要がある。千葉大学呼吸器内科での肺動脈性肺高血圧症を含むすべての右心カテーテル施行症例1,571例(1983~2017年)を須田理香らが解析し、心拍出量の差異による組織低酸素の差異を示した。

出典

Rika Suda, Nobuhiro Tanabe, Jiro Terada, Akira Naito, Hajime Kasai, Rintaro Nishimura, Takayuki Jujo Sanada, Toshihiko Sugiura, Seiichiro Sakao, Koichiro Tatsumi
Pulmonary hypertension with a low cardiac index requires a higher PaO2 level to avoid tissue hypoxia.
Respirology. 2020 Jan;25(1):97-103. doi: 10.1111/resp.13574. Epub 2019 May 16.
Abstract/Text BACKGROUND AND OBJECTIVE: The optimal oxygen supplementation needed to avoid tissue hypoxia in patients with pulmonary hypertension (PH) remains unclear. This study aimed to identify the arterial oxygen tension (PaO2 ) level needed to avoid tissue hypoxia which results in a poor prognosis in patients with PH.
METHODS: We retrospectively analysed the data for 1571 right heart catheterizations in patients suspected of having PH between 1983 and 2017 at our institution. Examinations were classified according to mean pulmonary arterial pressure (mPAP), cardiac index (CI) and the presence of lung disease, pulmonary arterial hypertension (PAH) or chronic thromboembolic PH (CTEPH). The PaO2 levels needed to avoid tissue hypoxia were compared in each subgroup.
RESULTS: The estimated PaO2 equivalent to a mixed venous oxygen tension (PvO2 ) of 35 mm Hg (tissue hypoxia) was 63.2 mm Hg in all patients, 77.0 mm Hg in those with decreased CI (<2.5 L/min/m2 ) and 57.0 mm Hg in those with preserved CI. Multivariate regression analysis identified mPAP, CI and PaO2 to be independent predictors of extremely low PvO2 . Similar results were observed regardless of the severity of PH or the presence of lung disease, PAH or CTEPH. The PaO2 level needed to avoid tissue hypoxia was higher in patients with mild PH and decreased CI than in those with severe PH and preserved CI (70.2 vs 61.5 mm Hg).
CONCLUSION: These findings indicate that a decreased CI rather than increased mPAP induces tissue hypoxia in PH. Patients with PH and decreased CI may need adjustment of oxygen therapy at higher PaO2 levels compared with patients with preserved CI.

© 2019 Asian Pacific Society of Respirology.
PMID 31099121

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
巽浩一郎 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:巽浩一郎 : 特に申告事項無し[2024年]

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