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著者: 安井敏之 徳島大学医歯薬学研究部 生殖・更年期医療学分野

監修: 小林裕明 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生殖病態生理学

著者校正/監修レビュー済:2023/10/25
参考ガイドライン:
  1. 日本産科婦人科学会日本産婦人科医会:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
  1. 日本産科婦人科学会日本女性医学学会:ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編 2023」の発行に伴いレビューを行い、以下を追記した。
  1. 2021年11月より天然型黄体ホルモン製剤が上市され使用可能となっている。
  1. COVID-19重症または中等症ではHRTを中止する(推奨度2)
  1. COVID-19軽症または無症状の場合はHRTは継続できる(推奨度2)

概要・推奨   

  1. マイナートラブルとして、出血、乳房痛、乳房緊満感について説明する。
  1. HRT(ホルモン補充療法)により増加する可能性のある疾患として、冠動脈疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症、乳がん、卵巣癌について説明する。
  1. 慎重投与ないしは条件付きで投与が可能な症例については、ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版を参照しながら説明する。
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まとめ・診察 

薬物療法のまとめ  
  1. ホルモン補充療法(hormone replacement therapy、HRT)とは、エストロゲン欠乏に伴う症状の治療や予防を目的に考案された療法で、閉経移行期以降の女性にエストロゲン製剤を投与する治療の総称をさす。子宮がある女性では、子宮内膜癌の発生を増加させないために黄体ホルモン製剤(2021年11月より天然型黄体ホルモン製剤が上市され使用可能となっている)を併用する。エストロゲンには女性の生殖機能を維持する以外に多くの生理機能を有しており、閉経後などの卵巣機能の低下した女性では、エストロゲン欠落症状やエストロゲンの欠乏に起因する機能障害は程度の差こそあれ必発である。したがって、HRTを閉経後女性のヘルスケアに対して用いることは、目的に合致し、かつ有効な手段になりうることは疑うことのない事実である。HRTは欧米では1970年代の中頃から使用され始め、20世紀の後半には閉経後女性の健康維持や改善に有効かつ有用な療法として高い期待が寄せられていた。
  1. 2002年のWomen’s Health Initiative(WHI)の中間報告以降、HRTの有する副作用のみに関心が寄せられ、HRTの普及は後退を余儀なくされた。
  1. しかし、その後のサブ解析やメタアナリシスにより、HRTは ①患者の年齢、②閉経後年数、③投与ルート、④薬剤の種類、⑤薬剤の量、⑥投与方法、⑦投与期間によって、WHI(2002)の報告とは異なる結果が出てきた。ここ数年の風潮として、WHI試験で後退したHRTの有用性を見直す機運が世界的に叫ばれるようになり[1][2]、HRTは冬の時代を抜けて、新しいステージに入ったといえる。さらに2017年春には、WHI研究中間報告の内情を暴露するような総説も発表され[1][2]、HRTは「2002年の振り出しに戻った」と考えられている。HRTは薬物療法の1つの選択肢であることに今も昔も変わりはない。HRTを選択するに当たっては、一人一人の女性について、そのリスクとベネフィットを慎重に判断することが重要である。
 
  1. WHIの報告(2002)
  1. Framingham Studyによれば、心血管疾患の発生は男女とも経年的に増加する。
  1. 50歳以前では男性が女性の3~4倍高率であるが、それ以降女性の頻度が急激に増加し、70歳代ではほとんど差がなくなる[3]
  1. 女性における発生頻度の急激な増加は加齢よりも閉経(低エストロゲン)によるところが大きく、HRTは脂質代謝改善作用をはじめ多くの抗動脈硬化作用を有し、心血管疾患リスクを低下させると信じられてきた。
  1. ところが、2002年に報告されたWomen’s Health Initiative (WHI) の中間報告によりこの考え方には変化が生じてきた。
  1. WHIとは、閉経後の女性における疾患の発症予防対策を総合的に評価することを目的に、米国の50~79歳(平均年齢63.6歳)の健康な一般女性を対象とした大規模前向き臨床試験である。
  1. そのうち、2002年に報告されたものはEPTのデータであり、EPT(エストロゲン・黄体ホルモン併用療法)では冠動脈疾患(CHD)、浸潤性乳癌、脳卒中、肺塞栓症のリスクを有意に増加させることが判明した。(Women’s Health Initiative (WHI, 2002) の結果 ―HRTに関するnon-adjusting results―:<図表>
  1. その結果、HRTはCHDの一次予防を目的として開始すべきではなく、これのみを主たる目的でHRTを行っている場合には継続すべきではないとの結論が下された。
  1. 一方で、WHIの報告は当初から対象年齢が高いという欠点が指摘されていた。さらに、8,500人の女性のうち50%が、以前に喫煙や現在の喫煙歴のある対象であった。これは、わが国の女性とは明らかに背景因子の異なる集団と言える。
  1. また、米国のデータをそのまま日本人に当てはめてよいかも疑問視されていたが、その後の検討により、HRTの効果や有害事象は患者の年齢、閉経後期間、薬剤の投与ルート、薬剤の量、薬剤の種類によって異なることが報告されるようになってきた。
  1. 特に閉経後のHRTが心・血管系へ及ぼす有害事象は、閉経後早期に開始すればそれほど大きな問題になることはないことも判明してきた。
  1. 2017年春には、WHI研究中間報告の内情を暴露するような総説も発表された[1]。ここ数年の風潮として、WHI試験で後退したHRTの有用性を見直す機運が世界的に叫ばれるようになり、HRTは冬の時代を抜けて、新しいステージに入ったと言える[4]
  1. WHI研究の見直しもこれまでに繰り返し行われてきたが、研究開始約18年間の経過についてまとめたMansonsらの論文[5]では、50~59歳でHRTを開始した女性の全般的な死亡ハザード比が、介入期間中に0.69、経過観察中に0.89と低下することが改めて示された。
  1. 追記:HRTを行うには最適の年齢がある。これを「The window of opportunity」という。
 
Women’s Health Initiative (WHI, 2002) の結果 ―HRTに関するnon-adjusting results―

HRTにより心筋梗塞、脳卒中、脳梗塞、乳癌の発生は増加する。しかし、骨粗鬆症による大腿骨頚部骨折、結腸・大腸癌の発症を防止する効果がある。
 
参考文献:
Rossouw JE, Anderson GL, Prentice RL, et al; Risk and benefit of estrogen plus progestin in healthy postmenopausal women: principal results from the Women’s Health Initiative randomized controlled trial. JAMA 2002; 288: 321-33  PMID:12117397

出典

堂地勉先生ご提供
薬剤投与前、フォローアップ時の問診のポイント  
  1. 毎回、更年期症状の有無の変化やマイナートラブル(出血の状態、乳房腫脹の有無、血栓症の有無など)を含む症状について問診する。10日間以上の長期あるいは平常の月経より多量の出血がある場合には、子宮内膜の検査(子宮内膜細胞診または組織診)を行う。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
安井敏之 : 未申告[2024年]
監修:小林裕明 : 講演料(MSD(株),中外製薬(株),アストラゼネカ(株),(株)メディカロイド),研究費・助成金など(シスメックス(株),(株)メディカロイド),奨学(奨励)寄付など(中外製薬(株))[2024年]

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