今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 大櫛哲史 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2023/08/16
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 最新の知見に基づき改訂を行なった。
  1. 「概要・推奨」を新たに書き下ろした。
  1. 全体的に文章や図表の位置の見直しを行った。
  1. 「棘」、「櫛」についてテキストと図表を追記した。
  1. 「鼻中隔前彎」についてテキストを追加した。
  1. 検査項目について「鼻腔内視鏡検査」、「鼻・副鼻腔CT検査」を追記した

概要・推奨   

  1. 鼻中隔彎曲症とは、鼻腔を左右に分ける鼻中隔が彎曲することによって鼻閉などの鼻症状を引き起こす疾患である。
  1. 成長に伴い彎曲が生じたものと、外傷に伴い彎曲が生じたものに大別され、症状としては鼻閉が高頻度に認められ、鼻閉に伴う嗅覚障害や鼻出血を認めることもある。鼻中隔彎曲に伴い外鼻が変形し斜鼻などの美容的問題を訴える患者も認める。
  1. 鼻中隔彎曲症の根本的治療は手術治療しかないが、本疾患ではアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの併存が多く、鼻閉などの症状はこれらの併存疾患の状況にも影響される。一般的にアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの併存疾患に対して薬物を用いた保存的治療を行い、改善を認めない場合に手術を選択する。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 鼻中隔彎曲症とは、鼻腔を左右に分ける鼻中隔が彎曲することによって鼻閉などの鼻症状を引き起こす疾患である。
  1. 鼻中隔は主に鼻中隔軟骨、篩骨垂直板、鋤骨で構成され、彎曲は鼻中隔の前下方から後上方に斜めに走る線上に発生しやすい。
  1. 若干の鼻中隔彎曲は成人の約7~9割に認められるが、より高度の彎曲を認め、鼻中隔彎曲に起因すると思われる症状を認めた場合に、鼻中隔彎曲症と診断される。
  1. 鼻中隔彎曲は、成長に伴い彎曲が生じたものと、外傷に伴い彎曲が生じたものに大別される。
  1. 鼻中隔彎曲はC型、S型に分かれる。突出部のタイプとしては棘や櫛などの分類がある。
  1. 棘は鼻中隔軟骨、篩骨垂直版および鋤骨が接合する部分にできる尖鋭な突起であり、櫛は鼻中隔軟骨と鋤骨が接合する部分にできる突起である。
  1. 鼻中隔前端より皮膚粘膜移行部付近までの間に彎曲を認める鼻中隔前彎と呼ばれ、術式選択の際に非常に重要なポイントとなる。
  1. 鼻中隔彎曲に合併し外鼻の変形を認めることがあり、手術の際外鼻の整容を含めた矯正が必要な場合がある。
 
鼻中隔を構成する骨および彎曲の分類

出典

著者提供
 
左に凸のC型の鼻中隔弯曲(立体的に合成された鼻内所見)

2つの頭位より得られた所見を頭のなかで立体的に合成し、鼻中隔彎曲の程度を詳細に評価する。本症例では左に凸の高度な鼻中隔彎曲を認める(コンピュータ合成画像)。

出典

森山寛:鼻・副鼻腔外来.耳鼻咽喉科外来シリーズ1,メジカルビュー社,1999;18
 
鼻中隔彎曲(棘および櫛)の鼻腔内視鏡所見

棘は中鼻甲介前端部の深さで認めることが多い尖鋭な突起である。
左側鼻腔に棘を認める。軽度の櫛も認める。棘により下鼻甲介が凹状となっている。

出典

著者提供
 
前彎の鼻腔内視鏡所見

鼻中隔前端より皮膚粘膜移行部付近までの間に彎曲を認めるものを前彎と呼ぶ。鼻閉の原因となり通常の鼻中隔矯正術では矯正が難しいため、注意を要する。
右側鼻腔にて前端から強く彎曲する鼻中隔を認める。彎曲が強いため下鼻甲介の観察が難しい。

出典

著者提供
 
  1. 鼻中隔彎曲症では、鼻中隔の彎曲に伴い代償性に下鼻甲介骨の偏位および下鼻甲介粘膜の肥厚を認め、症状の一因となる。また、中鼻甲介の蜂巣化なども認める。
  1. 症状としては、鼻閉が高頻度に認められ、鼻閉に伴う嗅覚障害や鼻出血を認めることもある。鼻中隔彎曲に伴い外鼻が変形し斜鼻などの美容的問題を訴える患者も認める。
  1. 急性・慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などを合併している場合が多く、これらの合併症についても正確に評価し、治療していくことが重要である。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 鼻閉の有無、片側か両側か? およびその経緯

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
大櫛哲史 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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鼻中隔彎曲症

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