今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 池田このみ 東京慈恵会医科大学附属第三病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2024/03/21
参考ガイドライン:
  1. 日本呼吸器学会:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
  1. 日本循環器学会:2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
  1. 日本肥満学会:肥満症診療ガイドライン2022
  1. アメリカ睡眠医学:Aurora RN, et al.: Practice parameters for the surgical modifications of the upper airway for obstructive sleep apnea in adults. Sleep. 2010 Oct;33(10):1408-13.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 最新の知見に基づき改訂を行なった。
  1. 疫学における有病率などを近年のデータに更新した。
  1. 病態に関して近年提唱された新たな病因・病態生理を加えた。
  1. 検査項目に関して全体的に更新し、さらに食道内圧検査および薬物睡眠下内視鏡検査「DISE」を加えた
  1. Sleep surgeryの治療として低侵襲手術(CWICKs)およびCPAP不忍容例に対して新しく保険収載された舌下神経電気刺激療法および肥満外科手術を加えた。
  1. 保存加療に関して全体的に更新し、軽症から中等症OSAに対してエビデンスが出ている口腔機能訓練の可能性について言及した(Guilleminault C, et al.Sleep Med. 2013 Jun;14(6):518-25)。
  1. 中枢性睡眠時無呼吸に関してエビデンスが出ているいくつかの治療法の可能性について記載した(Kent D, et al. J Clin Sleep Med. 2021 Dec 1;17(12):2507-2531、Guilleminault C, et al. Sleep Med. 2013 Jun;14(6):518-25)。
  1. CPAP不忍容の患者で上気道疾患を認める場合には、睡眠外科医へのコンサルトが推奨される(Kent D, Stanley J, et al. J Clin Sleep Med. 2021 Dec 1;17(12):2507-2531)。

概要・推奨   

  1. 閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)とは、いびきや睡眠中の無呼吸、日中の傾眠などを主訴とする疾患である。いびきによる騒音だけではなく、未治療の成人重症例では脳血管、心循環系など重篤な疾患の合併により、長期の生存率が低下することや、睡眠の分断による日中傾眠が交通事故や産業事故などの原因となるリスクが問題である。
  1. さらに、小児では、身体発育の遅れや、学校の成績の低下など成長に影響するため、発達や学業への影響を考慮し診療する必要がある。
  1. 診察検査では、全身所見(小児では胸郭変形の有無)、上気道所見、画像診断:頭部X線規格写真側貌、睡眠検査:簡易無呼吸診断装置、終夜ポリグラフ検査(PSG)(閉塞型無呼吸)などを行う。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 2014年版改訂の睡眠障害国際分類第3版(International classification of sleep disorder: ICSD-3)の大分類8つのうち、睡眠関連呼吸障害(Sleep Related Breathing Disorder、SRBD)には閉塞性睡眠時無呼吸障害群(Obstructive Sleep Apnea Disorders、OSAD)の他、中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome、CSAS)、睡眠関連低換気障害群、睡眠関連性低酸素血障害が含まれる。
  1. 中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome、CSAS, CSA)の中でチェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration: CSR)パターンを伴うものがCSA-CSRであり、心不全や脳卒中疾患患者で見られることが多い。CSAの患者の多くはOSAとの併存がみられる。頻度的には圧倒的にOSAの頻度が高いため、本邦だけでなく世界的にもSAS=OSAと考えられることが多い(本稿では以下OSAに統一)。
  1. 成人では受診の多くは、いびきや睡眠中の無呼吸、日中の傾眠、非回復性の睡眠、疲労感や中途覚醒などの不眠症状を訴えるが、高血圧や2型糖尿病、冠動脈疾患などの既往がある患者では自覚症状を認めない場合がある。
  1. 軽症を含めると30歳以上の成人の約3割がSRBDを有すると言われており、中等症以上の重症度の方は50代女性では1割、男性では1~2割に及ぶ[1]
  1. 小児の閉塞性睡眠時無呼吸はICSD-3で正式に成人のOSAとは独立した疾患として分類された。
  1. いびきは小児OSAの主要な症状で、我が国の疫学調査では、ほぼ毎日起こる習慣性いびきの頻度は10%であり[2]、そのうち、小児OSAと診断されるのは1%~4%程度と報告されている。
  1. この疾患の問題は、いびきによる騒音だけではなく、未治療の成人重症例では脳血管、心循環系など重篤な疾患の合併により、長期の生存率が低下することや、睡眠の分断による日中傾眠が交通事故や産業事故などの原因となり、社会的に大きな問題となり得ること、さらに、小児では、身体発育の遅れや、学校の成績の低下など成長に影響することである。したがって、身体疾患や社会への影響を考慮し診療する必要がある。
  1. 閉塞性睡眠時無呼吸発症には多くの要因が関連しており、Wellmanのモデル[3]によると以下の4つの要因が挙げられている。①以外の②〜④は上気道や中枢の機能的な要因となり、症例によってその割合が異なるため、多様な臨床像や重症度を示す。上気道の外科的手術治療が効果を示すのは、①の解剖学的要因に対してのみであり、全体としての治療戦略には他の要因に対する追加治療を検討する必要がある。
  1. ① 上気道の解剖学的要因
  1. ② 呼吸調節系の不安定性(loop gain)
  1. ③ 咽頭開大筋群の反応性
  1. ④ 覚醒閾値
 
問診・診察のポイント  
  1. 睡眠中の症状として、周期的な呼吸停止と大きないびきの有無。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
池田このみ : 特に申告事項無し[2024年]
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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