今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 北村歳男 熊本整形外科病院

監修: 竹下克志 自治医科大学整形外科

著者校正/監修レビュー済:2023/06/22
患者向け説明資料

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 胸郭出口症候群とは、第1肋骨、鎖骨、斜角筋で形成される胸郭出口およびその近傍における腕神経叢・鎖骨下動静脈の圧迫や伸張によって生じた上肢の痛みやしびれを有する疾患群である[1]
 
胸郭出口の解剖

前斜角筋は、第3から第6頚椎横突起に起始し、第1肋骨内側縁の前斜角筋結節に付着する。中斜角筋・後斜角筋は全頚椎横突起に起始し、第1肋骨中央から後方にかけての上前面に付着し、その後方部分は第2肋骨に付着している。この前斜角筋と中斜角筋と第1肋骨との間隙がいわゆる斜角筋三角であり、鎖骨下動脈と腕神経叢がここを通過する。鎖骨下静脈は、同じレベルで前斜角筋の前方を走行する。次いで、神経・血管束は第1肋骨と鎖骨との間隙、すなわち肋鎖間隙を通り、さらに烏口突起下で胸壁と小胸筋の関門を通過する。

出典

井手淳二:胸郭出口症候群.高岸憲二編.最新整形外科学体系 13 肩関節・肩甲帯. 中山書店,2006;278-289.
 
  1. 血管障害が主症状である血管性は少なく、約95%が腕神経叢刺激過敏状態を呈する神経性である。
  1. 腕神経叢圧迫と牽引による症状があり、診断・治療に当たっては、この異なる病態を区別して対応する必要がある[2]
  1. 腕神経叢圧迫型は男性に多く(2:1)、筋肉質で怒り肩を呈し、肩甲帯の不安定性はない。一方、腕神経叢牽引型は圧倒的に女性に多く(1:11)、なで肩・円背姿勢を呈し、肩甲骨の易下垂性がみられ、若年者に多い[3]
  1. 近年、野球スポーツにおけるTOS症状での報告例がみられる[4]
 
腕神経叢圧迫型胸郭出口症候群の典型的体型

腕神経叢圧迫型は男性に多く(2:1)、筋肉質で怒り肩を呈し、肩甲帯の不安定性はない。

出典

井手淳二先生ご提供
 
腕神経叢牽引型胸郭出口症候群の典型的体型

腕神経叢牽引型は圧倒的に女性に多く(1:11)、なで肩・円背姿勢を呈し、肩甲骨の易下垂性がみられ、若年者に多い。
a:正面
b:背面

出典

井手淳二先生ご提供
 
  1. 腕神経叢圧迫所見・症状と牽引所見・症状のどちらも認める混合型の割合が70%と多い[3]
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 年齢・職業(具体的内容、日常活動性)

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
北村歳男 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:竹下克志 : 講演料(第一三共(株))[2025年]

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胸郭出口症候群

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