今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 岩月克之 豊田厚生病院 整形外科

監修: 竹下克志 自治医科大学整形外科

著者校正/監修レビュー済:2025/06/10
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆・修正した。
  1. デュピュイトラン拘縮治療剤「ザイヤフレックス注射用」(一般名:コラゲナーゼ(クロストリジウム ヒストリチクム))の供給再開が不可能となったとの発表が国内販売会社よりあり、日本ではデュピュイトラン拘縮治療剤の使用が不可能となっているため、記載の修正を行った。

概要・推奨   

  1. PIP関節は機能回復が悪いため拘縮が出現すれば早期に治療が推奨される。
  1. MP関節は30°以上の拘縮が出現すれば治療が推奨される。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. Dupuytren拘縮とは手掌腱膜の肥厚および線維性の硬結やコードが出現し、比較的ゆっくり進行するが、進行に伴い指の屈曲変形、拘縮を生じる疾患である。
  1. 40~60歳以上の男性(5:1~15:1)に多い。
  1. 好発部位は環指、小指、中指の順であり、約半数は両側罹患例である。
  1. 白人、特に北欧人に多いが、黄色人種にもみられる[1][2]
  1. 足底に足底線維腫症、陰茎にペイロニー病、指にknuckle padとよばれる病態を合併することがみられる。
 
足底線維腫症 knuckle pad

手以外の病変
a:両側の足底線維腫症
b:右母趾
c:PIP関節のknuckle pad

出典

Canale ST, Beaty JH: Campbell's Operative Orthopaedics, 11th ed. Mosby, 2007.
 
  1. 原因は不明であるが、家族性、外傷、糖尿病、てんかん、飲酒などがリスクファクターであるといわれている[3][4][5]
  1. 線維芽細胞の量によりproliferative phase、involutional phase、residual phaseに分けられ、それぞれfibroblast、myofibroblast、fibroblastが主な細胞成分である[6][7][8]
  1. Zf9遺伝子やWnt 経路の異常に関連があるという報告がある[9][10]
 
  1. 足底線維腫症合併例:59歳 男性
  1. 現病歴:
  1. 左手に結節を自覚し、皮膚科を受診。Dupuytren拘縮を疑われ、紹介受診。
  1. 初診時所見:
  1. 両環指に結節を認めるが、指の拘縮は進行していない。握力:右40kg、左36kg。疼痛はない。Table top test 陰性。
  1. 両足裏にも腫瘤を触知。
  1. 飲酒なし、喫煙なし、家族歴なし。既往歴:糖尿病、高血圧。
  1. 主たる臨床検査結果とその解釈:
  1. 血液検査で糖尿病。
  1. X線像その他画像の解釈と診断結果:
  1. 手単純X線 2方向撮影で骨病変はない。
  1. 足部MRI:足底腱膜にT1強調像で低信号、T2強調像で低信号の充実性腫瘤を認め、足底線維腫症が考えられる。
  1. 上記から推定できる病態とその根拠:
  1. 両手のDupuytren拘縮(Meyerding Grade 0)およびDupuytren拘縮に合併した足底線維腫症。
  1. 治療計画とインフォームドコンセント:
  1. 手の拘縮はほとんど起きていないため、定期的な経過観察を行う。
  1. 治療経過と成績:
  1. 初診から2年間の経過観察を行い、拘縮の進行はない。
  1. 追記:
  1. 両側のDupuytren拘縮<図表>
  1. 両足底線維腫症<図表>
  1. 単純X線写真 手と足<図表>
  1. 足底線維腫症のMRI検査所見<図表>
 
Grade0

両環指に結節を認める。
a:右手
b:左手

出典

著者提供
 
足底線維腫症

両足に足底線維腫症を認める。
a:右足
b:左足

出典

著者提供
 
単純X線画像

特記すべき所見はない。
a:右手
b:右足

出典

著者提供
 
足底線維腫症MRI画像

T1強調像で低信号、T2強調像で低信号。腱との境界は明瞭である。
a:T1強調像 sagittal image
b:T2強調像 sagittal image
c:T1強調像 axial image
d:T2強調像 axial image

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 発症時期を確認する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
岩月克之 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:竹下克志 : 講演料(第一三共(株))[2025年]

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