今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 松原光宏 長野県立こども病院 整形外科

監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室

著者校正/監修レビュー済:2024/11/13
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 筋性斜頚の90%は、自然に軽快するとされている。
  1. 乳児期に認められる頚部腫瘤が、エコー上胸鎖乳突筋の腫脹として捉えられ、正常の筋に認められる層状の筋内部エコー像に乱れが生じている場合には、筋性斜頚と診断する。
  1. 一般に筋性斜頚は乳児期に診断されるが、その時期に診断されずに年長で斜頚位を呈している場合には、ときとして診断に難渋することがある。こういった場合には、胸鎖乳突筋の拘縮を触知できない場合でもエコー像では左右差を認めることが多く、診断に有用である。
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 斜頚とは、頭部が左側ないしは右側に傾いている状態を指す(<図表>)。顔面は、傾いているのと反対側を向いている場合が多い。
 
右筋性斜頚

4歳、男児。右胸鎖乳突筋の拘縮により斜頚位を呈している。

出典

下村哲史先生ご提供
 
  1. 外傷や頚部周囲の軟部組織の炎症などによって一時的に斜頚位を呈している場合と、明らかな外傷の既往がなく慢性に斜頚位をとっている場合とがある。
  1. 慢性に斜頚位をとっている場合の原因としては、胸鎖乳突筋の拘縮によるもの(筋性斜頚)、頚椎の先天性の変形によるもの(骨性斜頚)、斜視による複視を避けるため頚部を傾けることが習慣になっているもの(眼性斜頚)などが存在する。
 
  1. 筋性斜頚における乳児期頚部腫瘤
  1. 病歴:生後2週で左頚部皮下の腫瘤に気がつく。しだいに大きくなってきたため生後3週で来院。右の向き癖が存在する。
  1. 診察:左頚部皮下、胸鎖乳突筋部に弾性硬、示指頭大の腫瘤を触れる。皮膚との癒着はなく、可動性も少ない。腫瘤の尾側には鎖骨が存在し、頭側は胸鎖乳突筋の筋腹に連なり、側頭骨乳様突起に至っており、胸鎖乳突筋の腫瘤であることが触知できる。頭部の左側への回旋は制限されており、後頭部は向き癖のための変形を生じている。
  1. 治療:後頭部のさらなる変形(斜頭)を防ぐため、タオルなどを敷いて、顔が極端に右を向かないようにして寝かせるように指導する。また、頚がすわった後は、左を向く機会が多くなるように明かりの位置や家人の接し方などを指導し、なるべく本人が自由に頚を動かして左も向くように生活指導を行う。
  1. 転帰:頚部腫瘤はその後縮小し、1歳ころにはほぼ触知できなくなった。1歳半では、斜頚位や頚部の可動域制限を認めず、胸鎖乳突筋の緊張も左右同じとなっており、筋性斜頚は治癒した。
  1. コメント:筋性斜頚の90%は、自然に軽快するとされている。
 
筋性斜頚における乳児期頚部腫瘤

左胸鎖乳突筋の部位皮下に腫瘤(矢印)を認める。

出典

下村哲史先生ご提供
 
  1. 骨性斜頚 X線像
  1. 5歳、男児。頚胸椎移行部で脊椎の分節異常を伴う側弯が存在し、斜頚位を生じている。
 
骨性斜頚 X線像

頚椎胸移行部を中心として、正常の椎体構造の乱れと脊柱の弯曲が存在する。

出典

下村哲史先生ご提供
問診・診察のポイント  
 
  1. いつごろから斜頚位が存在していたのかを確認する。疼痛等を伴わないことも多いので、斜頚位に気がついた時点より前に斜頚位をとっていたかどうかがはっきりしない場合もあるが、そういった場合には、本人の乳児期からの写真を確認してきていただくのも1つの方法である。筋性斜頚や骨性斜頚では、乳児期から、どの写真でも常に同じ側に頭部を傾けていることが確認できる。

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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
松原光宏 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:酒井昭典 : 講演料(旭化成ファーマ(株),日本臓器製薬(株),帝人ヘルスケア(株))[2024年]

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