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著者: 播广谷勝三 九州大学病院別府病院 整形外科

監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室

著者校正/監修レビュー済:2022/08/17
参考ガイドライン:
  1. 日本整形外科学会:原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 2020年に改訂されたWHO分類に基づいて良性腫瘍、悪性腫瘍の他に中間群腫瘍を加えて改訂した。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 脊椎は前方要素として椎体、椎間板から構成され、後方要素として椎弓、椎間関節、棘突起から構成される(<図表>)。これらの破壊に伴って脊柱支持性の低下や疼痛を来す。
 
椎骨の解剖(第2腰椎)

a:側面
b:頭側
c:前方
 
参考:坂井建雄、松村讓兒:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版, p.114-115, 2017 ,医学書院

 
  1. 脊柱管を形成して脊髄、馬尾の通り道となるとともにこれらを保護している。また、上下の椎体間で椎間孔を形成し、神経根の通り道となっている。これらの神経組織の圧迫に伴い、疼痛やしびれ、麻痺を来す。
  1. 脊椎に原発する骨腫瘍や腫瘍類似疾患はまれであり、多くは癌の脊椎転移である。
  1. 良性腫瘍では血管腫が多いがそのほとんどが無症候性である(<図表>)。他に骨軟骨腫(<図表>)、類骨骨腫(<図表>)、動脈瘤様骨嚢胞(<図表>)などが比較的多い。
 
脊椎血管腫(第1腰椎)

MRIの普及により、偶然発見される機会が増えている。無症候性の血管腫では特に治療の必要はない。
a:MRI T1強調画像
b:MRI T2強調画像
c:CT

出典

著者提供
 
骨軟骨腫(第9胸椎、棘突起)

棘突起に連続した骨性隆起を認める。
a:単純X線 正面像
b:単純X線 側面像
c:CT像

出典

著者提供
 
類骨骨腫(第2胸椎)

左椎弓根基部にnidusを認める。造影MRIでは腫瘍だけでなく周囲組織にも増強効果を認める。
a:単純X線
b:正面像 CT
c:T1強調画像
d:T1強調画像(Gd造影)

出典

著者提供
 
動脈瘤様骨嚢胞(第1腰椎)

X線、CTで第1腰椎棘突起の骨透亮像、皮質骨の膨隆を認める。
a:単純X線 正面像
b:CT

出典

著者提供
 
  1. 悪性腫瘍では脊索腫(<図表>)が最も多く、骨髄腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫(<図表>)などが比較的多い。骨肉腫(<図表>)もまれに発生する。
 
脊索腫(仙骨)

X線にて仙骨の骨破壊を認める。MRIでは同部から骨外に進展した腫瘍を認める。
a:単純X線 側面像
b:MRI 矢状断像

出典

著者提供
 
Ewing肉腫(仙骨)

第1仙骨および椎体外に進展した腫瘍を認める(MRI T2強調画像 矢状断)。

出典

著者提供
 
骨肉腫(第5腰椎)

第5腰椎に骨破壊を認める。内部に骨形成像を認める。
a:単純X線 正面像
b:単純X線 斜位像
c:CT

出典

著者提供
 
  1. WHO分類では、良性と悪性の他に中間群腫瘍の概念が導入されている。中間群腫瘍は局所破壊性に再発を繰り返すlocally aggressive(局所侵襲性)と、まれに遠隔転移をきたすrarely metastasizing(低頻度転移性)に分けられる。脊椎に発生する頻度が比較的高い腫瘍としては、骨巨細胞腫(局所侵襲性、低頻度転移性)や骨芽細胞腫(局所侵襲性)などが挙げられる。
  1. 造血系腫瘍に分類されるLangerhans細胞組織球症や悪性リンパ腫(特にびまん性大細胞性B細胞リンパ腫)なども発生する。
 
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 発症時期、症状の経過(増悪傾向の有無など)を確認する。

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文献 

BONE TUMORS, Mosby, Inc. 1998.
神中整形外科学 改訂22版 p261.
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
播广谷勝三 : 未申告[2024年]
監修:酒井昭典 : 講演料(旭化成ファーマ(株),日本臓器製薬(株),帝人ヘルスケア(株))[2024年]

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原発性脊椎腫瘍

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