今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 片岡惇1) 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門

著者: 則末泰博2) 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門

監修: 志賀隆 国際医療福祉大学 医学部救急医学/国際医療福祉大学成田病院 救急科

著者校正/監修レビュー済:2024/10/16
参考ガイドライン:
  1. 日本集中治療医学会/日本救急医学会:日本版敗血症診療ガイドライン2024 The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2024(J-SSCG2024)
  1. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021(SSCG 2021)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 2024年6月に先行公開された『日本版敗血症ガイドライン2024(J-SSCG2024)』の内容を踏まえて改訂を行った。主な改訂箇所は下記となる。
  1. 初期治療バンドルについて
  1. 初期蘇生後のβ1受容体阻害薬の投与について
  1. 劇症型溶⾎性レンサ球菌感染症における免疫グロブリン製剤による毒素中和作⽤について
  1. DIC対策としてのペパリン療法について
  1. PICS対策・家族ケアについて
  1. また、前回改訂時から現在までに新たに発表されたエビデンスについて追記した。

概要・推奨   

  1. 敗血症は「致死的な臓器障害を伴う感染症」(SOFAスコアが2点以上上昇している場合)、敗血症性ショックは「平均血圧65 mmHg以上を維持するために昇圧薬が必要な低血圧+血清乳酸値>2 mmol/L」と定義される(Sepsis-3)(推奨度1)
  1. 敗血症は死亡率が高く、早期認識し、早期介入をすることが重要である。感染症では、全身状態およびバイタルサインの時系列評価を繰り返し、敗血症を疑った場合には直ちに初期治療バンドルを開始する(推奨度1)
  1. 蘇生のゴールは乳酸値の正常化である(推奨度1)
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病態、疫学、診察 

疾患(疫学・病態)のまとめ  
  1. 敗血症は感染によって生じる全身の炎症反応である[1][2]
  1. 敗血症では、種々のサイトカインをはじめとする多量のケミカルメディエーターが産生され、多彩な病状を示す。
  1. 1991年の会議で、感染によってSIRS(systemic inflammatory response syndrome)と診断された場合に敗血症と、敗血症に伴って臓器不全を来した場合を重症敗血症と定義されてきたが[1][2]、2016年には従来の重症敗血症を敗血症と定義する提案(Sepsis-3)がなされた[3][4][5]
  1. 同様に、敗血症のうち、適切な輸液を行っても、昇圧薬が必要な場合を敗血症性ショックと定義されてきたが[1][2]、2016年のSepsis-3では平均血圧65 mmHg以上を維持するために昇圧薬が必要な低血圧+血清乳酸値>2 mmol/Lとより厳しい条件での提案がなされた[4][5]
  1. 国際ガイドラインSurviving sepsis campaign guideline 2021[6][7]、およびわが国の敗血症ガイドラインでも[8] 、Sepsis-3の定義を用いることとしている。
  1. 現在でも敗血症の頻度は高く、ICUでの死亡の最大の原因である。日本救急医学会の重症敗血症/敗血症性ショック患者を前向きに登録したsepsis registryでは、28日死亡率23.1%(144/624)、病院死亡率29.5%(184/624)であったと報告されている[9]
  1. 敗血症患者数は増加しているが、死亡率は、特に「敗血症バンドル」を遵守した場合には、低下することが示されている[10]
  1. 敗血症、敗血症性ショックになるに従い、また、SIRSの陽性項目数が増加するに従い、死亡率が増加することが示されている[11]
 
  1. SIRS、sepsisの世界的な最初の定義(推奨度1)(参考文献:[1][2]
  1. それまで統一されていなかった敗血症の定義や診断基準が、初めて国際的に定められた内容。
  1. 感染によってSIRS(systemic inflammatory response syndrome)と診断された場合に敗血症sepsisと、敗血症に伴って臓器不全を来した場合を重症敗血症severe sepsis、敗血症のうち、適切な輸液を行っても、昇圧薬が必要な場合を敗血症性ショックと定義された。
  1. 追記:記載の参考文献は同じ内容。
 
  1. Sepsis-3の提唱(推奨度1)(参考文献:[3][4][5]
  1. 下記文献はsepsisとseptic shockを定義するための、大規模データベースを用いた研究。
  1. JAMA. 2016 May 24-31;315(20):2237.[3]
  1. JAMA. 2016 Feb 23;315(8):775-87.[4]
 
  1. Surviving sepsis campaign guidelines 2021(推奨度1)(参考文献:[6][7]
  1. 世界的な視点からの敗血症診療ガイドライン。4~5年ごとに改訂されている。
  1. 追記:記載の参考文献は同じ内容。
 
  1. 日本版敗血症診療ガイドライン 2024年版(推奨度1)(参考文献:[8]
  1. 本邦の敗血症診療ガイドライン。
  1. 追記:記載の参考文献は同じ内容。
 
  1. 敗血症バンドルの遵守と予後の関係(the IMPreSS study)(推奨度1)(参考文献:[10]
  1. 世界62カ国618病院での、重症敗血症、敗血症性ショック患者を対象に、敗血症バンドルを守っているか、守っていないかで、院内死亡率を比較検討した、前向き観察研究。3時間バンドルを守っていた群(20% vs 31%, p<0.001)、6時間バンドルを守っていた群(22% vs 32%, p<0.001)の方が、有意に院内死亡率が低かった。
  1. 追記:この研究時の敗血症バンドルは2012年版で現在とは異なる[12]
  1. 3時間バンドル
  1. 乳酸値を測定する
  1. 抗菌薬投与前に血液培養を採取する
  1. 広域抗菌薬を投与する
  1. 低血圧、もしくは乳酸値4 mmol/L以上であれば、30mL/kgの晶質液を投与する
  1. 6時間バンドル
  1. 初期蘇生輸液で平均血圧65 mmHgを維持できない場合は昇圧薬を投与する
  1. 敗血症性ショック、もしくは最初の乳酸値が4 mmol/L以上の場合は、CVPとScvO2を測定する
  1. 乳酸値が上昇していた場合は再測定する
問診、診察のポイント  
  1. 感染症状の有無を確認する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
片岡惇 : 未申告[2024年]
則末泰博 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:志賀隆 : 未申告[2024年]

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