今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 田巻弘道 聖路加国際病院Immuno-Rheumatology Center

監修: 岸本暢将 杏林大学医学部 腎臓・リウマチ膠原病内科

著者校正/監修レビュー済:2024/03/06
参考ガイドライン:
  1. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業:ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023
  1. 欧州リウマチ学会(EULAR):EULAR recommendations for the management of ANCA-associated vasculitis: 2022 update
  1. 米国リウマチ学会(ACR):2021 ACR/Vasculitis Foundation guideline for the management of ANCA associated vasculitis
  1. Evidence-Based Guideline for the diagnosis and management of eosinophilic granulomatosis with polyangiitis
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 米国リウマチ学会(ACR)のガイドライン(Chung SA, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2021 Aug;73(8):1088-1105.)と欧州リウマチ学会(EULAR)の推奨(Hellmich B, et al. Ann Rheum Dis. 2023 Mar 16:ard-2022-223764.)、日本のガイドライン『ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023』、EGPAのガイドライン(Emmi G, et al. Nat Rev Rheumatol. 2023 Jun;19(6):378-393.)の発表に伴い下記の点を改訂した。
  1. 2017年の日本のANCA関連血管炎診療ガイドラインの治療アルゴリズムを、最新の2023年の日本のANCA関連血管炎のアルゴリズムへと更新した。
  1. ANCA関連血管炎の治療に関してのリツキシマブの立ち位置に関して、ACR、EULAR、日本の改定されたガイドラインに基づいて解説した。
  1. ANCA関連血管炎の各国ガイドラインでの血漿交換の推奨に関して記載を追記した。
  1. ANCA関連血管炎の各国ガイドラインでの維持療法の推奨に関して記載を追記した。
  1. EGPAのガイドラインにて推奨されている、診断時の検査に関して記載した。
  1. アバコパン(タブネオスカプセル)の販売が開始されたため、アバコパンのANCA関連血管炎に対する治療に関して記載した。
  1. 日本での指定難病受給者証数のデータを最近のものへと更新した。
  1. 2022ACR/EULARのGPA、MPA、EGPAの分類基準を記載した。

概要・推奨   

  1. ANCA関連血管炎を診断する際には、全体的な臨床像、血清学的検査、必要で可能であれば生検などを組み合わせて行うと同時に、同様の症状をきたすような感染症や悪性腫瘍の除外を行うことも大切である。
  1. 重篤な臓器障害あるいは生命の危機にあるようなANCA関連血管炎の寛解導入療法では、グルココルチコイドに加えて、シクロフォスファミドあるいはリツキシマブを併用して治療する。
  1. シクロフォスファミドやリツキシマブを使用するような重篤なANCA関連血管炎で、血漿交換をルーチンで使用することは勧められない。
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病態・疫学・診察 

イントロダクション  
  1. ANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody[抗好中球細胞質抗体])関連血管炎は、多発血管炎性肉芽腫症(GPA [granulomatosis with polyangiitis]、以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた)、顕微鏡的多発血管炎(MPA [microscopic polyangiitis])、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA [eosinophilic granulomatosis with polyangiitis]、以前はチャーグ・ストラウス症候群と呼ばれていた)の3疾患を含み、これらの3疾患は2012年のチャペルヒルコンセンサス会議で小型血管炎に分類されている[1]
  1. GPA、MPA、EGPAは、肺胞出血、免疫複合体の沈着のほとんどない半月体形成性急速進行性壊死性腎炎、肺胞出血、多発単神経炎、紫斑などの3疾患に共通する臨床症状をきたす一方で、GPAでは血管外の壊死性肉芽腫性病変、EGPAでは好酸球浸潤に伴う臓器障害ならびに好酸球浸潤を伴う肉芽種性病変が出現するなど、それぞれの疾患ごとに異なる臨床症状も認める[2]
  1. ANCAは、間接蛍光抗体法で核周囲が染色されるperinuclear-ANCA(P-ANCA)と、細胞質が染色されるcytoplasmic ANCA(C-ANCA)との2種類がある。P-ANCAの対応抗原はミエロペルオキシダーゼ(MPO)であり、MPO-ANCAとも呼ばれる。C-ANCAの対応応現はプロテナーゼ3(PR3)であり、PR3-ANCAとも呼ばれる[3]。ANCAはGPA、MPA、EGPAに共通して認められるが、GPAではPR3-ANCAが、MPAではMPO-ANCAが陽性となることが多い。EGPAではMPO-ANCAが陽性となることが多いが、EGPAの中でもANCAが陽性となるのは多くとも半数程度とされている[2]
  1. GPA、MPA、EGPAの加療においては、臨床症状を抑える寛解導入期と、寛解に至った後に再燃を防ぐ目的で行う維持期との2期にわたる治療を行う。治療薬の選択としては、グルココルチコイドによる治療が行われるとともに、免疫抑制剤や生物学的製剤による加療が追加されることが基本となる。GPAとMPAでは2種の血管炎が同じ臨床試験で治療薬の評価が行われてきたということもあり、共通した治療戦略が取られるのに対して、EGPAでは好酸球性の症状が出ることもあり、GPAやMPAとは異なる治療戦略をとることが一般的である[4]
  1. 有効な治療薬が見出される以前、GPAは平均生存期間は5カ月、1年以内に82%、2年以内に90%以上が死ぬ病気であった。有効な治療薬の開発とともに現時点では5年生存率が80%程度の疾患となっている[5][6][7]
定義  
  1. 血管炎の医学的な記載の発端は1800年代後半の結節性多発動脈炎となる。その中から、1930年代に結節性多発動脈炎様の所見と壊死性肉芽腫を特徴とする、現在でいうところのGPAがWegenerによってなされた。また、結節性多発動脈炎様の症状と喘息や好酸球増多が併発する、現在EGPAと分類されている疾患が、1950年代にChurgとStrausによって記述された。このころ、GPAとEGPAの病理像が比較され、似通った所見があるのと同時に異なる所見があることが示されている。また、結節性多発動脈炎の中に、微小動脈瘤がなく肺や壊死性腎炎をきたす一群の記載も1940年代から1950年代に報告された。後々、1980年代に現在MPAとして定義されている疾患が確立していったが、最終的にMPAが正式に血管炎の中で定義づけされるのは1994年のチャペルヒル会議からである[8]
  1. 以前は結節性多発動脈炎という疾患の中に含まれていたGPA、MPA、EGPAは、臨床症状や病理所見が共通する部分もあったが、臨床症状や病理所見の違いがあるということもあり、違う疾患へと分けられるという歴史を辿った。1982年にANCAの存在が最初に記述されたものの[9]当初は注目を浴びていなかったが、後々、GPA、MPA、EGPAの3疾患にANCAが共通してみられることもあり、再度、ANCA関連血管炎という疾患概念が提唱されることとなった。
  1. 現時点での最新の血管炎の定義は、2012年にアメリカのノースカロライナ州チャペルヒルで行われた会議にて合意されたものである。ANCA関連血管炎はこの会議において小型血管炎として定義されている。チャペルヒルコンセンサス会議における小型血管炎、ANCA関連血管炎、MPA、GPA、EGPAの定義は以下のようになっている[1]
 
 
  1. 小型血管炎とは臓器実質の小型動脈、細動脈、毛細血管、小静脈に主として起きる血管炎である。

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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
田巻弘道 : 未申告[2024年]
監修:岸本暢将 : 講演料(中外製薬(株),ブリストル・マイヤーズスクイブ(株),AbbVie合同会社,田辺三菱製薬(株),エーザイ(株),ノボノルディスクファーマ(株),日本イーライリリー(株),第一三共(株),ヤンセンファーマ(株),あゆみ製薬(株),ユーシービージャパン(株),旭化成ファーマ(株))[2024年]

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ANCA関連血管炎の診断と初期治療(ミミック含む)

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