今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 副島京子 杏林大学医学部附属病院循環器内科

監修: 今井靖 自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門・内科学講座循環器内科学部門

著者校正/監修レビュー済:2025/01/15
参考ガイドライン:
  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2024年JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療
  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン
  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『2024年JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』が発行されたが、本稿に関する改訂はなかった。

概要・推奨   

  1. 無症候性で、初めて発見されたWPW 症候群は、一般的に経過観察をする
 
【カテーテルアブレーション】
  1. 偽性心室頻拍の頻拍発作を呈する場合は、高周波カテーテルアブレーションによる根治療法が強く勧められる(推奨度1)
  1. 副伝導路の伝導性が過剰な場合は、高周波カテーテルアブレーションによる根治療法が強く勧められる(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. WPW症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome)は、本来の正常伝導路以外に心房と心室間の伝導路(副伝導路=ケント束)が存在することにより、頻脈発作を呈することのある症候群である。
 
WPW 症候群の3人の医師の写真

Wolff先生は White 先生の弟子で、Parkinson先生は当時の権威であった。

 
  1. 健診での頻度は0.06~0.12%/年で、男女差はほとんどない。
  1. 典型的なものは、標準12誘導心電図のPQ 間隔が短縮し、QRSにデルタ波があり幅広になる。
 
WPW症候群の典型的心電図(洞調律時:非発作時)

特徴的なデルタ波が認められる。P-R間隔は短く、デルタ波がある。V1はデルタ波の向きは±で、aVF+、III誘導でR<Sである。右の中中隔に副伝導路があると判断される。部位診断にはRefが役立つ。
参考文献:J Cardiovasc Electrophysiol. 1998 Jan;9(1):2-12.

出典

著者提供
 
  1. デルタ波を常に呈するものを顕性WPW 症候群、ときどき呈するものを間欠性WPW症候群、ふだんはデルタ波がなく、頻脈発作の出現ではじめて副伝導路の存在が疑われるものを潜在性WPW症候群という。
  1. 頻脈発作は3種類に分かれ、①心房―房室結節―心室―副伝導路―心房の順に興奮する正方向性房室回帰性頻拍(図<図表>)、②心房―副伝導路―心室―房室結節―心房の順に興奮する逆方向性房室回帰性頻拍、③心房細動――がある。
    上記②と③で心室応答が速い場合(偽性心室頻拍と呼ぶ:図<図表>)、致死的となることがまれにあるので注意が必要である。
 
WPW症候群の典型的心電図(発作時:順行性房室回帰性頻拍)

V1でT波のうえに重なったP波が認められる。順行性房室回帰性頻拍ではnarrow QRSとなる。

出典

著者提供
 
WPW症候群の典型的心電図(発作時:偽性心室頻拍)

心房細動を合併した状態で心房の興奮が副伝導路を介し心室に伝導しているため、デルタ波の形がさらに顕性となり、QRSが広くなって不規則となっている。

出典

著者提供
 
  1. 頻脈発作が多い場合、逆方向性房室回帰性頻拍、偽性心室頻拍を呈する場合、または、可能性があるときは根治術(カテーテルアブレーション)の適応である。
  1. WPW症候群は先天性心疾患と合併することがある。特にEbstein病の有無を確認する。
問診、診察のポイント  
  1. 動悸発作の有無を確認する。動悸発生は突然で、停止も突然のことが多い。

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文献 

日本循環器学会他編:日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版) https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami191120.pdf(2020年4月閲覧) 班長:栗田隆志、野上昭彦 [Internet]. Available from: https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami191120.pdf
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
副島京子 : 講演料(第一三共(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),日本メドトロニック(株),アボットメディカルジャパン合同会社)[2024年]
監修:今井靖 : 未申告[2024年]

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WPW症候群

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