今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 桑井寿雄 広島大学病院 消化器内視鏡医学講座

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構 国府台医療センター

著者校正/監修レビュー済:2024/08/21
参考ガイドライン:
  1. 日本消化器病学会:大腸ポリープ診療ガイドライン2020 改訂第2版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、『大腸ポリープ診療ガイドライン2020 改訂第2版』を参照し下記について加筆した。
  1. SSL(sessile serrated lesion)は10 mm以上の病変を治療適応とし、TSA(traditional serrated adenoma)では通常の腺腫と同様径5 mm以上を治療の適応とする報告が多い。

概要・推奨   

  1. 一般に、大腸腺腫の内視鏡切除により大腸癌罹患率を約80%減らすため、大腸腺腫に対しては内視鏡切除を行うことが強く勧められる(推奨度1)
  1. 径5 mm以下の隆起性腺腫は経過観察することも容認される(推奨度2)
  1. 平坦陥凹型腫瘍では径5 mm以下の病変に対しても内視鏡切除することが推奨される(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 大腸ポリープは大腸の管腔内に突出した隆起性病変の総称で、種々の肉眼形態や組織像を呈する病変を含む。
  1. 上皮性腫瘍には腺腫や癌、非上皮性腫瘍には脂肪腫や平滑筋性腫瘍などがある。非腫瘍性病変としては過形成性(化生性)ポリープや炎症性ポリープ、若年性ポリープなどがある。
 
単発性ポリープ(腺腫)

a:通常観察
b:インジゴカルミン散布後

出典

広島大学病院症例
 
  1. 一般的にポリープが100個以上ある場合をポリポーシスといい、2個から99個までを多発性ポリープという。
 
ポリポーシス(家族性腺腫性ポリポーシス)

a:通常観察
b:インジゴカルミン散布後

出典

広島大学病院症例
 
  1. 高齢者に多い。
  1. 大腸ポリープの中では腺腫が最多(全体の約80%)である。
  1. 腺腫は無症状のものがほとんどである。直腸、S状結腸に好発し、腫瘍径が増すほど担癌率は高くなる。
  1. 欧米では、大腸腺腫の内視鏡切除により大腸癌死亡率を減らすとの研究報告があり、大腸腺腫の内視鏡切除が強く勧められている。
 
  1. 大腸腺腫の内視鏡切除により大腸癌死亡率を減らすという研究報告に基づいて、大腸腺腫に対しては内視鏡切除を行うことが勧められる(推奨度1)
  1. まとめ:RCTで大腸腺腫の内視鏡切除により大腸癌罹患率を約80%減らし、大腸癌死亡率も53%減らすことが示されている。
  1. 代表事例:ノルウェーのTelemark Polyp Study[1]では、大腸腺腫の内視鏡切除を行うスクリーニング群400人と対照群399人をそれぞれ平均13年の観察を行い、スクリーニング群の大腸癌罹患者は2人、対照群の大腸癌罹患者は10人であり、大腸腺腫の内視鏡切除により、有意(relative risk: 0.2, 95% CI: 0.03~0.95, p=0.02)に大腸癌罹患数が減少することが報告されている。米国のNational Polyp Studyでは、Surveillance, Epidemiology and End Results(SEER)から得られる米国一般集団と比較して、大腸腺腫の内視鏡切除により大腸癌罹患率が約80%減少し、大腸癌死亡率が53%減少することが示された。これらのことから、大腸腺腫は内視鏡切除することが推奨されている[2]
  1. 結論:大腸腺腫は内視鏡的に切除することが強く推奨される。
 
  1. 径5 mm以下の隆起性腺腫は経過観察することも容認される(推奨度2)
  1. まとめ:日本における観察研究で、径5 mm以下の大腸腺腫は経過観察も容認されることが示されている。(図アルゴリズム
  1. 代表事例:大腸癌研究会「微小大腸病変の取扱い」プロジェクト研究班の報告[3]によると、大腸微小病変161病変の検討により、径5 mm以下の大腸腫瘍で、内視鏡的に癌の特徴を認めなければ、経過観察で良いということが示された。その根拠は、径5 mm以下の癌の頻度が0.78%ときわめて低いこと、径5 mm以下の癌の多くに内視鏡的に癌の所見が認められたことが挙げられる。通常観察における癌の所見とは、①緊満所見(病変全体が張った感じ)、②面状の陥凹、③粗糙所見(表面の光沢が消失してざらざらした所見)、④広基性病変で立ち上がり正常粘膜であり、拡大観察では、⑤VI型 pit が特徴と報告されている。平坦陥凹型腫瘍では径5 mm以下の病変に対しても内視鏡切除することが推奨される。一方、併存疾患や本人の希望によっては、径5 mm以下の隆起性腺腫は経過観察も容認される[4]
  1. 結論:径5 mm以下の隆起性腺腫で内視鏡的に癌の特徴を認めなければ、経過観察しても良い。
 
  1. 径5 mm以下の過形成性ポリープは放置することが提案されている(推奨度2)
  1. まとめ:径5 mm以下の過形成性ポリープは放置することが提案されている。一方、一定の条件を満たす大腸鋸歯状病変は治療の適応となることが提案されている。
  1. 代表事例:径5 mm以下の過形成性ポリープは、将来の腺腫の発生との関連性はみられないことが報告されている[5]。また、色素散布やNBI(narrow band imaging)/BLI(blue laser imaging)を併用した内視鏡診断の正診率も高いことから、径5 mm以下の過形成性ポリープは放置することが提案されている[4]。一方、鋸歯状病変であるSSL(sessile serrated lesion)はBRAF等の遺伝子変異が認められ、MSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変と考えられている。TSA(traditional serrated adenoma)もSSL同様癌化のリスクを有する。SSLは10 mm以上の病変を治療適応とし、TSAでは通常の腺腫と同様径5 mm以上を治療の適応とする報告が多い[4]
  1. 結論:径5 mm以下の過形成性ポリープの内視鏡切除は行わない。
 
問診・診察のポイント  
  1. 多くは無症状である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),大塚製薬(株))[2024年]

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