今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 金城謙太郎 帝京大学医学部総合診療科、帝京大学大学院公衆衛生学研究科

監修: 井村洋 飯塚病院

著者校正/監修レビュー済:2023/10/25
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. レビューと最新の情報を上記ガイドラインにて改訂を行った。

概要・推奨   

  1. 問診(リスクファクターの聴取や、発生時期、症状(悪性を疑う体重減少等含む)の有無等。推奨度1)を行い、視診触診(直聴診含む。推奨度1)、必要であれば血液検査を行う(推奨度2。もし、腫瘤であれば、更なる検査として専門医にコンサルトするのが望ましい(推奨度1
  1. 専門医による視診、触診(直腸診)、肛門鏡や大腸鏡による病変の確認(推奨度2と、生検により病理組織学的診断(推奨度2や、多臓器病変の精査として画像検査(造影CT,PET-CT等。推奨度2)の適応を考慮して診断を行う。また、専門医による診断のもと治療を行う(推奨度1

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 直腸肛門部腫瘤は、外痔核、内痔核、直腸肛門部コンジローマ(肛門陰部疣贅)、肛門周囲膿瘍、直腸脱、ポリープ、直腸癌、肛門癌(上皮内含む)、ベーチェット病、メラノーマ、ボーエン病、痔瘻などを念頭に置いて診断、治療する[1]
  1. 高齢者、炎症性腸疾患・大腸直腸癌の家族歴、治療にもかかわらず出血が続く場合、体重減少、鉄欠乏性貧血など悪性を疑われる場合は、大腸鏡による精査、生検が必要である[1]
  1. 肛門上皮内悪性腫瘍は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により生じ、肛門癌へ移行する。HPVによる子宮頚部癌の発展様式と同様である[2]
  1. 大腸癌(肛門癌含む)はわが国において、癌部位別総患者数151万8000人中、23万5000人である(他の消化器癌としては、胃癌21万3000人、肝・肝内胆管癌6万6000人)[3]。肛門がんは、全悪性腫瘍の0.1%、大腸がんの中でも2%程度、2016年の罹患者は1098人と報告がある。日本では腺がんが最も多く、扁平上皮癌は2割程度である[4]
  1. 肛門癌は米国において、消化器癌の2%を占め、2020年に推定される肛門がん、肛門管がん、肛門直腸部がんの新規症例数は8590名、死亡数は1350名と報告されている[5]。ここ30年で罹患数は増加し、特に女性、HPV感染、性交渉の生涯人数、陰部疣贅、喫煙、アナルセックスの受け入れ、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)でリスクが上がる。肛門癌は、他の消化器癌よりも、陰部悪性腫瘍とより似ている。また、男性同士でのアナルセックスによる罹患率の上昇が懸念されている[6][7]
  1. 肛門癌は手術により摘出可能なことが多いが、部位、大きさ、リンパ節転移が予後因子である。専門家へのコンサルトが必要であり、化学療法、放射線療法なども考慮する[1]
 
  1. 肛門上皮内高分化癌から、肛門癌へ移行するのは、子宮頚癌モデルと類似している。(参考文献:[8][9]
  1. 特にHIV陽性で、HPVウイルスに罹患している患者の肛門癌は、上皮内高分化癌から進展する。
  1. 癌化リスクが高い患者群では、肛門癌を積極的に疑うべきである。
問診・診察のポイント  
 
  1. 肛門括約筋や、その直上の腫瘤からの出血は、痔核と誤って認識され、診断が遅れることになる。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
金城謙太郎 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:井村洋 : 特に申告事項無し[2024年]

ページ上部に戻る

直腸肛門部腫瘤

戻る