今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 入澤篤志 獨協医科大学医学部 内科学(消化器)

監修: 下瀬川徹 みやぎ県南中核病院企業団

著者校正/監修レビュー済:2022/10/12
参考ガイドライン:
  1. Revisions of international consensus Fukuoka guidelines for the management of IPMN of the pancreas. Pancreatology. 17: 738-753, 2017. PMID:28735806.
  1. 膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン2009. 膵臓 24: 571-593, 2009.
  1. 膵炎局所合併症(膵仮性嚢胞,感染性被包化壊死等)に対する診断・治療コンセンサス. 膵臓 29: 775-818, 2014.
  1. 膵癌診療ガイドライン(2019年版).金原出版,2019.
  1. 慢性膵炎診療ガイドライン2021.南江堂,2021
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、各種ガイドラインの改定に基づいた改訂を行った。
  1. 各嚢胞性病変の画像診断について記載を詳細化した。

概要・推奨   

  1. 膵嚢胞は、嚢胞を構成する上皮の有無により仮性嚢胞と真性嚢胞に大別され、さらには腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞に分類される。
  1. 膵嚢胞が発見された患者には、大きさにかかわらず腫瘍性嚢胞の鑑別のために画像による精密検査を行うことが勧められる(推奨度2)
  1. 膵嚢胞の精密診断には、造影CT、MRI(MRCP)、EUS(造影EUSを含む)が勧められる(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 膵嚢胞とは、膵臓あるいは周囲に嚢胞を形成するすべての疾患の総称であり、あくまで形態学的特徴に基づいた名称である。
  1. 以前は、膵管との交通のない袋状の構造物に限定されていたが、今日では膵管との交通の有無は問わない。
  1. 分類については以前から多数報告されている[1][2][3][4]が、膵嚢胞は、嚢胞を構成する上皮の有無により仮性嚢胞と真性嚢胞に大別され、さらには腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞に分類される[5]
 
膵臓の嚢胞性病変

非腫瘍性嚢胞では、内腔に上皮を欠く仮性嚢胞が多く、次に膵管が拡張する貯留嚢胞が続く。良性の嚢胞性腫瘍の代表はSCNであり、膵管が拡張した病変であるIPMNでは良性あるいは悪性および前悪性の段階がある。このほか、充実性腫瘍の内部が変性し、嚢胞化を呈することがあり、代表はSPNと内分泌腫瘍である。

出典

From Hruban RH, Pitman MB, Klimstra DS:Tumor of the Pancreas. Fourth Series, Fascicle 6. Armed Forces Institute of Pathology, 2007. (改変あり)
 
膵嚢胞の分類

内腔の上皮の有無で真性と仮性に分け、次に腫瘍性か非腫瘍性かを分ける分類が理解しやすい。

出典

 
  1. 近年の画像診断の普及および膵嚢胞性疾患概念の浸透により、膵嚢胞の発見頻度は増加している。最も頻度が高いのは仮性嚢胞と報告されている[2][3][4]。しかし最近ではIPMNの発見頻度が増加している。先天性の膵嚢胞はまれである。
  1. 炎症に伴う非腫瘍性嚢胞では、感染や出血を伴うことで腹痛・背部痛、発熱などを呈する。腫瘍性嚢胞においては、膵管の圧排狭窄、IPMNの粘液による膵管閉塞などにより急性膵炎を呈することがある。しかし、その他の嚢胞性病変では症状を有する例は少なく、検診や他疾患の精査中に偶然に発見されることも少なくない。
 
非腫瘍性嚢胞:
  1. 非腫瘍性嚢胞には、単純性嚢胞、貯留嚢胞、仮性嚢胞(急性/慢性)、類上皮嚢胞、類皮嚢胞、リンパ上皮嚢胞等がある。
  1. 2013年に急性膵炎後の局所合併症の概念がみなおされ、嚢胞性病変は急性仮性嚢胞と被包化膵壊死(walled-off necrosis:WON)に分類された[6]
 
改訂アトランタ分類における膵局所合併症の分類

急性膵炎後の仮性嚢胞・walled-off necrosisの発生形態と分類が示されている。
 
参考文献:
From Banks PA et al. Acute Pancreatitis Classification Working Group. Classification of acute pancreatitis-2012: revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus. Gut 2013;62:102-11. PMID:23100216.

出典

著者提供
 
  1. 急性仮性嚢胞は、急性膵炎後に急性膵周囲液体貯留が時間の経過とともに被包化され、膵または周囲の壊死組織を含まずに嚢胞化したものである。一方、WONは壊死性膵炎に伴う浸出液貯留が、膵および周囲の壊死の液状化とともに被包化されたものである。
  1. 慢性仮性嚢胞は、慢性膵炎を背景として、膵管が破綻して膵液が貯留して形成されたもので、確実な壁をもち先行する急性膵炎発作を認めないものである[7]
  1. 貯留嚢胞や仮性嚢胞のなかには、膵癌などの充実性腫瘍によって膵管が狭窄・閉塞することが原因で嚢胞を形成する場合があり注意が必要である。
 
腫瘍性嚢胞:
  1. 腫瘍性膵嚢胞は、漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm、SCN)、粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm、MCN)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary-mucinous neoplasm、IPMN)が主なものである[5]。一方、充実性腫瘍が出血壊死等を来して内部が嚢胞変成を起こすものがある。代表的なものとしては、solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)や神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm, NEN)等が挙げられる[5]
問診・診察のポイント  
  1. 年齢、性別を確認する(SCNは中年女性に多く、MCNはほとんどが若年から中年女性、SPNは若年者に好発)。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
入澤篤志 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:下瀬川徹 : 特に申告事項無し[2024年]

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