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改訂のポイント:
  1. 『2024年 JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』を参照に、下記の点を加筆・修正した。
  1. リードレスペースメーカ植込みの推奨および手技
  1. 刺激伝導系ペーシングについて
  1. フォローアップ(デバイス患者におけるMRI検査含む)の注意点

概要・推奨   

  1. ペースメーカ治療は、日本循環器学会の「不整脈の非薬物治療ガイドライン」の指針に従い適応を判断するが、原則、有症状の徐脈性不整脈においてペースメーカが推奨される(推奨度1
  1. 閉塞性肥大型心筋症において有意な流出路圧格差があり圧格差による症状によりQOL低下を呈する症例は、ベータ遮断薬など薬剤による徐脈を呈する場合においても、ペースメーカ治療が推奨される(推奨度1

総論 

概要  
  1. ペースメーカは当初、高度な徐脈による生命の危険や血行動態の改善を目的として開発された。
  1. 近年では生命維持のみならず、生活の質(QOL)の向上を目指して、より生理的な作動設定が可能なシステムになってきている[1][2]
  1. ペースメーカ治療は、変性疾患、炎症性疾患など不可逆性の原因による徐脈性不整脈に対して行われる。
  1. 日本循環器学会の「不整脈の非薬物治療ガイドライン」の指針に従い、適応を判断する[3][4]
  1. 通常、左右いずれかの鎖骨下静脈からのアプローチにて、ペースメーカリードを挿入する。小児症例、あるいは経静脈アクセスが困難な症例においては、外科的アプローチにて心外膜リードを使用して植込みを行う。
  1. ペースメーカの植込みは通常、局所麻酔で行う。手術時間は症例によるが、1時間半程度である。
  1. リードレスペースメーカは、ポケット感染リスクの高い症例や経静脈アクセスが困難な症例に使用される。当時はVVIモードのみであったが、現在はVDDモードの出現、さらにはDDDモードも登場し、近々、日本でも使用可能となる見込みである。
  1. リードレスペースメーカの植込みについては、右(または左)大腿静脈から経カテーテル的に行い、従来のペースメーカとは大きく異なるシステムを使用するため、事前に植込み手技に関して受講が必要である。また、一定の頻度で合併症も報告されており、ガイドラインフォーカスアップデートにおいて、リードレスペースメーカに関する推奨の追記が行われた[5]
 
リードレスペースメーカ植込みに関する推奨とエビデンスレベル

出典

日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf(2024年10月閲覧)
 
  1. また、刺激伝導系ペーシングとしてHis束ペーシングが行われるようになったが、ペーシング閾値の上昇が大きな課題とされ、それに代わるものとして、左脚および左脚領域ペーシングが出現した[6]。His束ペーシングと比べ、閾値が安定しており、ペーシング波形もHis束ペーシングと同等にnarrow QRSが得られることから、ペーシング依存による心不全発生予防の観点からも、今後、期待される手法と考えられる。
  1. ガイドラインフォーカスアップデート[5]に掲載されているHis束ペーシングと左脚領域ペーシングの図を示す。ただし、刺激伝導系ペーシングについては、まだ十分な長期成績はなく、本治療独自の合併症も報告されているため、確立された治療となるまでには、慎重に動向を見ていく必要がある[7]
 
刺激伝導系ペーシングにおけるペーシング部位(左図)ならびにヒス束および左脚ペーシングによる12 誘導波形(右図)

出典

日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf(2024年10月閲覧)
問診・診察のポイント  
  1. 初診時の問診:徐脈によると思われる症状の有無を確認する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
中井俊子 : 講演料(アボットメディカルジャパン合同会社,日本メドトロニック(株)),企業などが提供する寄付講座(バイオトロニックジャパン(株),アボットメディカルジャパン合同会社,日本メドトロニック(株),日本ライフライン(株))[2024年]
監修:今井靖 : 未申告[2024年]

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ペースメーカ植込み、フォローアップ

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