今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 井上大輔 帝京大学 ちば総合医療センター

監修: 平田結喜緒 公益財団法人 兵庫県予防医学協会 健康ライフプラザ

著者校正/監修レビュー済:2022/01/19
参考ガイドライン:
 
  1. 難病情報センター(副甲状腺機能低下症 指定難病235).https://www.nanbyou.or.jp/entry/4427.(2021年12月閲覧)
  1. 難病情報センター(偽性副甲状腺機能低下症 指定難病237).https://www.nanbyou.or.jp/entry/233.(2021年12月閲覧)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1.  定期レビューを行い、マイナーな改訂を加えた。概要欄では重要度の低い推奨を除いた。

概要・推奨   

  1. 副甲状腺機能低下症でintact PTH が30pg/ml以上あれば偽性と考え、確定診断および病型分類のためにEllsworth-Howard試験を行うことが勧められる(推奨度2)
  1. 骨粗鬆症治療薬として用いられているヒトPTH皮下注射製剤は、分泌低下型の副甲状腺機能低下症の治療薬として推奨されない(推奨度4)
  1. 尿中Ca排泄量が多く血清Ca濃度の維持が困難な副甲状腺機能低下症に対しては、活性型ビタミンDに加えてサイアザイド系利尿薬の併用が勧められる(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 副甲状腺機能低下症は副甲状腺ホルモン(PTH)分泌低下によるものとPTH作用不全に基づくものの2つに大別される。
  1. 低アルブミン(Alb)血症がある場合、血清カルシウム(Ca)濃度は補正式:補正Ca=実測Ca(mg/dl)+(4-Alb(g/dl))で評価する。
  1. 低Ca血症および正~高リン(P)血症の存在と腎不全の除外(Cr<2.0mg/dl)が診断の基本である。
  1. intact PTH<30pg/mlであればPTH分泌低下によるもので、特発性、続発性、種々の先天性疾患が含まれる。
  1. intact PTH>30pg/mlであればPTH作用不全による偽性副甲状腺機能低下症と診断できるが、診断の確定および病型分類のためにPTH試験(Ellsworth-Howard試験)の施行が望ましい。
  1. 偽性では低身長、丸顔、肥満、短頚、短指などの特徴的身体所見(Albright遺伝性骨異栄養症:AHO)や他の内分泌異常の合併がみられる(Ia、 Ic型)。
  1. 低マグネシウム(Mg)血症は、主にPTH分泌不全により副甲状腺機能低下症をもたらすが、作用不全も混在した複雑な病態を示すことがある。
  1. 副甲状腺機能低下症は、指定難病であり、中等症以上の場合などでは、申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([ https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/235-201704-kijyun.pdf 平成27年7月施行])
  1. 難病法に基づく医療費助成制度
 
  1. 副甲状腺機能低下症でintact PTH が30pg/ml以上あれば偽性と考え、確定診断および病型分類のためにEllsworth-Howard試験を行うことが勧められる(推奨度2o)(参考文献:[1][2]
  1. 研究背景:
    厚生労働省難治性疾患克服研究事業ホルモン受容機構異常調査研究班による診断基準ではintact PTHが30以上であれば偽性、30未満であればPTH分泌低下による副甲状腺機能低下症と診断する、と記載されている。
  1. 研究事例の説明:
    少数例の検討ではあるが、班研究による全国調査で主治医よりPTH値が報告された例では、この基準の正診率はほぼ100%であった。したがってEllsworth-Howard(E-H)試験が偽性の診断に必須とはいえないが、病型診断のためには必要である。
  1. 結論:
    副甲状腺機能低下症でintact PTH が30pg/mlであれば偽性と診断される。診断の確定もしくは確認、および病型分類のためにE-H試験を行うことが望ましい。
  1. 追記:
    厚生労働省難治性疾患克服研究事業ホルモン受容機構異常調査研究班より、低Ca血症の診断フローチャートが発表されており、副甲状腺機能低下症のうちintact PTHが30pg/ml以上の例にはE-H試験の施行が望ましい、との記載がある。
  1. コメント:
    偽性副甲状腺機能低下症では、PTH負荷後の尿中P排泄反応がみられない。さらに尿中cAMP反応もみられないものをI型、cAMP反応はみられるものをII型と呼ぶ。II型は、その存在自体にいまだ疑問の余地が残されており、今後も解析症例の蓄積が求められる。
病歴・診察のポイント  
  1. テタニーに特有なChvostek徴候、Trousseau徴候やAHO特有の身体徴候(低身長、丸顔、肥満、短頚、短指など)の有無を確認する。軽度のテタニー症状として筋肉のつっぱり感やこむら返りなどを訴えることがある。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
井上大輔 : 講演料(帝人ファーマ(株),第一三共(株),アムジェン(株))[2024年]
監修:平田結喜緒 : 特に申告事項無し[2024年]

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