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喘息治療薬(薬理)

著者: 中原 保裕 (有)ファーマシューティカルケア研究所

著者校正/監修レビュー済:2020/01/31

概要・推奨   

  1. 喘息の治療は、その作用機序から、長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(レリーバー:短時間作用性吸入β2刺激薬)の2つに分かれる。通常、症状の重症度に合わせてそれらの薬を併用することが原則である。
  1. 長期管理薬として、吸入ステロイド、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤、抗IgE抗体などが用いられる。
  1. 発作治療薬として、短時間作用型吸入β2刺激薬、テオフィリン、ステロイド、ボスミンなどが用いられる。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
中原 保裕 : 特に申告事項無し[2021年]

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、内容を一部整理した。

各論

薬剤情報のまとめ  
喘息治療全般のまとめ:
  1. 喘息の治療は、その作用機序から、長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(レリーバー:短時間作用性吸入β2刺激薬)の2つに分かれる。通常、症状の重症度に合わせてそれらの薬を併用することが原則である。
  1. 喘息治療薬の投与方法の分類では、吸入により気管支に直接作用する薬剤と全身投与する薬剤の2種類に分かれる。吸入薬として、吸入ステロイド、吸入β刺激薬、吸入ステロイド・β刺激薬配合薬、吸入抗コリン薬、吸入気管支拡張薬、吸入抗アレルギー薬などが用いられる。一方、全身投与の薬剤として、β刺激薬、カテコラミン、抗IgE抗体製剤、テオフィリン系薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、H1受容体拮抗薬(第2世代)、トロンボキサンA2合成阻害薬、トロンボキサンA2受容体拮抗薬、メディエーター遊離抑制薬、Th2サイトカイン阻害薬、アレルギー疾患治療薬喘息治療薬配合薬などが用いられる。
  1. コントローラーとして最も重要な薬剤は吸入ステロイドで、患者の状態により1回、1日の使用回数が異なる。
  1. テオフィリンはTDM(治療薬物モニタリング)を用いながら患者に適した投与量を決めて管理をする。
 
喘息の長期管理薬のまとめ:
  1. 長期管理薬として、吸入ステロイド、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤、抗IgE抗体などが用いられる。
  1. 気管支喘息の長期管理に示される治療のステップは、患者の重症度によりどのステップから始めるという考え方ではなく、一人一人の患者がSTEP1でコントロールができないなら、次のSTEP2へ、そしてそれでもうまくコントロールできない場合はSTEP3へと段階的にコントロールが可能なSTEPを見つけるという考え方である。
  1. 発作の頻度と強度に応じて治療ステップに基づいて加療を行う。
  1. 未治療患者の症状と目安となる治療のステップ:表アルゴリズム
 
喘息治療ステップ

症状の強さによって1~4週間後に再受診させ、コントロール不良であれば治療のステップアップを考慮する。(コントロール状態の評価:表<図表>
いったん3カ月から6カ月の間コントロールができれば、治療のステップダウンも考慮する。なお、発作治療は別のアルゴリズム参照のこと。(表アルゴリズム,表アルゴリズム)
 
4)7-2「急性増悪への対応」については「喘息予防・管理ガイドライン2012」参照のこと。

 
喘息コントロール状態の評価

コントロール不十分が3つ以上当てはまる場合は、コントロール不良と判断し、治療ステップを変更することを考慮する (喘息治療ステップ:表アルゴリズム)。なお、発作治療は別のアルゴリズム参照のこと。(表アルゴリズム,表アルゴリズム

 
現在の治療を考慮した喘息重症度の分類(成人)

治療されている喘息患者の重症度は、現在の治療ステップとその治療下における患者の症状から判定する。

 
  1. 喘息治療のステップ:
  1. STEP1
  1. 吸入ステロイドを基本とし、使用できない場合はロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤を用いる。
  1. STEP2
  1. 吸入ステロイドを基本とし、長時間作用型β刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれか1剤を追加する。
  1. STEP3
  1. 吸入ステロイドを基本とし、長時間作用型β刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤ののいずれか1剤または複数を併用する。
  1. STEP4
  1. 吸入ステロイドを基本とし、長時間作用型β刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤の複数を併用する。効果不十分の場合には経口ステロイドか、抗IgE抗体の投与を検討する。
  1. 上記に必要に応じて、メディエーター遊離抑制薬、H1拮抗薬、トロンボキサンA2阻害薬、Th2サイトカイン阻害薬を追加療法として追加する。
  1. 軽い喘息症状がごくまれ(月1回未満を目安)にしか発症しない患者では、吸入β刺激薬の頓用のみの処方とし、原則として長期管理薬を処方しない。ただし、患者は症状を過小評価して申告することが多いので注意する。
 
喘息の発作治療薬:
  1. 発作治療薬のまとめ:
  1. 発作治療薬として、短時間作用型吸入β2刺激薬、テオフィリン、ステロイド、ボスミンなどが用いられる。
  1. 発作強度に基づき、自宅、外来での可能な治療を選択する。自宅にてコントロール不良な場合は医療機関への受診を促す。
  1. 自宅での加療:
  1. 中等度までの喘息症状に対しては、短時間作用型β2刺激薬の噴霧式定量吸入器(pMDI)による1~2パフを吸入し、効果が不十分の時には20分おきに合計1時間まで加療を繰り返す。以後は1時間に1回を目安に吸入する。
  1. 必要に応じてテオフィリン、β2刺激薬の内服を併用してもよい。
  1. 症状の消失・PEFの自己裁量値の80%以上への回復がみられ、また、薬剤の効果が3~4時間認める場合は自宅加療とする。
  1. 救急外来受診の必要がある症状を認める際には、ステロイドを15~30mg相当内服の上受診する。
  1. 救急外来での加療:
  1. 症状を参考に、喘息発作の強度を評価し、速やかに加療をする。
 
喘息発作の強度と目安となる発作治療ステップ

主に呼吸困難の程度を基に、発作強度を評価し、発作治療のステップを選択する。(喘息の発作治療ステップ:表アルゴリズム) 
横になれる程度の発作を軽度症状、苦しくて横になれずかろうじて歩けるのを中等度症状、苦しくて歩行できないのが高度症状、意識障害、呼吸停止、チアノーゼを認めるのが重篤症状である。
なお、長期管理は別のアルゴリズム参照のこと(表アルゴリズム,表アルゴリズム)

 
喘息の発作治療ステップ

喘息発作の強度(表アルゴリズム)に応じて初期治療を決定し、1時間以上経過しても治療目標が達成されない場合は、次のステップの治療を行う。
なお、長期管理は別のアルゴリズム参照のこと(表アルゴリズム,表アルゴリズム)

 
  1. 発作治療ステップ:
  1. Step1:
  1. β2刺激薬吸入頓用、テオフィリン薬頓用
  1. Step2:
  1. β2刺激薬ネブライザー吸入反復、アミノフィリン点滴静注、ステロイド点滴静注、酸素投与(1-2l)、ボスミン皮下注、抗コリン薬吸入
  1. Step3:
  1. β2刺激薬ネブライザー吸入反復、アミノフィリン点滴静注、ステロイド点滴静注反復、酸素投与(PaO2 80mmHgを目安に)、ボスミン皮下注、抗コリン薬吸入
  1. Step4:
  1. 上記治療継続
 
慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療全般のまとめ:
  1. COPD治療薬も、喘息と同様に、長期管理薬と発作治療薬の2つに分類され、また、吸入により気管支に直接作用する薬剤と全身投与する薬剤の2種類に分かれる。
  1. 長期的な呼吸機能の低下を抑えると証明されている薬物はないものの、適切な薬物を用いて症状を緩和することはQOLの向上のためにも重要なことである。
  1. 禁煙はCOPDの症状の進行を最も効果的に抑える。患者教育により禁煙を行わせる。受診時に毎回短いカウンセリングを行い、依存性がみられる例ではニコチン置換療法を行うことがよいとされる。
  1. COPDの全身併存症には、骨粗鬆症、心・血管疾患、消化器疾患、抑うつなどがある。肺合併症には、肺高血圧症、肺炎、気胸、肺癌などがある。特に心・血管疾患と肺癌は、呼吸不全とともにCOPD患者の死因となる可能性があり、その対策が重要である。
 
COPDの長期管理薬治療のまとめ:
  1. 治療の基本は、禁煙、インフルエンザワクチン、COPDのstepwise管理、全身併存症のコントロールである。
 
未治療患者の症状と目安となる治療ステップ

症状の重症度(表<図表>)を参照に初期治療を選択する。症状の頻度で簡略すると、毎週でないのが軽症間欠型(治療ステップ1)、毎週だが毎日出ないのが軽症持続型(治療ステップ2)、毎日だが日常生活に支障がないのが中等症持続型(治療ステップ3)、日常に支障を来しているのが重症持続型(治療ステップ4)となる。 (治療ステップの各治療:表アルゴリズム) 
なお、発作治療は別のアルゴリズム参照のこと(表アルゴリズム,表アルゴリズム)

 
喘息重症度の分類

喘息の重症度は軽症間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型の4段階に分かれる。

 
  1. COPDのstepwise管理:管理法として、症状の進行に伴いstepwiseに、吸入抗コリン薬、カルボシステイン、短時間作用型吸入β2刺激薬、テオフィリン、在宅酸素療法などを使うことが多い。
  1. インフルエンザワクチンはCOPDの増悪による死亡率を下げるため、すべての患者に接種を勧める。
  1. 長時間作用型の吸入抗コリン薬(アクリジニウム等)や吸入抗コリン薬・β刺激薬配合薬(チオトロピウムやオロダテロール等)がよく用いられる。
 
COPDの急性期治療薬のまとめ:
  1. COPD増悪時の薬物療法は“ABC”アプローチ、すなわち抗生物質(Antibiotics)、気管支拡張薬(Bronchodilators)、ステロイド薬(Corticosteroids)が主体である。
  1. 抗生物質(Antibiotics)としては、クラビットを、気管支拡張薬(Bronchodilators)としては、メプチンエアーなど短時間作用型吸入β2刺激薬を、ステロイド薬(Corticosteroids)プレドニンを投与することが行われる。
テオフィリン系薬  
ポイント(薬理・病態):
  1. テオフィリン系薬は、キサンチン誘導体と呼ばれ、気管支喘息治療薬として古くから用いられてきた。他に、未熟児無呼吸発作の治療や心不全の治療に用いられることもある薬剤である。

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文献 

著者: N Okamura, K Yanai, M Higuchi, J Sakai, R Iwata, T Ido, H Sasaki, T Watanabe, M Itoh
雑誌名: Br J Pharmacol. 2000 Jan;129(1):115-23. doi: 10.1038/sj.bjp.0702994.
Abstract/Text Antihistamine induced cognitive decline was evaluated using positron emission tomography (PET) measurement of histamine H1 receptor (H1R) occupancy and regional cerebral blood flow (rCBF). Cognitive performance in attention-demanding task deteriorated dose-dependently and the effects were statistically significant after the treatment of 2 mg of d-chlorpheniramine. There was no significant change in subjective sleepiness in the same dose. The regional blockade of H1R was observed mainly in the frontal, temporal and anterior cingulate cortices, and the intravenous administration of d-chlorpheniramine as a therapeutic dose (2 mg) blocked over 60% of H1R in the frontal cortices. The results from activation study using visual discrimination tasks demonstrated that enhanced activity in the right prefrontal and anterior cingulate cortices as well as a decreased activity in the left temporal and frontal cortices and midbrain after the treatment of d-chlorpheniramine. There were no changes in global CBF for the subjects treated with 2 mg d-chlorpheniramine (pre; 44.8+/-3.3 ml dl(-1) min(-1) vs post; 44.4+/-4.7 ml dl(-1) min(-1)). The results indicated that the attention system of human brain could be altered by therapeutic doses of H1R antagonists. These findings provide the information as to the potential risk of antihistamines in our daily activities. British Journal of Pharmacology (2000) 129, 115 - 123

PMID 10694210  Br J Pharmacol. 2000 Jan;129(1):115-23. doi: 10.1038/sj・・・
著者: Kazuhiko Yanai, Dongying Zhang, Manabu Tashiro, Takeo Yoshikawa, Fumito Naganuma, Ryuichi Harada, Tadaho Nakamura, Katsuhiko Shibuya, Nobuyuki Okamura
雑誌名: Expert Opin Drug Saf. 2011 Jul;10(4):613-22. doi: 10.1517/14740338.2011.562889. Epub 2011 Apr 27.
Abstract/Text INTRODUCTION: H(1) antihistamines are often used in the medication for allergic diseases, coughs and colds, and insomnia, with or without prescription, even though their sedative properties are a potentially dangerous unwanted side effect that is not properly recognized. These sedative properties have been evaluated using the incidence of subjective sleepiness, objective cognitive and psychomotor functions, and positron emission tomography (PET) measurement of H(1) receptor occupancy.
AREAS COVERED: This article reviews the current updated literature on the sedative properties of antihistamines examined by PET measurement of H(1) receptor occupancy.
EXPERT OPINION: The use of PET to examine antihistamine penetration in the human brain in relation to psychometric and other functional measures of CNS effects is a major breakthrough and provides a new standard by which the functional CNS effects of antihistamines can be related directly to H(1) receptor occupancy. Therapy with antihistamines can be better guided by considering histamine H(1) receptor occupancy from the view of their sedative properties.

PMID 21521134  Expert Opin Drug Saf. 2011 Jul;10(4):613-22. doi: 10.15・・・

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