今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 波多野裕明 東京大学医学部付属病院 アレルギーリウマチ内科

監修: 金子礼志 国立国際医療研究センター 膠原病科

著者校正/監修レビュー済:2022/07/20
参考ガイドライン:
  1. EULAR recommendations for the management of antiphospholipid syndrome in adults
  1. 平成27年度日本医療研究開発機構成育疾患克服等総合研究事業「抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の治療及び予後に関する研究」研究班 編:抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン
  1. 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎に関する調査研究:抗リン脂質抗体症候群・好酸球性多発血管炎性肉芽腫・結節性多発動脈炎・リウマトイド血管炎の治療の手引き2020
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、全面的に加筆修正した。参考ガイドラインに基づき改訂した。

概要・推奨   

  1. Sapporo criteriaのシドニー改変分類基準[1]に基づいて診断する。
  1. 抗カルジオリピン抗体 (aCL)、カルジオリピン依存性抗β2GPⅠ抗体 (aCL/β2GPⅠ)、ループスアンチコアグラント(LA)を測定する。これらは12週間以上あけて再検する必要がある。これら3つのうち2つ以上が陽性の場合、LAが陽性の場合、抗体の力価が高い場合が、高リスクの抗体profileとされており、血栓症のリスクが高い。
  1. 抗リン脂質抗体 (aPL) が陽性でも、血栓症や妊娠合併症の既往がない場合は抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome, APS)の診断に至らない。この場合、低用量アスピリン (LDA) による血栓症の予防効果は示されていないが、aPLの抗体profileが高リスクの場合にはLDA投与が推奨される[2]。また、全身エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)患者の場合はaPLが陽性であれば、LDA、ヒドロキシクロロキン (HCQ) の投与が検討される。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome、APS)は、抗リン脂質抗体(aPL)と関連する血栓症および妊娠合併症と定義される。
  1. 年齢は10~80歳代と幅広く、男女比は1:5程度で女性に多い[3]
  1. APS患者の約半数に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)を合併する。
  1. 基礎疾患や誘因がなく発症する原発性APSと、SLEなどに合併して発症する続発性APSに分類される。
  1. 本邦の患者数は原発性APSが約1万人、続発性APSを含めると約2~3万人と推定されている。
  1. 動脈血栓としては脳血管障害が多い。急性心筋梗塞は比較的少ない。
  1. 静脈血栓としては深部静脈血栓症、肺塞栓が多いが、多彩な部位に血栓をきたす。
  1. 再発時には、初発時と同様の発症様式(静脈血栓/動脈血栓)を示すことが多い。
  1. 原発性抗リン脂質抗体症候群は、指定難病であり、重症度分類3度以上などの場合は、申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([平成27年1月施行])
  1.  難病法に基づく医療費助成制度 
病歴・診察のポイント  
  1. 血栓症や妊娠合併症既往について、APS診断基準を満たすものかどうか、詳細に検討する必要がある。検査では、APTT延長がスクリーニングになり得るが、試薬により感度が低い場合がある。また、ループスアンチコアグラント(LA)や抗リン脂質抗体の証明は12週間以上あけて2回必要であり、1ポイントでは診断に至らない。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
波多野裕明 : 未申告[2024年]
監修:金子礼志 : 特に申告事項無し[2024年]

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抗リン脂質抗体症候群

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