今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 朝倉正紀1) 兵庫医科大学 循環器内科

著者: 北風政史2) 阪和病院・阪和記念病院

監修: 伊藤浩 川崎医科大学総合内科学3教室

著者校正/監修レビュー済:2022/11/24
参考ガイドライン:
  1. 日本循環器学会/日本心不全学会:心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)
患者向け説明資料

改訂のポイント
  1. 2020 AHA/ACCガイドラインの内容を一部反映した。

概要・推奨   

  1. 肥大型心筋症の心電図所見は特異的なものはないが、75~95%の症例で異常Q波、ST-T変化、陰性T波、左室高電位などの異常がみられ、心電図検査は感度が高くスクリーニングに有用である(推奨度1)
  1. 聴診でのⅣ音や駆出性収縮期雑音、心電図での巨大陰性T波等を認める際には、肥大型心筋症を疑い、心臓超音波検査を行うことが勧められる(推奨度1)
  1. 肥大型心筋症の診断目的に、ルーチンに心内膜生検を行う必要はない。心Fabry病、心アミロイドーシスや糖原病などの心肥大を呈する2次性心筋症の鑑別が難しい場合には勧められる(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 肥大型心筋症とは、高血圧などの明らかな原因がなく、心室壁の肥大を来す心筋疾患である。多くの場合左室壁の肥大が起こり、肥大した心筋の部位により血行動態や症状が変わる。
  1. 肥大型心筋症は指定難病であり、中等症以上の場合では認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([平成27年1月施行])
  1.  難病法に基づく医療費助成制度 
  1. 肥大型心筋症の正確な有病率は明らかではないが、1998年の厚生労働省特定疾患特発性心筋症調査研究班による全国疫学調査では、全国推計患者数は21,900人とされ、有病率は17.3人/10万人であった[1][2][3][4]
  1. 調査対象者全員に心臓超音波検査を用いたスクリーニングでは、肥大型心筋症の診断における検出力が上がるため、わが国での有病率は374人/10万人(米国では170人/10万人)と報告されている[5][6]
  1. 肥大型心筋症患者の男女比は、2.3倍と男性に多い[1][2][3][4]
  1. 肥大型心筋症患者の年齢分布として、50歳以上が8割近くを占める一方、20歳までの患者も5%認める[1][2][3][4]
  1. 1982年の厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班の疫学調査では、肥大型心筋症患者の5年および10年生存率は、それぞれ91.5%と81.8%であった[7]。1999年に実施された全国疫学二次調査の2,155人の肥大型心筋症患者の5年生存率は86%であり、1年あたりの死亡率は2.2~3.0%であると報告されている[8]
  1. 肥大型心筋症患者における予後不良の独立した要因としては、高心胸比、低左室駆出率、左脚ブロックであり、心尖部肥大は予後良好の因子であることが明らかにされている[8]
  1. わが国の家族性肥大型心筋症の40~50%に、遺伝子異常がみられる[9]
  1. 肥大型心筋症患者に観察される主な遺伝子異常を示す遺伝子は、心筋βミオシン重鎖遺伝子(MYH7)、心筋トロポニンT遺伝子(TNNT2)、心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子(MYBPC3)、α-トロポミオシン(TPM1)などである[9][10]
問診・診察のポイント  
  1. 肥大型心筋症患者は、無症候性で、心雑音、心電図異常などで発見されることが多い。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
朝倉正紀 : 特に申告事項無し[2024年]
北風政史 : 講演料(アストラゼネカ(株),ノバルティスファーマ(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株)),研究費・助成金など(興和(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),アストラゼネカ(株))[2024年]
監修:伊藤浩 : 講演料(第一三共(株),大塚製薬(株))[2024年]

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