今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 庄司進一 筑波大学

監修: 庄司進一 筑波大学

著者校正/監修レビュー済:2023/12/06
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、症状評価および症例を追記した。

概要・推奨   

  1. 筋力低下の患者の診療は一般の診療と同様のプロセスで進む。診療では患者と医療者が同じ目標に向かって共同作業を行うことが推奨される(推奨度2)
  1. 筋力低下の患者の具体的な診療の流れは一般の診療と同じであるが、必要に応じて遺伝カウンセリングを行うことが推奨される(推奨度2)
  1. 筋力低下の患者の診断は筋疾患診療の重要なステップである。診断は、治療方針を決定するうえでも予後を推定するうえでも必須であり、また、正確な診断によって初めて、筋疾患の研究上に重要な症例を発見する可能性が生ずる(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 筋力低下は、1つないしいくつかの筋肉の力が低下することである。
  1. 筋力低下や運動麻痺は、比較的多くの人が訴える症状の1つである。
  1. 正常な筋肉運動は、大脳皮質、大脳基底核、小脳、脊髄などによって調整され統合されており、それらのどの障害でも筋力低下は起きる。また、運動系の機能障害が筋力低下や運動麻痺を起こす。筋力低下の分布、筋力低下に伴う症状によって、原因部位が示唆される。
  1. 発症のしかたによって病変の病理原因が示唆される。
  1. 筋力低下は、易疲労性や疼痛や関節の硬さによる機能制限などとしばしば間違われやすいが、区別しなければならない。
  1. 位置覚など固有受容感覚の完全な喪失などの場合、筋肉運動の方向や力に関する十分な情報がないため、筋力低下を訴えることがある。
  1. 慣れた運動を計画して開始する障害に「失行」があるが、これは運動や感覚障害と直接関係がなく、筋力低下と混同してはならない。
  1. 過度な安静や活動の低下が原因で、下肢・躯幹の筋力低下から全身に広がり、寝たきりになることがある。この廃用症候群には、筋肉の萎縮や筋力低下のほかに、関節拘縮、骨萎縮、心機能低下、起立性低血圧、誤嚥性肺炎、血栓塞栓症、うつ状態、せん妄、見当識障害、圧迫性末梢神経障害、逆流性食道炎、尿路結石、尿路感染症、褥瘡などを伴うことがある。
  1. ICU獲得性筋力低下(ICU-Acquired weakness)は、ICU入院患者の25-100%に認められ、過度の安静、敗血症、持続性全身感染症、多臓器不全、高血糖、ステロイド治療、神経筋伝導阻害薬、などがリスク・ファクターと考えられる。インスリン治療、早期からのリハビリテーション、が重要である[1][2][3]
 
  1. 筋力低下の患者の診療は一般の診療と同様のプロセスで進む。診療では患者と医療者が同じ目標に向かって共同作業を行うことが推奨される(推奨度2)[4]
  1. 筋力低下を訴える患者が医療機関を訪れる。
  1. 医師ら医療従事者は情報を収集・分析する。
  1. 病気の治癒または生活の質の向上という目標に向かって診断・治療計画を立てる。
  1. 患者の同意を得た計画に基づいて診療が行われる。
  1. 診療の成果は絶えず評価される。
  1. 目標が達成されていないならば、新たな計画を立てる。
  1. それらの繰り返しによって問題解決に至る。
  1. 追記:診療は患者と医療者が同じ目標に向かって行う共同作業である。
 
診療のプロセス

診療の目標に向かい、患者が治癒を目指すのを医療従事者が診療で手助けをするという関係が示されている。診療のプロセスがニーズの出現(患者の受診)でスタートすることが、外からの矢印で示されている。

出典

庄司進一: 筋疾患の診断と治療.永井書店,1988
 
  1. 筋力低下の患者の具体的な診療の流れは一般の診療と同じであるが、必要に応じて遺伝カウンセリングを行うことが推奨される(推奨度2)[4]
  1. 確定診断がつく。
  1. 治療が試みられる。
  1. 患者の社会復帰に至る。
  1. 遺伝性疾患では家系調査が行われる。
  1. 遺伝カウンセリングが行われる。
  1. 追記:家系調査の場合には、患者の受診というニーズの発生を待たずに、対象者の同意が得られれば、診療が広がっていくことがある。家系調査が最初の受診者(発端者)の診断に役立つことは、遺伝性疾患の場合に多い。家系調査で発見された新たな患者に対する治療や、患者、保因者、その他の者に対するカウンセリングは、発端者の診断確定が前提である。治療の効果が診断に役立つことがあり、治療的診断と呼ぶ。
 
診療の流れ

両方向性の矢印に注意してほしい。

出典

庄司進一: 筋疾患の診断と治療.永井書店,1988
問診・診察のポイント  
 
  1. 筋力低下の発症形式、経過、分布、程度、随伴症状などが問診上のポイントである。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
庄司進一 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:庄司進一 : 特に申告事項無し[2024年]

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筋力低下

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