今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 福田健介 大分大学医学部 消化器内科学講座

著者: 村上和成 大分大学医学部 消化器内科学講座

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構 国府台医療センター

著者校正/監修レビュー済:2024/02/21
参考ガイドライン:
  1. 日本消化器病学会:消化性潰瘍診療ガイドライン 2020 改訂第3版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、消化性潰瘍に対する内視鏡治療について新たなエビデンスをもとに内容を変更・追記した。
  1. 消化性潰瘍に対する各種内視鏡止血術の効果を検討したシステマティックレビューでは、再出血率に関してクリップ法は単独でも局注法より優れていた。また、局注法は単独よりもクリップ法や凝固法を併用したほうが初回止血・再出血の予防に効果的であるとされた(Baracat F, et al. Surg Endosc. 2016 Jun;30(6):2155-68.)。

概要・推奨   

  1. 吐血(上部消化管出血)の原因は半数が胃・十二指腸潰瘍である(推奨度1)
  1. NSAIDs服用により、上部消化管出血のリスクは高まる(推奨度1)
  1. 低用量アスピリンを服用する患者は服用しない患者に比べ、上部消化管出血のリスクは高い(推奨度1)
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  1. 出血性消化性潰瘍患者の内視鏡的治療後にPPIおよびボノプラザン(VPZ)やH2RAを投与することで、治療成績が向上する(推奨度1)
  1. H. pylori除菌治療は胃潰瘍の治癒を促進する(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 吐血とは口腔より新鮮血やコーヒー残渣様吐物を排出することで、Treitz靱帯よりも口側の食道、胃、十二指腸などの上部消化管からの出血が原因である。
  1. 食道疾患では吐血は食道静脈瘤、逆流性食道炎、食道潰瘍、Mallory-Weiss 症候群などでみられる。食道からの吐血は胃酸と混合しないので赤色を呈する。
  1. 胃疾患では胃潰瘍、胃癌、悪性リンパ腫、急性胃粘膜病変(AGML)、吻合部潰瘍などで吐血がみられる。血液が胃酸と混合することで塩酸ヘマチンに変化するため、黒色を呈する。
  1. 十二指腸では十二指腸潰瘍、十二指腸びらんなどで吐血がみられる。胃を通過するため血液は胃酸の影響で黒色を呈する。
  1. H. pylori感染と低用量アスピリン(LDA)を含む非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が消化性潰瘍の2大リスク因子であるが、近年前者は減少傾向、後者は増加傾向にある。
 
  1. 吐血(上部消化管出血)の原因は半数が胃・十二指腸潰瘍である(推奨度1)
  1. まとめ:吐血の原因の第1位は胃・十二指腸潰瘍であり、約50%以上を占める。
  1. 代表事例:山口ら[1]が2002年に上部消化管内視鏡時に何らかの止血術を実施した1,412例を検討しており、原因疾患は出血性胃潰瘍が626例(60%)、出血性十二指腸潰瘍が200例(19%)であった(参考画像<図表>)。他の報告および自験例[2][3]でも同様な結果であった。また欧米でも上部消化管出血の原因は消化性潰瘍が35~50%と報告されている[4]
  1. 結論:吐血の原因疾患は胃・十二指腸潰瘍が最も頻度が高い。
  1. 追記:胃・十二指腸潰瘍の次に頻度が高い疾患は食道静脈瘤破裂であり、他にMallory-Weiss症候群、逆流性食道炎などの頻度が高い。
 
吐血の原因疾患とその頻度

吐血の原因疾患は胃・十二指腸潰瘍が最も多く、次いで食道・胃静脈瘤が多い。
 
参考文献:
山口淳正、内園 均、谷口 保ほか:上部消化管出血の内科的治療 日本臨床内科医会雑誌2002;17:28-34 (改変あり)
長谷川申、高濱和也、平田一郎:消化管出血原因疾患の変遷と非手術的治療の意義、日腹救急医会誌2006;26:491-496 (改変あり)
小坂俊仁、芳野純治. 消化性疾患の主要な対症療法 吐血・下血. 消化器最新の治療 2009-2010. 菅野健太郎、上西紀夫、井廻道夫 編集.南江堂,東京, 2009;80-84

出典

小坂俊仁先生ご提供
問診・診察のポイント  
 
  1. 排出された血液の性状(新鮮血、コーヒー残渣様吐物、タール便、粘血便など)、出血量、持続期間、随伴症状を問診する。喀血した血液を飲み込み、それを嘔吐した場合に吐血と鑑別が難しいことがあり、咳嗽などの症状がないか確認する。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
福田健介 : 特に申告事項無し[2024年]
村上和成 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),大塚製薬(株))[2024年]

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