今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 片岡大治 国立循環器病研究センター 脳神経外科

監修: 甲村英二 公立学校共済組合 近畿中央病院

著者校正/監修レビュー済:2025/02/26
参考ガイドライン:
  1. 日本脳卒中学会 :脳卒中治療ガイドライン 2021
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆・修正した。
  1. 内頚動脈狭窄症の外科的治療の選択に関して、無症候性の頚動脈高度狭窄(>60%)を有する患者を対象としたCASとCEAに関する国際的な多施設無作為化比較試験において、両者の治療成績は同等であるという結果が報告されたため、記載を修正した(Halliday A, et al. Lancet. 2021 Sep 18;398(10305):1065-1073.)。
  1. 症候性頚動脈軽度狭窄に対する、外科治療の適応について概要・推奨欄に加筆した。
  1. プラークの性状評価の診断法についてMRI画像所見を追加し、加筆した。
  1. 典型症例として症候性内頚動脈狭窄について画像を用いて解説した。詳細は本文を参照されたい。

概要・推奨   

  1. 症候性頚動脈高度狭窄では、抗血小板療法を含む最良の内科治療に加えて、手術および周術期管理に熟達した術者と施設において、頚動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)を行うことが勧められる(推奨度A、エビデンスレベル高)
  1. 症候性頚動脈中等度狭窄では、抗血小板療法を含む最良の内科治療に加えて、手術および周術期管理に熟達した術者と施設において、CEAを行うことが妥当である(推奨度B、エビデンスレベル高)
  1. 症候性頚動脈軽度狭窄では、一般的に抗血小板薬含む最良の内科治療が推奨されるが、不安定プラークで、適切な内科治療にもかかわらず脳虚血を繰り返す場合は、CEAを行うことを考慮してもよい(推奨度C、エビデンスレベル低)
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病態・疫学・診察 

手技のまとめ  
  1. 内頚動脈狭窄症の外科的治療としては頚動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)とステント留置術(carotid artery stenting:CAS)がある。
  1. CEAが基本的な手技であり、一般にCEAが困難な症例においてCASが選択されてきた。しかし最近では両者の成績は同等であるという報告もあり[1]、CASを外科的治療の第1選択とする施設も多くなっている。
 
CEA:基本はプラークを遠位端まで完全に除去することと、術中の脳虚血性合併症を防止することである。
  1. 日本人の頚動脈分岐部は欧米人より高位であるので、必要に応じて、顎二腹筋をつり上げたり、舌下神経下行枝を切断して十分な術野を得ることが重要である。
  1. 術中脳虚血の原因として、剝離操作に伴う塞栓性合併症と、血流遮断に伴う血行力学的合併症がある。
  1. 術中モニターとして体性誘発感覚電位(somatosensory evoked potential:SEP)、運動誘発電位(Motor Evoked Potential:MEP)、脳酸素飽和度測定、経頭蓋ドップラー(transcranial Doppler:TCD)等を用いて脳虚血を把握し、適宜内シャントを用いる。
  1. 血流遮断時には全身のヘパリン化を行い、ACTを250秒程度まで延長させる。
  1. 創部出血は重大な合併症となり得るので、プラーク切除後の動脈縫合は糸を愛護的に扱い、かつ確実に行う。
  1. 再狭窄症例や内頚動脈径が細い場合にはパッチを使用する。
 
CAS:適切なprotectionを行って術中の脳虚血性合併症を防止し、ステントでプラークを完全に被覆する。
  1. 術前より抗血小板薬2剤を投与する。
  1. 術中は十分にヘパリン化し(ACT 250秒以上)、遠位塞栓防止のためprotection deviceを使用する。
  1. ステントで確実にプラークを被覆する。ステント留置前後でバルーンにより前・後拡張を行う。
  1. 術中・術後の徐脈・低血圧や術後穿刺部合併症などにも注意する。
問診・診察のポイント  
  1. 症状の把握、特に一過性脳虚血発作に注意する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
監修:甲村英二 : 特に申告事項無し[2024年]

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内頚動脈狭窄症の外科的治療

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