今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 新谷祐貴 東京大学医学部附属病院 脳神経外科

監修: 甲村英二 公立学校共済組合 近畿中央病院

著者校正/監修レビュー済:2021/06/30
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、下記について加筆修正を行った。
  1. 脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]より、未破裂脳動静脈奇形に対する治療方針をupdateした。
  1. 未破裂脳動静脈奇形に対する多施設共同前向きランダム化比較試験(ARUBA study)の最終結果報告(2020年)を追加した。
  1. その他、新たな知見を交えてminor updateした。

概要・推奨   

  1. 脳動静脈奇形、もしくは脳動静脈奇形に起因する脳卒中が疑われた場合、頭部CT、MRIで頭蓋内精査を行う。
  1. 脳動静脈奇形と診断した場合、血管撮影を行い、重症度評価を行うことが治療方針決定上重要となる。
  1. 脳動静脈奇形と診断した場合、出血予防目的の治療の必要性を検討する。治療適応は、年齢や重症度から予想される出血リスクと治療に伴う合併症リスクを比較し決定する。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 脳動静脈奇形(arteriovenous malformation、AVM)は、脳実質内の拡張した動脈と静脈からなる先天性の異常集塊であり、このナイダスと呼ばれる脆弱な血管塊を介して直接静脈へと還流する脳動静脈シャントが病変の主体である。
 
脳動静脈奇形の代表的なシェーマ

動脈(赤)からナイダスに注いだ血管が拡張した静脈(青)に流入する。

出典

花北俊哉先生ご提供
 
  1. この動静脈吻合のため、特に静脈側に過大な圧負荷がかかり静脈は不完全な弾性板を伴って拡張し、出血の原因となる。
  1. AVMは、人口10万人あたり年間1~2人に発生する先天性疾患と考えられており、40歳未満の若年者で最も多く発症する。発症形式としては、約50%がクモ膜下出血や脳内出血などの出血で発症し、20~25%はけいれん発作を契機に、15%程度は慢性頭痛の精査にて発見される。
  1. 非出血発症AVMの場合、年間出血率は1.7~2.2%程度である。初回出血による死亡率は10~30%、重篤な神経学的合併症を伴う確率は10~20%あるとされている。
  1. 出血発症AVMでは、初回出血後に再出血を起こす危険性が、出血後1年間は6~17%と高くなり、その後は再び2~3%/年の出血率に低下する。
  1. 若年者に多く発症する疾患であるため、生命をも左右しかねない出血の予防が治療の主な目的となり、治療適応は、年齢から予想される出血に伴う危険性と治療に伴う合併症の可能性を比較したうえで決定される。
 
  1. 疫学、予後に関するエビデンス(OG)(参考文献:[1][2][3][4]
  1. 生涯出血率は、近似式で(105-年齢)%で表されるとされる。
  1. 出血発症例の年間出血率は出血後最初の1年で6~17.8%と高く、その後通常の出血率に低下する。
  1. 非出血発症例では、自然歴での出血率は出血発症例よりも有意に低いとされる。
  1. 出血発症例では、出血後最初の1年間は出血率が上昇する。
  1. わが国で行われたYamadaらの報告では、年間出血率は未出血群が3.12%、出血群の年間出血率は6.8%で、最初の1年が15.42%で、その後年々低下し、5年以後は1.72%であった。
  1. grade4,5の自然歴に関しては、年間1.1%と低いとする報告と10.5%と高いとする報告もある。
問診・診察のポイント  
  1. 出血性発症の場合はクモ膜下出血を併発することもあり、頭痛を含めた病歴の聴取が必要である。本人は自覚していないが、視野欠損などを認める場合もあり、一般的な脳神経所見に沿った神経所見診察を行う。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
新谷祐貴 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:甲村英二 : 特に申告事項無し[2024年]

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