脳膿瘍 :トップ    
監修: 具芳明 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター
原田壮平 がん研有明病院感染症科

概要

疾患のポイント:
  1. 脳膿瘍とは、脳実質内に細菌が感染して膿瘍が形成された頭蓋内の局所性感染症である。限局した範囲の脳実質炎に始まり、時間とともに血行良好な隔壁に隔てられた膿瘍の形成に至る。隣接する組織からの炎症の波及(中耳炎・副鼻腔炎など)や、血流感染などが原因となる。
 
診断:アルゴリズム  >詳細情報 
  1. 頭痛と局所神経脱落症状(片麻痺、嚥下障害、視野障害など)がある患者で頭部造影CT・造影MRIを施行し、頭蓋内占拠性病変を認めた場合に脳膿瘍を疑う。確定診断は、直径が2.5cmより大きい病変部の穿刺吸引あるいは外科的摘出検体の培養検査により得る。発熱、白血球増多、CRP上昇などは認められない場合もしばしばある。 エビデンス   エビデンス 
  1. なお、膿瘍形成前の脳炎期の病変あるいは直径2.5cm以下の病変は、診断と起因菌同定のための必要性があるときのみ穿刺吸引する。 エビデンス 
  1. エイズ患者で頭蓋内占拠性病変を認めた場合は脳トキソプラズマ症、原発性中枢神経リンパ腫、進行性多巣性白質脳症を主な鑑別診断と考えて精査・加療を行うことが勧められる。 また、有鉤条虫症の流行地域からの移民や疫学的なリスクがある場合は、頭蓋内占拠性病変の鑑別として脳嚢虫症を検討することが勧められる エビデンス   エビデンス 
  1. 脳膿瘍急性期の画像所見:<図表>
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. 罹患者の死亡率は約25%にのぼり、治癒例でも30~55%でけいれん、持続的神経脱落症状、行動変容などの神経学的後遺症を残す。
 
治療: >詳細情報 
  1. 治療の基本は外科的ドレナージと長期静注抗菌薬使用である(通常4~8週間)。 エビデンス 
  1. 問診、身体所見より想定されるリスクや穿刺液グラム染色所見に基づいて、経験的抗菌薬を選択する。(問診・身体所見: >詳細情報 )
  1. 脳膿瘍発症に中耳炎・副鼻腔炎、歯科感染症、肺感染症、感染性心内膜炎などの疾患や免疫不全が関与している場合がある。
  1. 治癒期の脳膿瘍の画像所見:<図表>
 
専門医相談のタイミング >詳細情報 
  1. 脳神経外科医、神経内科医、感染症科医が連携して診療すべき疾患である。全例紹介する。
 
臨床のポイント:
  1. 頭痛と局所神経脱落症状がある患者では、発熱の有無やCRP値にはとらわれず、頭部造影CTや頭部造影MRIを施行して脳腫瘍の検索を行う。
  1. 基礎疾患や免疫不全の有無、海外渡航歴などの情報を収集して、起因微生物推定の精度を高める。
  1. 治療の基本は外科的ドレナージと長期間の抗菌薬投与である。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

脳膿瘍の確定診断および起因微生物同定のための検査例
  1. 脳膿瘍の確定診断を得るとともに長期にわたる静注抗菌薬治療に用いる薬剤を適切に選択するために起因微生物同定と薬剤感受性試験は必須である。
  1. 反復採取が困難な貴重な検体であるので特殊な微生物の関与の可能性も考えて微生物検査を行う。
○ 症状、鑑別疾患に基づき、下記の検査を考慮する。
1)
膿瘍検体の一般細菌グラム染色・培養検査、抗酸菌染色・培養検査(ノカルジア検索を含む)、真菌培養検査

頭蓋内占拠性病変の有無を確認するための検査例
  1. 頭痛と局所神経脱落症状を有する患者で頭蓋内占拠性病変の有無を確認するための検査である。
  1. 頭部MRIのほうが早期の病変を検出する感度が高く、またより多くの質的情報が得られる。
○ 症状、鑑別疾患に基づき、下記の検査を考慮する。
1)
頭部造影CT<図表>
2)
頭部造影MRI エビデンス <図表>

経験的治療例
  1. 膿瘍検体の採取とドレナージは脳膿瘍診断、治療の最も重要な部分である。膿瘍検体の採取とドレナージの手段についての相談をする。
  1. 臨床状況によっては抗菌薬投与のみによる治療が選択される場合はあるがその適応は極めて慎重に選択しなくてはならない。
  1. 治療の選択肢は、経験的治療においては患者背景や膿瘍検体のグラム染色所見、標的治療においては原因微生物と薬剤感受性によるので一般化できない。セファゾリンなど中枢神経移行性の悪い抗菌薬は用いない。
○ 脳膿瘍の患者では、原因微生物が判明するまでの間、2)3)または4)の薬剤を併用することを考慮する。ただし、治療の選択肢は、経験的治療においては患者背景や膿瘍検体のグラム染色所見によるので一般化できない。
1)
脳神経外科 エビデンス  エビデンス 
2)
ロセフィン静注用1g [1g1瓶] 2g 12時間ごと静注 [脳膿瘍は適用外/他適用用量内/㊜敗血症](脳膿瘍は厳密にはロセフィンの適用外だが、査定の対象とならないこともある)(編集部注:想定する適用病名「脳膿瘍」/2015年7月)
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薬理情報 抗菌薬 >抗菌薬(セフェム系 第3世代)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝可 妊B 乳可 児量[有]
3)
アネメトロ点滴静注液 [500mg]500mg 6時間ごと点滴静注[適用内/用量内/㊜脳膿瘍]
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薬理情報 抗菌薬 >メトロニダゾール
同効薬一覧
要注意情報
4)
フラジール内服錠 [250mg] 8錠 分4
[適用内/用量内/㊜脳膿瘍]
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薬理情報 抗菌薬 >メトロニダゾール
同効薬一覧
要注意情報

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)

脳膿瘍を疑う患者の初期マネジメント
脳膿瘍急性期の画像所見
治癒期の脳膿瘍の画像所見
脳膿瘍急性期の画像所見
著者校正/監修レビュー済
2016/06/30


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