急性喉頭蓋炎・喉頭浮腫 :トップ    
監修: 森山寛 東京慈恵会医科大学附属病院
中島 寅彦 国立病院機構 九州医療センター 耳鼻咽喉科

概要

疾患のポイント:
  1. 急性喉頭蓋炎は細菌感染による声門上部の急性炎症である。炎症に伴う浮腫は喉頭蓋から披裂部、披裂喉頭蓋ヒダ、喉頭蓋谷に及び、窒息を来すことがある。原因菌はH. influenzaeをはじめ、多菌種が原因となり得る。
 
診断: >詳細情報 
  1. 嚥下困難を伴う強い咽頭痛を訴える症例や声がおかしい(含み声)と訴える症例では、急性喉頭蓋炎を想起し鑑別に置くことが重要である。
  1. 急性喉頭蓋炎が疑われる場合はただちに耳鼻咽喉科医による診断を行い、喉頭蓋の腫脹を認める場合は呼吸困難がない場合でも入院による治療(気道確保の準備をしたうえで抗菌薬、ステロイドの全身投与)が必要である。
  1. 内視鏡または間接喉頭鏡で、発赤を伴い腫脹した喉頭蓋を確認することで診断される。ただし、特に小児では内視鏡検査や間接鏡による観察時の咽頭絞扼反射などにより急激な呼吸困難を来すことがあるので、気管切開などの気道確保の準備をしたうえでの検査が望ましい。
  1. 頚部側面X線検査(高圧X線撮影)では、腫脹した喉頭蓋がthumb printing signとして描出される。
  1. 重症度別喉頭所見:<図表>
  1. 頚部側面X線検査(高圧X線撮影)像:<図表>
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. 急性喉頭蓋炎における喉頭蓋の形状と呼吸困難の有無を診断基準とした病期分類として菊地らの分類が用いられる。
  1. 初診時にI期(喉頭蓋の腫脹が舌面にのみ認められるもの)、II期(喉頭蓋の腫脹が舌面から喉頭面に及んでいるもの)の症例は、適切な治療を早期に行えば予後は一般的に良好である。
  1. 初診時にIII期の症例や、起坐呼吸披裂部腫脹を認める症例に対しては、窒息に備えて気道確保の準備を早急に行う必要がある。
  1. また、症状発現から呼吸困難までの期間が1日未満である劇症型症例では窒息の危険性がきわめて高い。
  1. 急性喉頭蓋炎の重症度分類(菊地の分類):<図表>
 
治療: >詳細情報 
  1. I期、II期症例に対しては抗菌薬(セフェム系、ペニシリン系、クリンダマイシン)に加え、ステロイド薬を点滴する。
  1. III期症例に対しては抗菌薬、ステロイド薬投与とともに気道確保(気管切開、気管内挿管)の準備を行う。とりわけ劇症型の症例に対しては初診日に気道確保を行う。
  1. 橋本らは緊急気道確保の指標として、①起坐呼吸、②喉頭蓋腫脹が著明で披裂部腫脹がある、③症状出現から24時間以内に呼吸困難が生じている――ことを挙げている。
  1. 呼吸苦のため仰臥位となれない場合もあり、無理に仰臥位にすると状態が悪化するので注意を要する。坐位、半坐位にて輪状甲状膜切開、気管切開を試みるか軽い鎮静を行い迅速に気管内挿管をする。マスクによる陽圧換気の準備も必要である。
  1. 急性喉頭蓋炎の治療アルゴリズム:アルゴリズム
  1. 急性喉頭蓋炎における気道確保の指標:<図表>
  1. 急性喉頭蓋炎患者に対する気道確保時の体位とアプローチ:<図表>
  1. 喉頭蓋の位置:<図表>
 
専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. 急性喉頭蓋炎が疑われる場合は、気道閉塞が急速に進行する可能性も念頭に置き、ただちに耳鼻咽喉科専門医に紹介する。
 
臨床のポイント:
  1. 重症例は急激に窒息に至ることがあるので、呼吸苦がなくても入院加療とする。
  1. 緊急で気管切開が必要なケースもある。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初診時検査、治療例
  1. 嚥下困難を伴う強い咽頭痛を訴える症例や、声がおかしい(含み声)と訴える症例では、常に急性喉頭蓋炎を想起し鑑別に置くことが重要である。
  1. 急性喉頭蓋炎を疑う場合は、間接喉頭鏡検査、喉頭内視鏡検査で診断をつける。喉頭側面X線撮影(thumb print sign)は、耳鼻咽喉科医が不在の施設での診断に有用である。喉頭の視診が困難な場合は耳鼻咽喉科医に診察を依頼する。
  1. 頚部側面X線検査(高圧X線撮影)像:<図表>
  1. 補助検査として(重症度の評価、治療効果評価のため)血液検査(白血球数、CRP)も有用である。
  1. 頚部CT検査は頚部の膿瘍の合併の鑑別などには有用であるが、緊急を要する急性喉頭蓋炎の診断目的には用いない。仰臥位の体位により呼吸困難の増悪を来すことがあるので、喉頭蓋炎が疑われる場合は推奨されない。治療は、抗菌薬、ステロイド薬の点滴を行う。常に緊急気道確保の準備をしておく。呼吸困難のある症例は気道確保を行う。
○ 1)~4)の検査を迅速に行う。気道確保の準備をしたうえで、6)~8)のいずれかを5)、9)に併用する。
1)
咽頭、喉頭の視診(間接喉頭鏡、喉頭内視鏡)
2)
3)
4)
頚部側面X線検査(高圧X線撮影)
5)
サクシゾン注射用[300mg] 200mg/日  [適用内/用量内/㊜急性喉頭蓋炎](編集部注:想定する適用病名「急性喉頭蓋炎」/2017年4月)
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薬理情報 内分泌疾患用薬 >副腎皮質ステロイド薬
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝注 妊C 不明 児量有
6)
フルマリン静注用[1g] 2~4g/日3~7日 [適用内/用量内/㊜急性喉頭蓋炎]
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薬理情報 抗菌薬 >抗菌薬(オキサセフェム系)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝可 不明 不明 児量有
7)
ロセフィン静注用[1g] 2~4g/日3~7日 [適用内/用量内/㊜急性喉頭蓋炎]
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薬理情報 抗菌薬 >抗菌薬(セフェム系 第3世代)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝可 妊B 乳可 児量[有]
8)
ユナシン-S静注用[1.5g] 3~6g/日3~7日 [急性喉頭蓋炎は適用外/他適用用量内/㊜肺炎]
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薬理情報 抗菌薬 >抗菌薬(βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝可 妊B 乳可 児量有
9)
ダラシンS注射液[600mg] 1,200mg/日3~7日 [適用内/用量内/㊜急性喉頭蓋炎]
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薬理情報 抗菌薬 >抗菌薬(リンコマイシン系)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝注 妊B 不明 児量[有]

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)

急性喉頭蓋炎の治療アルゴリズム
頚部側面X線検査(高圧X線撮影)像
急性喉頭蓋炎における気道確保の指標
急性喉頭蓋炎患者に対する気道確保時の体位とアプローチ
急性喉頭蓋炎の重症度分類(菊地の分類)
重症度別喉頭所見
著者校正/監修レビュー済
2018/08/10

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、緊急入院、気道確保を検討すべき喉頭の所見として「高度な披裂部の腫脹(浮腫)」について追記した。


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