院内肺炎 :トップ    
監修: 具芳明 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター
上原由紀 順天堂大学医学部附属順天堂医院 総合診療科

概要

疾患のポイント:
  1. 院内肺炎(hospital-acquired pneumonia、HAP)とは、入院48時間以降に新たに出現した肺炎を指す。そのうち人工呼吸器が装着されているものを人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia、VAP)と呼ぶ。
  1. 日本では比較的軽症患者が多いため、HAPに占めるVAPの割合は少ない。ここではVAPを除くHAPに限定して議論する。
 
診断: >詳細情報 
  1. HAPの診断は困難であり、一意的な診断基準は存在しない。
  1. 急性発症の発熱、呼吸状態の悪化、咳嗽の増加、喀痰の増加、胸部聴診上のラ音、X線での新規の浸潤影、白血球の増加などを考慮し総合的に診断する。
  1. 鑑別疾患は心不全、肺塞栓症、肺胞出血、ARDS、結核など多様である。

重症度・予後: >詳細情報 
  1. 高齢、悪性腫瘍、免疫抑制、酸素化の増悪、意識障害、乏尿や脱水があると、予後不良と考えられている。また敗血症に陥っていれば重症とみなす。

治療: >詳細情報 
  1. 適切な培養を採取後、速やかにエンピリカルに抗菌薬を投与する。MRSAや緑膿菌のカバーも考慮するが、全例で必須ではない。
  1. ルーチンの補助治療、例えばステロイドや理学療法は必要ない。重症例ではステロイドの短期使用を行うことがある。

専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. 難治例、血液培養陽性例、耐性菌や感受性が複雑な場合、胸水穿刺など手技を要する場合、複数患者の集団発生の場合などでは、感染症や呼吸器の専門家にコンサルトする。
 
臨床のポイント:
  1. 院内肺炎の診断はしばしば困難であり、総合的な判断が必要となる。
  1. 全身状態や施設・地域の耐性菌事情を念頭に抗菌薬を選択する。常にMRSAや緑膿菌をカバーする必要はない。
  1. 通常の治療期間は7日程度、起因菌や状態によってはより長い治療期間を要する。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初期治療例
  1. 施設・地域の耐性菌事情により抗菌薬の選択を変える。 エビデンス  >詳細情報 
  1. 通常の投与期間は7日程度緑膿菌をはじめとする非発酵菌が原因なら14日程度、状態により21日。MRSA肺炎の場合は定見がないが、通常最低14日は治療する。
  1. 通常、HAPは点滴治療を行い、経口薬は用いないことが多い(ただし、エビデンスには乏しい)。
  1. 最近の入院歴や抗菌薬使用歴を有する患者、慢性呼吸器疾患などを認める患者では初期治療から緑膿菌カバーをすることが望ましい。
  1. 基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌、AmpC過剰産生菌を疑う場合は、詳細情報を確認する。 >詳細情報 
 
軽症に用いる治療例:
  1. 臨床的にMRSAや緑膿菌を疑わない軽症例では、セフトリアキソンナトリウム水和物1~2gを1日1~2回、アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム3gを1日4回などの選択を考慮する。
 
重症に用いる治療例:
  1. 重症例(免疫抑制、酸素化の悪化、意識レベルの低下、高齢、乏尿・脱水・急性腎不全などが複数存在する場合)、緑膿菌、MRSAの関与を疑う場合は、ピペラシリンナトリウム・タゾバクタムナトリウム4.5gを1日4回とバンコマイシン塩酸塩1gを1日2回の併用などを考慮する。
  1. ピペラシリンナトリウム・タゾバクタムナトリウムの代わりに、セフタジジム水和物、セフェピム塩酸塩水和物、ピペラシリンナトリウム、アズトレオナム、カルバペネム系薬(ertapenemを除く)、ニューキノロン系薬を用いることもできる。
○ 緑膿菌やMRSAを疑わない軽症例では、1) あるいは2) の単剤を用いる。重症例、緑膿菌を疑う患者では、3)あるいは4)MRSAを疑う患者では、さらに5)を追加して用いる。

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薬剤監修について:
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著者校正/監修レビュー済
2017/11/30


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