頚椎症性筋萎縮症 :トップ    
監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室
永田見生 久留米大学 学長

概要

疾患のポイント:
  1. 頚椎症性筋萎縮症とは、Keeganが報告した上肢帯の麻痺を呈する近位型と、平山が提唱した若年性一側性筋萎縮症の遠位型筋萎縮症に分類される疾患である。
  1. 近位型では多くは片側の三角筋萎縮、上腕二頭筋の筋力低下を認め、発症に先行して上肢帯に痛みを訴えることが多い、その後、脱力を生じる。
  1. 遠位型筋萎縮症は若年の男性に多く、片側の手内在筋や前腕尺側に筋萎縮を認め、疼痛やしびれを伴わない。2~3年で症状が固定する。遠位型は若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)と呼ばれ、病態は屈曲脊髄症(flexion myelopathy)とされ近位型とは異なる。
  1. 近位型が多いので、ここでは近位型の頚椎症性筋萎縮について述べる。
  1. 近位型頚椎症性筋萎縮のほとんどは、片側の肩の挙上ができないか、挙上困難を訴えて受診する。患者には患側の三角筋のみならず、上腕二頭筋、前腕回外筋の筋力低下も認める。
 
診断:アルゴリズム >詳細情報 
  1. 片側の肩を挙上できない患者で、肘の屈曲筋力と前腕の回外筋力も低下している特徴的な臨床所見で診断できる。
 
重症度・予後評価: >詳細情報 
  1. 保存療法により全体の58%が発症から平均10.2±7週でADLに支障がない程度に改善する
  1. 保存療法によりADLに支障がない程度に改善する関係各項目の改善率(%):
  1. 発症年齢:49歳以下では83%が保存療法で改善、50~59歳(50%)、60~88歳(45%)
  1. 発症時の状況:誘因あり(64%)、前駆症状あり(73%)
  1. 診察所見:神経根圧迫テスト陽性(81%)、肩周辺の筋萎縮なし(91%)、病型:神経根症(66%)、脊髄症(32%)
  1. X線所見:頚椎の退行変性なし(84%)
  1. CT所見:患側椎間孔の狭小なし(83%)
  1. 初診時に以下の4項目のいずれかを認める患者では早期手術を選択すべきである
  1. 発症から来院までの期間が3カ月以上で、肩関節筋力が徒手筋力検査(MMT)で2(poor9以下。
  1. 発症から来院までの期間に関係なく、肩関節の筋力がMMTで2(poor)以下で肘屈曲筋力が1(trace)以下。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

診断のための検査例・保存療法例
  1. 肩関節(三角筋)、肘関節(上腕二頭筋)、前腕回外筋の徒手筋力検査、感覚障害の有無、病的反射を含む四肢腱反射の検査を必ず行う。ほとんどの患者で、画像診断、必要があれば筋電図検査を行う。
  1. 保存療法で改善する期間は発症から通常3カ月、長くて6カ月であるが、筋力が回復せず手術を勧めても手術を希望しない患者に対しては、上肢の運動療法を症状が増悪しない目的で継続すべきであり、生活指導(頚椎後屈禁止)、内服(ビタミンB12、ビタミン E)などを続ける。
  1. 頚椎のX線、CT、MRI検査、必要があれば筋電図検査を行う。内服(ビタミン B12、ビタミンE)などを続ける。
○ 診断の目的で、1)2)を行う。神経症状と疼痛が強い場合、治療として上記の方針にそって、必要に応じて3)~7)を適宜併用する。

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(詳細はこちらを参照)

近位型頚椎症性筋萎縮(Keegan麻痺)の治療指針
近位型頚椎症性筋萎縮の発症メカニズム
特徴的な診断方法 ドロップアームテスト
入院して行う頚椎持続牽引(Good Samaritan :グッドサマリターン法)
顎付頚椎装具:Ortho Collar(オルソカラー)
各種頚椎装具による頚椎前・後屈許容可動範囲
近位型頚椎症性筋萎縮の保存療法による改善例:典型例のCT画像(CT所見と症状が一致)
48歳男性、c5/6ヘルニアをfocusとする右近位型頚椎症性筋萎縮
著者校正/監修レビュー済
2016/04/01


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