旅行者下痢症 :トップ    
監修: 大曲貴夫 国立国際医療研究センター
竹下望 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター/感染症内科

概要

疾患のポイント:
  1. 旅行者下痢症とは、主に国外旅行者が滞在先で遭遇する下痢症状である。古典的な定義は、海外渡航中または帰国後短期に、1日3回以上の非有形便を認めることである。
  1. 旅行者下痢症は、発展途上国に渡航した際に認められる健康問題の中で最も多い。旅行者の30~40%が罹患するとされる。
  1. 感染経路は水、食事が主である。
  1. 細菌、ウイルス、寄生虫など原因となる病原体は多様だが、毒素原生大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli、ETEC)が最多である。
 
診断: >詳細情報 
  1. 海外渡航中または帰国後短期に、1日3回以上の非有形便を認めるという病歴および症状で診断する。
  1. 確定診断には旅行者下痢症の病原微生物の確定が必要であり、便培養の結果で確定診断となる。抗菌薬を投与する場合は、その前に便培養を提出する。
  1. 渡航歴と関係のある全身性発熱疾患の可能性がある場合は、除外することが必要である。特にマラリアの除外は必須である。
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. 脱水に伴う循環血液量減少性ショックの場合、急性腎前性脱水を伴う場合があり、治療期間長期化や重症化と関連する。
  1. 免疫不全者でのサルモネラ菌血症に伴う感染性動脈瘤、Vibrio vulnificusに伴う敗血症や壊死性筋膜炎、胃摘出やH2遮断薬内服歴で重症化するVibrio choleraeのように、基礎疾患により重症化することもあるため注意が必要である。
 
治療: >詳細情報 
  1. 旅行者下痢症は一般的に自然経過で改善するため、輸液や電解質補正による対症療法が重要である。ただし症状が持続する場合や症状が強い場合には、抗菌薬投与を行う。
 
専門医に紹介: >詳細情報 
  1. 急性腎不全を伴う症例、ジアルジア症やアメーバ症などの寄生虫・原虫疾患を考慮する場合で、寄生虫検査できない場合は、専門医の紹介を考慮する。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初診時検査例
  1. 下痢症の原因検査の目的は①随伴症状としての下痢症の検索②感染性腸炎原因微生物の同定③感染性以外の原因の検索――に分けられる。
  1. 随伴症状としての下痢症の検索:消化管感染症以外の感染症も下痢症状を起こし得るため、熱帯熱マラリア、デング熱、レプトスピラ症などの疾患を常に鑑別に入れ、必要に応じて検査を追加する。 エビデンス 
  1. 感染性腸炎原因微生物の同定:感染性腸炎の原因特定は、細菌培養、便原虫・虫卵検査が中心になる。細菌検査ではSalmonella、Shigella、Campylobacter、E. coli、O157を考慮して培養を行う。抗菌薬投与時にはClostridium difficile toxin A+Bを検査する。 エビデンス 
○ 熱帯性マラリアを疑った場合は5)を、原因微生物の同定目的で、3)、6)~8)を考慮する。重症、敗血症を疑った症例では1)2)4)を考慮する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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旅行者下痢症診断のアルゴリズム
著者校正/監修レビュー済
2018/04/05