機能性ディスペプシア :トップ    
監修: 上村直実 国立国際医療研究センター 国府台病院
富永和作 大阪市立大学医学部附属病院 消化器内科

概要

ポイント:  >詳細情報 
  1. 機能性ディスペプシアとは、器質的疾患がないのにもかかわらず上腹部症状を慢性的に訴える症候群である。機能性ディスペプシアの症状はRome III基準では、胃もたれ、早期満腹感などの食事と関連する症状、胃の痛み、心窩部灼熱感などの食事と関連しない症状に大別される。
  1. 機能性ディスペプシアの有病率は高く、日常診療できわめて頻繁に遭遇する疾患である。日本人の25%が過去3カ月に1回以上の上腹部症状を有しており、9%が1週間に1回以上の中等度以上の上腹部症状を有しているという。 エビデンス 
  1. 機能性ディスペプシアの病態は複雑で、胃運動機能異常、内臓知覚過敏、胃酸分泌、社会心理的因子、ヘリコバクター・ピロリ感染、食事や運動などのライフスタイル、遺伝子異常や感染後ディスペプシアなど多因子によるものと考えられている。 エビデンス 
  1. 機能性ディスペプシアの病態シェーマ:<図表>
 
診断: >詳細情報 
  1. 上腹部症状(胃もたれ、早期満腹感などの食事と関連する症状、胃の痛み、心窩部灼熱感などの食事と関連しない症状)を主訴に来院する患者で内視鏡で器質的所見がない場合には機能性ディスペプシアと診断することが多い。
  1. 危険徴候(体重減少、進行性の嚥下困難症、繰り返す嘔吐、消化管出血、貧血、発熱、胃癌の家族歴、40歳以上に初発するディスペプシア)がある場合には、腹部エコーや下部消化管内視鏡など特に注意して検査を進める エビデンス 
  1. 診断基準として、Rome III基準による機能性ディスペプシアの診断が存在する(<図表>)。しかし、この基準は臨床研究用に厳しく設定されたものであり、日常臨床で用いにくい側面もある。
  1. RomeIII基準による機能性ディスペプシアの診断:<図表>
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. 生命予後は良好である。症状に関しては、治療に反応して治癒する患者はそれほど多くない。機能性ディスペプシア患者を対象にして平均5年間強の経過追跡をした報告では、約半数の患者の症状が消失または改善していたが、約半数の患者は症状が変わらないかまたは増悪していた。 エビデンス 
 
治療: >詳細情報 
  1. 治療には非薬物治療と薬物治療がある。下記の機能性ディスペプシアの治療アルゴリズムに沿って治療を行うとよい。ヘリコバクターピロリ感染症を認める場合は除菌を検討する。その後食事指導を行い、その後症状が継続する場合は、症状に沿った薬物治療を検討する。
  1. わが国の機能性ディスペプシアの治療アルゴリズム(機能性消化管疾患診療ガイドライン2014—機能性ディスペプシア[FD]アルゴリズム
  1. 機能性ディスペプシアの治療においてプラセボ効果は平均56%で何らかの改善を認めるとの報告もあり、低くはない。
  1. 胃の痛みが主となる症状の場合や、胸やけなどの逆流症状を主訴とする場合には、酸分泌抑制薬を用いる。4~8週間投与し、効果の判定を確認し、効果がない場合は、中止をするか、運動機能改善薬の併用を検討する。
  1. 胃もたれ症状を主訴とする場合には運動機能改善薬を用いる。4~8週間投与し、効果の判定を確認し、効果がない場合は、中止をするか、酸分泌抑制薬の併用を検討する。
  1. また、六君子湯を用いることや、合併疾患に基づき精神作用薬の使用を開始することもある。
 
専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. 症状が強く治療が奏効しない場合には専門医に相談、あるいは紹介する。

臨床のポイント:
  1. 『症候性の慢性胃炎』とされているものの大部分が機能性ディスペプシアである。
  1. ピロリ菌陽性の場合には、第一選択として除菌治療を行う。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初期治療方法
  1. 酸分泌抑制薬(パリエット、タケプロン、ネキシウム)、運動機能改善薬(ガスモチン、ガナトン、プリンペラン、ナウゼリン)が治療の柱となる。 エビデンス 
  1. 治療はアルゴリズムに沿って行う。
  1. わが国の機能性ディスペプシアの治療アルゴリズム(機能性消化管疾患診療ガイドライン2014—機能性ディスペプシア[FD]アルゴリズム
  1. 胃の痛みが主となる症状の場合や、胸やけなどの逆流症状を主訴とする場合には、酸分泌抑制薬、胃もたれ症状を主訴とするには運動機能改善薬を用いる。
○ 過酸症状が主体の際には下記の1)2)3)を、胃もたれなど運動機能低下を考える場合には45)を、嘔気のある場合には67)を処方する
1)
パリエット錠[10mg] 1錠 分1 朝食前 次回外来まで エビデンス  [機能性ディスペプシアは適用外/他適用用量内/㊜胃潰瘍](編集部注:本ページで想定する適用病名「機能性ディスペプシア、胃炎」/2015年11月)
薬剤情報を見る
薬理情報 消化性潰瘍治療薬 >プロトンポンプ阻害薬
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝注 妊B 乳注 児量無
2)
タケプロンOD錠[30mg] 1錠 分1 朝食前 次回外来まで [機能性ディスペプシアは適用外/他適用用量内/㊜胃潰瘍]
薬剤情報を見る
薬理情報 消化性潰瘍治療薬 >プロトンポンプ阻害薬
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝注 妊B 乳注 児量無
3)
ネキシウムカプセル[20mg] 1カプセル 分1 朝食前 次回外来まで [機能性ディスペプシアは適用外/他適用用量内/㊜胃潰瘍]
薬剤情報を見る
薬理情報 消化性潰瘍治療薬 >プロトンポンプ阻害薬
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝注 妊C 不明 児量有
4)
ガスモチン錠 [5mg] 3錠 分3 毎食後 次回外来まで エビデンス  [適用内/用量内/㊜胃炎]
薬剤情報を見る
薬理情報 消化器用薬(その他) >セロトニン受容体作動薬
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝注 妊1 不明 児量無
5)
ガナトン錠 [50mg] 3錠 分3 毎食前 次回外来まで [適用内/用量内/㊜胃炎]
薬剤情報を見る
薬理情報 胃腸薬・止痢薬・整腸薬・下剤 >ドパミン受容体拮抗薬(制吐薬)
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝可 妊1 不明 児量無
6)
プリンペラン錠 [5mg] 3錠 分3 毎食前 次回外来まで [適用内/用量内/㊜胃炎]
薬剤情報を見る
薬理情報 胃腸薬・止痢薬・整腸薬・下剤 >ドパミン受容体拮抗薬(制吐薬)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝可 妊B 乳注 児量無
7)
ナウゼリン錠 [10mg] 3錠 分3 毎食前 次回外来まで [適用内/用量内/㊜胃炎]
薬剤情報を見る
薬理情報 胃腸薬・止痢薬・整腸薬・下剤 >ドパミン受容体拮抗薬(制吐薬)
同効薬一覧
要注意情報

上部消化管症状を認める、器質疾患を除外するための検査
  1. 鑑別疾患は、胃食道逆流症、身体表現性障害、気分障害、萎縮性胃炎、びらん性胃炎、糖尿病、甲状腺疾患などである。
○ 糖尿病や甲状腺機能障害の合併を考慮した場合、下記の1)2)を、器質的疾患を除外するために3)4)の検査を行う
1)
TSH[ECLIA], T3[ECLIA], T4[ECLIA]
2)
3)
上部消化管内視鏡検査 エビデンス 
4)
腹部超音波検査、腹部CT検査 エビデンス 

追加情報ページへのリンク

薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)

わが国の機能性ディスペプシア治療ガイドラインにおけるアルゴリズム(機能性消化管疾患診療ガイドライン2014—機能性ディスペプシア[FD])
RomeIII基準による機能性ディスペプシアの診断
機能性ディスペプシアの病態シェーマ
機能性ディスペプシア患者へのヘリコバクター・ピロリ治療群とプラセボ群とを比較した9件の試験のフォレストプロット
機能性ディスペプシアの病態シェーマ
機能性ディスペプシア診断のためのRome III基準
著者校正/監修レビュー済
2016/09/02


詳細ナビ