今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 福土 審 石巻赤十字病院心療内科・東北大学

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構(JIHS)国立国府台医療センター/東京医科大学消化器内視鏡センター

著者校正/監修レビュー済:2024/11/27
参考ガイドライン:
  1. 日本消化器病学会:日本消化器病学会機能性消化管疾患診療ガイドライン2020 ―過敏性腸症候群(IBS) (改訂第2版)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆した。
  1. 診断については、2016年に公刊されたRome IV基準が国際的に使用されているが、2026年にRome V基準に切り替えられるため、それ以降はRome V基準を使うことが世界標準である。
  1. 大腸内視鏡検査において、American College of Gastroenterology(ACG)のIBS診療ガイドラインでは、警告症状・検査値異常のない45歳未満のIBS症状を持つ患者にも通常検査として実施することには反対している(推奨度3、OG)。すなわち、個々の患者の病像に応じて検査を組み合わせることが重要である。
  1. 以前、機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorder:FGID)と呼ばれていた疾患群について、脳腸相関病(disorders of gut-brain interaction:DGBI)へ用語を変更した。※英語語順通り腸脳相関病でも構わない。

概要・推奨   

  1. 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の経過観察に臨床検査は有用である(推奨度1、S/CSJ)
  1. IBSの治療に高分子重合体、食物繊維は有用である(推奨度1、RJ)
  1. IBSにプロバイオティクスは有用である(推奨度1、S/CSJ)
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  1. IBS-Dの治療に5-HT3拮抗薬は有用である(推奨度1、S/CSJ)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)とは、慢性の腹痛が下痢や便秘など便通の異常と関連して持続し、通常検査では癌や潰瘍性病変などの器質的病変を欠く疾患である。主として大腸・小腸の運動、知覚、粘膜透過性、分泌の異常と脳腸相関が増強した機能障害である。
  1. わが国における過敏性腸症候群の有病率は人口の14.2%、1年間の罹患率は1~2%、内科外来患者の31%と高頻度である。女性にやや多く、男女比は日本では1:2である。また、20~30代の若年成人で頻度が高く、その後次第に減少する。ほかに高学歴であると罹患率が高く、身体不安やうつ状態を測定した尺度が高い患者でも罹患率が高い。
  1. 診断については、2016年に公刊されたRome IV基準が国際的に使用されている[1]。Rome IV基準ではIBSを腹痛を有する典型的患者だけに絞ったため、有病率は世界人口の4.1%(日本では2.2%)、男女比1:1.7であった[2]。この基準は2026年にRome V基準に切り替えられるため、それ以降はRome V基準を使うことが世界標準である。
 
過敏性腸症候群(IBS)のRome IV診断基準

他疾患が否定されれば、脳腸相関病(disorders of gut-brain interaction:DGBI)であり、Rome IV基準に基づいてIBSを診断する。IBSは、Bristol便形状尺度(<図表>)に基づいて4型に便宜的に分類する(<図表>)。Rome IVのIBS診断基準を満たさなければ、IBS以外のDGBIである。腹痛のない便秘は機能性便秘、腹痛のない下痢は機能性下痢、便通異常のない腹痛は機能性腹痛症候群、便通異常のない腹部膨満感は機能性腹部膨満、いずれでもなければ非特異機能性腸疾患である。Rome IVは2016年に公刊された。

出典

Mearin F, Lacy BE, Chang L, Chey WD, Lembo AJ, Simren M, Spiller R.
Bowel Disorders.
Gastroenterology. 2016 Feb 18;. doi: 10.1053/j.gastro.2016.02.031. Epub 2016 Feb 18.
Abstract/Text Functional bowel disorders are highly prevalent disorders found worldwide. These disorders have the potential to affect all members of society, regardless of age, gender, race, creed, color or socioeconomic status. Improving our understanding of functional bowel disorders (FBD) is critical as they impose a negative economic impact to the global health care system in addition to reducing quality of life. Research in the basic and clinical sciences during the past decade has produced new information on the epidemiology, etiology, pathophysiology, diagnosis and treatment of FBDs. These important findings created a need to revise the Rome III criteria for FBDs, last published in 2006. This manuscript classifies the FBDs into five distinct categories: irritable bowel syndrome (IBS); functional constipation (FC); functional diarrhea (FDr); functional abdominal bloating/distention (FAB/D); and unspecified FBD (U-FBD). Also included in this article is a new sixth category, opioid induced constipation (OIC) which is distinct from the functional bowel disorders (FBDs). Each disorder will first be defined, followed by sections on epidemiology, rationale for changes from prior criteria, clinical evaluation, physiologic features, psychosocial features and treatment. It is the hope of this committee that this new information will assist both clinicians and researchers in the decade to come.

Copyright © 2016 AGA Institute. Published by Elsevier Inc. All rights reserved.
PMID 27144627
 
  1. IBSの主要病態生理は消化管運動異常、内臓知覚過敏、心理的異常の3つであるが、これらは脳腸相関(brain–gut interaction)によって相互に関連しており、ストレスによる症状の発症・増悪も顕著である[3]
  1. IBSの成因はいまだ不明だが、感染性腸炎後IBSの一群の存在から、腸内細菌の関与が着目されている。
  1. 治療については、わが国の医療に沿った日本消化器病学会による診断・治療ガイドラインが公表されている[3]。Rome委員会でも治療アルゴリズムが考案されている[4]
  1. 過敏性腸症候群(IBS)の診断フローチャート:アルゴリズム
  1. 過敏性腸症候群(IBS)の治療:第1段階:アルゴリズム
  1. 過敏性腸症候群(IBS)の治療:第2段階:アルゴリズム
  1. 過敏性腸症候群(IBS)の治療:第3段階:アルゴリズム
問診・診察のポイント  
  1. 腹痛が、最近3カ月のなかの1週間につき少なくとも1日以上は生じる。これは1カ月につき4日以上でもよい。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
福土 審 : 未申告[2024年]
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),カイゲンファーマ(株))[2025年]

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