今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 小早川雅男 福島県立医科大学 医療研究推進センター

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構 国府台医療センター

著者校正済:2025/03/12
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. 日本消化器病学会:機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)改訂第2版
  1. 日本ヘリコバクター学会H.pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2024改訂版
  1. EHMSGManagement of Helicobacter pylori infection: the Maastricht VI/Florence consensus report
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. H.pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2024改訂版』に基づいて、以下について加筆・修正した。
  1. ピロリ菌感染診断前のプロトンポンプ阻害薬(PPI)(ボノプラザン(VPZ)を含む)の中止に関する注意事項を迅速ウレアーゼ試験(RUT)と尿素呼気試験(UBT)のみに変更した。
  1. 培養法、鏡検法、抗体法(血液・尿)、便中抗原測定法、核酸増幅法(胃液)によるピロリ菌の感染診断は、PPI(VPZを含む)の影響を受けにくいとされる。一方、UBTおよびRUTによるピロリ菌の感染診断はPPIやVPZを内服していると偽陰性となる可能性があるため、感染診断前にはPPI(VPZを含む)を少なくとも2週間以上、可能であれば4週間は休薬することが勧められる。
  1. 一次除菌のレジメンについて、PPIはVPZのみへ変更し、VPZ、アモキシシリン(AMPC)、クラリスロマイシン(CAM)の7日間投与による3剤併用療法の推奨へ変更した。
  1. ピロリ菌除菌に関するエビデンスの追加による記載整備を行なった。
  1. 中国で行われた除菌治療のRCTの26.5年のフォローアップでは、全被験者集団において除菌治療が有意に胃癌の発生リスクを低下させ(HR 0.57)、前癌病変(慢性萎縮性胃炎、腸上皮化生、または異形成)のない集団で顕著であった(HR 0.37)(Yan L, et al. Gastroenterology. 2022 Jul;163(1):154-162.e3.)。したがって、早期胃癌の内視鏡治療後の異時性再発予防にはピロリ菌の除菌が強く推奨される。胃癌の一予防効果としては萎縮の進行していない若年期での除菌治療が重要である。
  1. 感受性試験に基づく個別化治療において、CAM耐性菌に対する一次除菌でのVPZ、メトロニダゾール(MNZ)、CAM国内使用経験では、98%以上の除菌成功率が報告されている(Horie R, et al. Helicobacter. 2020 Aug;25(4):e12698.)。ただし、保険適用上の問題がある。

概要・推奨   

  1. 胃粘膜組織中に好中球と単核球を認めた場合には、ピロリ菌感染が原因である活動性慢性胃炎である可能性が高く、急性胃炎であるAGMLの一因もピロリ菌の初感染の可能性があり、ピロリ菌の感染診断を考慮することが勧められる(推奨度1)
  1. ピロリ菌感染による慢性胃炎のある患者、特に胃粘膜萎縮の進行した症例には定期的な胃癌のスクリーニングが勧められる(推奨度1)
  1. ピロリ菌による慢性胃炎の患者について、早期胃癌を内視鏡治療によって治療した後はピロリ菌の除菌を行うことが強く勧められる(推奨度1)
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
小早川雅男 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),大塚製薬(株))[2024年]

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