糖尿病性昏睡 :トップ    
監修: 野田光彦 埼玉医科大学
吉岡 成人 NTT東日本札幌病院

概要

疾患のポイント:
  1. 糖尿病性昏睡とは、インスリンの極端な欠乏とインスリン拮抗ホルモン(グルカゴン、コルチゾール、アドレナリンなど)の増加により、高血糖、高ケトン血症、アシドーシスを来した状態が糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)である。
 
診断: >詳細情報 
  1. 高血糖(血糖値≧250mg/dl)、尿ケトン体陽性、動脈血ガス分析でアシドーシス(pH≦7.30、重炭酸塩濃度<18mEq/l)が確認されれば、DKAとして治療を開始する。 エビデンス 
  1. 並行して、感染症(気管支肺炎、尿路感染症)や虚血性心疾患の合併の有無を確認する。
  1. がん化学療法で使用される免疫チェックポイント阻害薬(nivolmab、pembrolizumab、ipilimumabなど)や向精神薬(quetiapine)によってDKAがひきおこされることがある[1]。
  1. 糖尿病治療のためSGLT2阻害薬を使用している患者で、糖質の摂取を制限している場合には、随時血糖値が200~300mg/dL程度であっても、DKAをひきおこすことがあり、正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(euglycemic diabetic ketoacidosis,euglycemic DKA)と呼称される[2]。
  1. アルコール性ケトアシドーシスが合併している場合はチアミンの投与を行う。
  1. 鑑別が必要な疾患として、著しい高血糖(≧600mg/dl)であっても、血清浸透圧が高く(≧320mOsm/l)アシドーシスを認めない場合(pH>7.30、HCO3>18~20mEq/l)、高血糖高浸透圧状態(HHS)と診断する。

重症度・予後: >詳細情報 
  1. 治療経過中に肺水腫を合併する場合、脳浮腫を合併する場合、アルコール性ケトアシドーシスを合併している場合は予後が不良である。

治療: >詳細情報 
  1. 生理食塩水を中心とした十分な輸液とインスリンの点滴静注を行いつつ、カリウムの補充も怠らないことが必要である。 エビデンス   

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初期検査、治療例
  1. 生理食塩水を中心とした十分な輸液とインスリンの点滴静注を行いつつ、カリウムの補充も怠らないことが必要である。 エビデンス   エビデンス   エビデンス 
  1. 点滴量は心不全、腎不全の有無などで調整する必要があるが、心肺機能に問題がないと判断した場合はDKA、高浸透圧非ケトン性昏睡(HONC)では1L/時より始める。 エビデンス   エビデンス 
    初期輸液は脱水の是正のため生理食塩水にて治療を開始し、血糖値≦250mg/dlになった時点で、5~10%グルコース液に変更する。 エビデンス   エビデンス 
    0.1U/kg/時のインスリンを持続静注することで、75~100mg/dl/時の速度で血糖は低下することが知られている。
  1. 意識障害があり、重症のアシドーシス (pH <7.0)を認める患者は、アシドーシスの補正のために重炭酸塩を(メイロン40mlを注射用蒸留水160mlに混和して1時間で点滴)投与することを考慮してもよい。 エビデンス 
  1. インスリンの投与により血清カリウムが低下するため、血清カリウムが4.5mEq/l以下であれば生理食塩水500mlにKCL20mEqを混和して1~2時間で点滴を行う。 エビデンス 
  1. 経口が可能になり次第、皮下インスリンに変更する。体重あたり、0.5~0.8単位の合計から、(超)速効型インスリン 約1/5分を各食前に 就寝時に持効型インスリンアナログ製剤約2/5分を投与することより調節。
  1. 例:体重60kgであれば、体重あたり0.5単位(30単位)を、各食前に(超)速効型インスリン6単位、持効型インスリンアナログ製剤(ランタス、ランタスXRないしはトレシーバ)を就寝時に12単位より調節。
○ 初診時の検査として、1)-21)を考慮する。初期治療として22)23)にて加療を開始し、血清カリウムが4.5mEq/l以下であれば22)を24)に変更することを考慮する。

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リファレンス

img  1:  Ikegami H et al.:Immune checkpoint therapy and type 1 diabetes. Diabetol Int 7,221-227,2016
img  2:  Euglycemic Diabetic Ketoacidosis: A Potential Complication of Treatment With Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibition.
 
PMID 26078479  Diabetes Care. 2015 Sep;38(9):1687-93. doi: 10.2337/dc1・・・
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)

著者校正/監修レビュー済
2018/07/23

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、薬物の副作用としての糖尿病昏睡についての新たな記載を追加し、用語の変更を行った。