緊張性気胸 :トップ    
監修: 林寛之 福井大学医学部附属病院
東裕之 福井県立病院 救命救急センター

概要

疾患のポイント:
  1. 緊張性気胸とは、患側の胸腔内圧が異常に上昇した結果、患側肺の虚脱、横隔膜低位、健側への縦隔偏位、静脈還流障害による心拍出量の低下を来した状態である。超緊急疾患であるうえ、診断を確定することが非常に困難な疾患であり、超緊急な状態で臨床的に疑った場合は加療を行う。
  1. 緊張性気胸のリスクの高い患者は、①ICUでの呼吸器管理患者、②外傷患者、③心肺蘇生患者、④喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、⑤非侵襲的呼吸器管理患者、⑥チェストチューブの閉塞・クランプ・誤留置、⑦中心静脈穿刺後の患者――である。特に、外傷による心肺停止状態や陽圧換気開始直後のショックでは、まず鑑別すべき疾患となる。
  1. COPDなどの内科疾患でも起こり得る点は注意すべきである。
 
診断:アルゴリズム >詳細情報 
  1. 臨床診断が大原則であり、胸部X線を撮影してはならない。
  1. 緊張性気胸の診断ポイントは、血圧低下や頚静脈怒張といった心タンポナーデに似た症状や、さらにチアノーゼを認める場合もあることである(身体所見一覧:<図表>)。
  1. ショック症状がなく、胸部X線を行う余裕がありそうな場合であっても、検査を行う過程でショックに移行する可能性を十分に認識して検査を行っていく必要がある。
  1. 胸腔穿刺をせずに緊急脱気が必要な症例:アルゴリズム
  1. 意識清明な患者で緊張性気胸が疑われた場合のアルゴリズム:アルゴリズム
  1. 陽圧換気状態の患者で緊張性気胸が疑われた場合のアルゴリズム:アルゴリズム
  1. 気胸の診断に超音波の有用性が示唆されてきている。ただし皮下気腫があると抽出しにくい。
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. 緊張性気胸は全例重症であり、胸部X線ではなく、臨床診断にて速やかな治療が必要である。
 
治療: >詳細情報 
  1. 治療は、何よりも脱気を行うことであるが、胸腔穿刺のみでは不成功に終わることが多く、胸腔穿刺を行う場合、胸腔ドレナージを行うことを前提にドレナージの準備ができるまでの間に胸腔穿刺を行い、穿刺後に引き続いて胸腔ドレナージを行う必要がある。ただし、心肺停止状況下では速やかな緊急脱気が必要であり、胸腔穿刺を省略できる。
  1. 手技:
  1. 胸腔穿刺を患側の第2肋間鎖骨中線上に胸腔穿刺は18G以上の太い静脈留置針を用いて行う。
  1. 胸腔穿刺:<図表>
  1. 胸腔穿刺部位:<図表>
  1. 胸腔穿刺のみでは不十分なことが多いため、胸腔ドレナージを第4または第5肋間の中腋窩線前方で行う。 エビデンス 
  1. 胸腔ドレナージチューブ挿入方法:<図表>
  1. 穿刺の成功率や、穿刺部位の正確性という点で、第2肋間鎖骨中線上ではなく、第5肋間前腋窩線で穿刺を行うことも考慮してもよいかもしれない。 エビデンス 
 
専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. 外傷による緊張性気胸の場合、大量血胸などにより開胸術が必要になることもあり胸部外科へコンサルトする場合があるが、明確な基準はないため、各施設の状況に応じる。
 
臨床のポイント:
  1. 緊張性気胸は、臨床診断で治療を開始しなければならない。
  1. ハイリスク患者(外傷、気管挿管中の患者、喘息・COPDの患者、胸腔チューブ挿入中、中心静脈穿刺後の患者)で、急激に血圧低下、SpO2低下をみた場合は緊張性気胸を疑う。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

緊張性気胸を疑った際の治療例
  1. 酸素投与と脱気がすべてである。
  1. 胸壁に穴を開けることが一番の治療となる。
  1. ドレナージチューブや吸引器などの準備は緊急脱気が済んでからで十分である。
  1. 胸腔ドレナージを行うときは、内筒を使用せずに挿入する。ペアンにて鈍的に胸膜を穿刺する。穿刺後は指を挿入して胸膜に癒着がないことを確認したうえで胸腔チューブ先端をペアンでクランプした状態でチューブを胸腔内に挿入する。
○ 胸腔ドレナージを行うための準備に時間を要する場合、胸腔穿刺を行う。
1)
酸素投与
2)
胸腔穿刺  エビデンス  エビデンス 
3)
胸腔ドレナージ

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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緊張性気胸の診断
胸腔穿刺をせずに緊急脱気が必要な症例
意識清明な患者で緊張性気胸が疑われた場合のアルゴリズム
陽圧換気状態の患者で緊張性気胸が疑われた場合のアルゴリズム
身体所見
緊張性気胸
著者校正/監修レビュー済
2017/02/28


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