今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 牧野康男 庄原赤十字病院産婦人科

監修: 金山尚裕 静岡医療科学専門大学校

著者校正済:2024/05/15
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
日本産科婦人科学会日本産婦人科医会:産婦人科診療ガイドライン産科編2023.2023.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』に基づき、切迫早産の診断週数と子宮収縮抑制薬の投与方法を修正した。

概要・推奨   

  1. 妊娠週数24週以降34週未満の早産が1週以内に予想される場合、ベタメタゾン12 mgを24時間ごと、計2回、筋肉内投与する(推奨度2)
  1. 妊娠週数22週以降24週未満の早産が1週以内に予想される場合、ベタメタゾン12 mgを24時間ごと、計2回、筋肉内投与する(推奨度3)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 切迫早産は、「妊娠22週0日から36週6日までの妊娠中に、規則的な子宮収縮が認められ、かつ子宮頸管の開大度・展退度に進行が認められる場合、あるいは初回の診察で子宮頸管の開大が2 cm以上となっているなど、早産となる危険性が高いと考えられる状態」と定義されている[1][2]
 
「早産・切迫早産」について

早産とは
早産とは正期産(妊娠37週0日~妊娠41週6日まで)以前の出生をいいます。日本では妊娠22週0日~妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。妊娠22週未満の出産は流産といい、早産とは区別されます。国による医療技術の違いにより、妊娠24週以降や、妊娠28週以降に出産しなければ、早産として扱わない国も多くあります。妊娠22週で生まれた場合、早産となりますが赤ちゃんの体重は500g前後で長期間の新生児医療(新生児集中治療室での治療)が必要となり、また、小さく生まれた赤ちゃんほど、後で重篤な障害が出現する可能性が高くなります。最近では、妊娠34週以降の、正常の分娩時期に近い早産であっても、呼吸障害など長期に障害を残すことが報告されています。ですから、早産にならないように妊娠中、定期的な健診を受けていただき、早産になりやすい状況の早期診断と予防が必要になります。ちなみに早産は全妊娠の5%に発生し、その原因は感染や体質によることが多いといわれています。また、妊娠高血圧症候群、前置胎盤(胎盤が子宮口をふさいでいる状態)、常位胎盤早期剝離(分娩前に胎盤が子宮の壁からはがれてしまうこと)、胎児機能不全(胎児の元気がなくなってくる状態)などでは子宮内では赤ちゃんが生きられない状態になり、人工的に早産とせざるを得ない場合もあります。
 
切迫早産とは
早産になりかかっている状態、つまり早産の一歩手前の状態を切迫早産といいます。子宮収縮が頻回におこり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態や破水(子宮内で胎児を包み、羊水が漏れないようにしている膜が破れて、羊水が流出している状態)をしてしまった状態のことです。
 切迫早産の治療では、子宮口が開かないようにするために、子宮収縮を抑える目的で子宮収縮抑制剤を使用します。また、切迫早産の主な原因である微生物による腟内感染を除去するために抗生剤を使用することもあります。子宮収縮の程度が軽く、子宮口があまり開いていない場合は外来通院による治療でもいいのですが、子宮収縮が強く認められ、子宮口の開大が進んでいる状態では、入院して子宮収縮抑制剤の点滴治療が必要です。
 妊娠32週より前に破水した場合は、赤ちゃんが自分で呼吸できる状態になるまで抗菌剤を投与し感染を抑えることが一般的です。妊娠34週以降であれば、赤ちゃんは自分で呼吸できる可能性が高いので、赤ちゃんに細菌が感染する前に出産し、生まれた後に治療室での治療を行います。
 また、子宮口が開きやすい体質を子宮頸管無力症といい、どんどん子宮口が開大し、流産や早産になるので状況により頸管(子宮の出口)をしばることがあります。これを子宮頸管縫縮術といいます。

出典

日本産科婦人科学会:早産・切迫早産. https://www.jsog.or.jp/citizen/5708.(2024年4月4日閲覧)より改変転載
 
  1. 以下の妊婦は早産ハイリスクと認識する[3]
  1. 現症より:多胎妊娠、細菌性腟症、子宮頸管短縮
  1. 既往歴より:後期流産歴、早産歴、円錐切除歴、広汎子宮頸部摘出術後
  1. 子宮収縮の発来には、子宮収縮物質(プロスタグランジン[PGE2、PGF2α]、オキシトシン)や、そのレセプターおよび分解酵素の発現が関与している[4]
問診のポイント  
  1. 子宮収縮の有無を確認する。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
牧野康男 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:金山尚裕 : 特に申告事項無し[2024年]

ページ上部に戻る

切迫早産

戻る