今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 三宅秀彦 お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究科/東京女子医科大学 遺伝子医療センター(非常勤)

監修: 金山尚裕 静岡医療科学専門大学校

著者校正/監修レビュー済:2025/02/26
参考ガイドライン:
  1. 日本産科婦人科学会:産婦人科診療ガイドライン 産科編2023
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『産婦人科診療ガイドライン 産科編2023』に基づいてレビューを行った。
  1. 腹部外傷について、注意喚起(推奨度3)から「腹部外傷では軽症であっても常位胎盤早期剝離を起こすことがあり、子宮収縮を認める場合では胎児心拍モニタリングで継続的に監視する(推奨度2)」と変更した。
  1. 早期剝離を疑う血腫の観察後の妊娠継続について、継続が考慮できる諸条件に加え、「絨毛膜下血腫や慢性早剥羊水過少症候群などが存在する可能性を念頭に置き管理する」ことを追記した。
  1. 以下の追記を行った。
  1. 胎盤後血腫を認めた場合の鑑別疾患に、慢性早剥羊水過少症候群(chronic abruption-oligohydramnios sequence: CAOS)および絨毛膜下血腫
  1. 緊急帝王切開の決定と同時に輸血を準備する。
  1. 胎児死亡例では消費性凝固障害が著しく進行し、分娩までに凝固障害の改善と循環動態の安定を図る必要があり、血液検査の結果を待たずに直ちに新鮮凍結血漿と赤血球製剤の大量輸血を開始する事を考慮する。
 

概要・推奨   

  1. 常位早期剥離の初期症状は、切迫早産と極めて類似しているので注意を要する(推奨度2)
  1. 性器出血、下腹痛、子宮収縮に異常胎児心拍パターンを認めた場合は常位胎盤早期剝離を疑う(推奨度2)
  1. 腹部外傷では軽症であっても常位胎盤早期剝離を起こすことがあり、子宮収縮を認める場合では胎児心拍モニタリングで継続的に監視する(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 常位胎盤早期剥離とは、子宮体部に付着している胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出以前に剝離した状態である。
 
常位胎盤早期剝離

常位胎盤早期剝離とは、子宮体部に付着した胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出以前に剝離した状態である。

 
  1. 基底脱落膜の出血に始まり、形成された胎盤後血腫がこれに接する胎盤をさらに剝離・圧迫し、最終的には胎盤機能を障害する。
  1. 100妊娠あたり1例の頻度で発生する。
  1. 周産期死亡率は1,000分娩あたり119であり、母体死亡の原因ともなり、母児とも死亡に至る可能性の高いハイリスク疾患である。
  1. 脳性麻痺の原因として頻度の高い疾患である。
  1. 播種性血管内凝固症候群(DIC)をきわめて合併しやすく(<図表>)、児生存例の10%、胎児死亡例では40%に凝固障害が合併する。
  1. 妊娠高血圧症候群、慢性高血圧、常位胎盤早期剝離の既往、切迫早産、腹部外傷は危険因子である。<図表>
  1. その他のリスクとして、妊娠初期の出血例、胎児発育不全、喫煙、麻薬、妊娠中期のAFP高値、妊娠24週の子宮動脈波形異常(notch)がある。
 
常位胎盤早期剝離のリスク因子とオッズ比

出典

Tikkanen M: Placental abruption: epidemiology, risk factors and consequences. Acta Obstet Gynecol Scand. 2011 Feb;90(2):140-9. Table 1-3.
日本妊娠高血圧学会編:妊娠高血圧症候群の診療指針2021、p213、メジカルビュー社、2021年
 
  1. HELLP症候群を合併することがあるので注意する。
  1. 剝離した胎盤と子宮壁の間に血液が溜まり外出血をみない潜伏出血(concealed hemorrhage)(<図表>)を来す症例もある。外出血を伴わない場合、胎児死亡に至ることが多く、これまでと異なる腹痛、持続する腹部緊満感、胎動減少を訴える場合は性器出血の有無にかかわらず受診を勧奨する。
  1. 特異的所見として、子宮筋層ならびに広靱帯内に広く血液浸潤(溢血)像を示すクーベレール子宮(Couvelaire uterus)を示すことがある。
 
溢血斑(Couvelaire uterus)

軽度であるが、子宮体部右側に紫色の溢血斑が認められる。

出典

著者提供
 
  1. 症状発現から来院までの時間短縮への効果を期待して、すべての妊婦にリーフレットなどを用いて、初期症状(性器出血や腹痛、胎動減少など)を含めた情報を提供する。
 
  1. 妊娠高血圧症候群、慢性高血圧合併妊娠、常位胎盤早期剝離の既往、母体高年齢、多産、喫煙、前期破水、羊水過多症、血栓性素因、初回分娩が帝王切開――などが発症のリスク因子である(推奨度2)(参考文献:[1][2][3][4]
  1. まとめ:常位胎盤早期剝離の詳細な発症機序は不明であるが、血管の脆弱性や血管構築の異常、胎盤形成不全、炎症(~感染)が発症に関与すると考えられている。よって、これらの原因と関与する常位胎盤早期剝離発症のリスク因子(<図表>)が報告されている。
  1. 代表事例:いくつかの報告より、妊娠高血圧症候群(1.5~2.4倍)、妊娠高血圧腎症(1.9~4.4倍)、加重型妊娠高血圧腎症(2.8倍)、常位胎盤早期剝離の既往(3.2~25.8倍)、母体高年齢(1.3~2.6倍)、多産(1.1~1.4倍)、喫煙(1.5~2.5倍)、前期破水(1.8~5.9倍)、羊水過多症(2.5倍)、血栓症(1.4~7.7倍)――などが発症の危険因子であると、妊娠高血圧学会の診療指針(<図表>)ではまとめている。また、破水の場合では、時間の経過によりリスクは増大し、破水後48時間未満では2.4倍であるが、48時間以降では9.9倍に増加するとの報告もあり、経過観察のうえで注意が必要である。そのほかに、妊娠中期のAFP高値、妊娠24週の子宮動脈血流波形のnotchなどが報告されている。
  1. 結論:これらのハイリスク徴候を認める妊婦は、胎盤早期剝離のハイリスク妊娠として取り扱うことが推奨される。しかしながら、AFP測定および子宮動脈血流波形測定を一般的なスクリーニングとして行うことは、現在の一般診療の枠を超えていると考える。また、これらの要因が認められても一般頻度が1%ということを考えると、例えば既往歴がある妊婦でのリスクは5~25%でありすべての既往のある妊婦に発症するわけではないことを念頭に置きカウンセリングを行うべきである。
 
  1. 腹部外傷では軽症であっても常位胎盤早期剝離を起こすことがあり、子宮収縮を認める場合では胎児心拍モニタリングで継続的に監視する(推奨度2)(参考文献:[5][4]
  1. まとめ:妊婦の腹部外傷をみた場合、常位胎盤早期剝離の発症に注意しなくてはならない。
  1. 代表事例:全外傷症例の6%で早期剝離が認められ、腹部の重症な鈍的外傷の40%、子宮に圧力のかかるような軽い外傷でも3%に起こると報告されている。しかしながら、外傷の重症度から、常位胎盤早期剝離の有無を確認することは困難である。10分に1回の子宮収縮が持続する症例の約20%に常位胎盤早期剝離が合併するとされているため、受傷後2~6時間の経過観察が必要である。
  1. 結論:腹部外傷を受けた妊婦では、最低でも2時間は胎児心拍数モニタリングによる観察が必要であり、常位胎盤早期剝離の否定のために、胎児機能不全がないこと、胎児機能不全がないこと、性器出血や子宮収縮、子宮の圧痛などの症状がないことを確認する。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 妊娠週数、妊婦健診受診状況の確認。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
三宅秀彦 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:金山尚裕 : 特に申告事項無し[2024年]

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