今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 本間尚子1) 東邦大学医学部病理学講座

著者: 明石定子2) 東京女子医科大学医学部医学科 乳腺外科学

著者: 中村清吾3) 昭和大学医学部外科学講座乳腺外科学部門

監修: 中村清吾 昭和大学医学部外科学講座乳腺外科学部門

著者校正/監修レビュー済:2022/03/02
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 最新の知見に基づき定期レビューを行った。

概要・推奨   

  1. 30~40歳代の成熟期女性に好発する、硬結・腫瘤、疼痛、乳頭異常分泌などの症状を呈する乳腺の良性疾患である。
  1. 月経に伴う症状の周期性、内分泌療法への反応性、実験的エビデンスなどから、乳腺症は、女性ホルモンのアンバランス(エストロゲンのプロゲステロンに対する相対的過剰状態)に起因すると考えられている。
  1. 癌との関係性は低いが、組織診で増殖性病変、特に異型上皮過形成が確認された場合、および乳癌家族歴(第1度近親者)がある場合は、癌になるリスクが高く、厳重な経過観察が必要である。(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 乳腺症とは、30~40歳代の成熟期女性に好発する、硬結・腫瘤、疼痛、乳頭異常分泌などの症状を呈する乳腺の良性疾患である。妊娠中・授乳期および閉経後は減少するが、幅広い年齢層にみられる[1]
  1. 乳腺症の発生は、女性ホルモンのアンバランスに起因すると考えられている。
  1. 乳腺疾患のなかでは最も頻度が高いとされるが、正常との線引きなど、その定義・診断基準は明確でない。1つの疾患というよりも、ホルモンバランスの変化や加齢変化に伴う、乳腺の正常からの逸脱として捉えられている。
  1. 病理学的には、乳腺組織の増生、化生、退行などの変化が複雑に絡み合い、多彩な組織像が複合的に局面を形成している状態に相応する。
 
乳腺症の組織像

病理学的には、乳腺組織の増生、化生、退行などの変化が複雑に絡み合った状態で、乳管上皮過形成、乳管乳頭腫症、小葉過形成、閉塞性腺症、硬化性腺症、嚢胞、アポクリン化生など、多彩な組織像が複合的に局面を形成している状態である。
a:嚢胞、アポクリン嚢胞、乳管乳頭腫症など、多彩な組織像が複合的に局面を形成している。
b:アポクリン嚢胞(右上)と乳管乳頭腫症(下方)
c:閉塞性腺症
d:硬化性腺症

出典

著者提供
 
  1. 前癌病変であるか否かについては、乳腺症のごく一部に癌になるリスクが高いものがあるが、ほとんどは癌とは無関係と考えられている。
 
  1. 乳腺症の病因(O)
  1. まとめ:好発年齢(30~40歳代)、月経に伴う症状の周期性、内分泌療法への反応性、実験的エビデンスなどから、乳腺症は、女性ホルモンのアンバランス(エストロゲンのプロゲステロンに対する相対的過剰状態)に起因すると考えられている。
  1. 代表事例の説明
  1. 乳腺症患者の約7割は30~40歳代女性だった。腫瘤の2割弱、疼痛の5割強に、月経との関係がみられた[1]
  1. 実験的に乳癌を誘発しやすいラットの系において、相対的エストロゲン優位状態は、乳癌でなく乳腺症類似の病態を惹起した[2]
  1. 血中エストロゲンおよびプロゲステロン濃度を調べたところ、乳腺症患者群では対照群に比し有意に、相対的エストロゲン高値状態にあった[3]
  1. 結論:いずれのエビデンスも、エストロゲンのプロゲステロンに対する相対的過剰状態が、乳腺症の背景にあることを示している。
  1. 追記:文献[1]には、臨床的あるいは病理学的に乳腺症と診断された301例についての臨床・病理学的特徴がまとめられており、「乳腺症」患者の特徴がよく表れている。
  1. 乳腺症の病因が完全に解明されているわけではない。
 
  1. わが国における乳腺症の概念(OJ)
  1. まとめ:乳腺症についての明確な定義は存在しない。“乳腺症カンファレンス”での検討の結果、「乳腺症」についての臨床的概念が提唱された。
  1. 代表事例の説明:わが国では保険の適用上、乳癌でない場合、便宜的に「乳腺症」という診断名がバスケットネーム的に用いられている。このような状況を改善すべく、1994~97年、乳腺専門医21人からなる“乳腺症カンファレンス”が組織され、種々の検討がなされた[1]。病理学的には、7つの構成成分が複合的に局面を形成している状態<図表>、と提案された。各施設で「乳腺症」と病理診断された症例のうち、中央施設の検索でも「乳腺症」とされたのは約1/3で、半数近くの症例は正常範囲内であった[4]。“乳腺症とは、乳房に正常からの逸脱による腫瘤あるいは硬結、乳頭分泌などを認め、しばしば疼痛を伴う臨床的概念である。ただし、腫瘍性、炎症性の病変を除く”という概念が提唱された。
  1. 結論:この概念では、乳腺症の診断には、視触診・画像診断上、明らかな他覚所見が必要とされる。他覚所見のない乳房痛に対する保険病名は「乳房痛」「乳腺症疑い」とすることが提唱されている。
  1. 追記:“乳腺症カンファレンス”での検討内容は1冊の本にまとめられている[5]
  1. “乳腺症カンファレンス”での検討は、マンモグラフィ検診や針生検が普及する以前に行われたため、現状とややずれがあるが、検討内容は詳細で多岐にわたっている。「乳腺症」の定義づけの困難さも示されている。
 
  1. 欧米での乳腺症の捉え方(OG)
  1. まとめ:欧米では1980年代後期より、Aberrations of normal development and involution(ANDI)の概念が発達し、「乳腺症」は1つの疾患というよりも、ホルモンバランスの変化や加齢変化に伴う、乳腺の正常からの逸脱として捉えられるようになっている。現在、fibrocystic breast change(またはcondition)という呼び方が一般的である。
  1. 結論:Hughesらは、剖検例乳腺についての観察などをもとに、種々の良性乳腺病変は、正常な発達および退行性変化からの逸脱として捉えることができる、という概念を提唱した。従来、「乳腺症」とされてきたものも例外ではなく(表、赤字参照)、疾患として対処すべきなのは、異型過形成上皮が認められる場合や疼痛症状が強い場合とした[6]
  1. 追記:上記は良性乳腺病変全般に対して提唱された概念。発達期、成熟期、妊娠・授乳期、退縮期、各々の年齢層に特徴的な正常、逸脱、疾患の状態がまとめられている。
  1. ANDIという用語自体が広く受け入れられているとは言い難いが、概念は適切で、「乳腺症」の概念理解にも役立つ。
 
Aberrations of normal development and involution (ANDI)の概念

種々の良性乳腺病変は、生理的な変化からの逸脱という考え方が主流である。赤字は良性乳腺逸脱状態のうち乳腺症でもみられる所見である。

出典

Abstract/Text A framework for understanding and management of benign breast disorders is presented, based on the notion that most breast complaints can be explained as minor aberrations of the normal processes of development, cyclical change, and involution. The generic term ANDI (aberrations of normal development and involution) is introduced to allow breast problems to be placed within an overall framework of pathogenesis; this concept also permits more detailed individual assessment with respect to normality and disease. Fibrocystic disease and its synonyms are discarded in favour of terms that are strictly descriptive of the clinical and/or histological picture.

PMID 2890912
 
  1. 乳腺症には癌のリスクが高いか?(推奨度1 O)
  1. まとめ:組織診で異型過形成が確認された乳腺良性疾患症例では、乳癌になるリスクは通常の4.24倍である。異型のない増殖性病変のリスクは1.88倍である。乳癌家族歴は組織像と独立したリスク因子である。
  1. 代表事例の説明:1967~91年に組織診により良性乳腺疾患と診断された女性、9,087人の追跡調査結果(観察期間中央値15年)。組織像の内訳は、非増殖性病変66.7%、異型のない増殖性病変29.6%、異型過形成3.7%で、これまでに707例の癌が確認された。対照群に対する本コホート全体の乳癌リスクは1.56 (95%CI、1.45~1.68)だった。組織像ごとのリスクを比較すると、異型過形成で4.24 (95%CI、3.26~5.41)、異型のない増殖性病変で1.88 (95%CI、1.66~2.12)、非増殖性病変で1.27 (95%CI、1.15~1.41)だった。乳癌の家族歴は、組織像と独立したリスク因子だった。家族歴のない非増殖性病変ではリスクの増加は認められなかった。
  1. 結論:良性乳腺疾患と診断された患者における乳癌のリスク因子は、組織像(増殖性、異型)と乳癌家族歴である。
  1. 追記:上記は文献[7]のまとめであるが、同様の結果は複数の論文で報告されている([8]など)。
  1. 複数の大規模な検討で同様の結果が示されている。増殖性病変(特に異型上皮が認められた場合)あるいは乳癌家族歴がある場合には、厳重なフォローが必要である。なお、本研究の対象は、組織診で良性とされた症例であり、乳腺症症例ではない。組織診で良性とされたもののうち、異型を伴うのは4%(増殖性病変は30%)とされているが、そもそも画像上乳腺症を疑われた症例のうち、組織診にまで至るケースは限られるため、乳腺症のうち癌のリスクが高いものはかなり低いと考えられる。
 
問診・診察のポイント  
  1. 年齢、月経状況、妊娠・授乳歴、乳癌家族歴、症状、病悩期間、症状と月経との関係、薬剤投与状況(特にホルモン剤)などを聴取する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
本間尚子 : 特に申告事項無し[2025年]
明石定子 : 特に申告事項無し[2025年]
中村清吾 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:中村清吾 : 特に申告事項無し[2024年]

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