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著者: 岡村隆光 春日部中央総合病院 血液内科

監修: 神田善伸 自治医科大学附属病院 血液科

著者校正/監修レビュー済:2025/01/29
参考ガイドライン:
  1. 日本血液学会:造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)
  1. Khoury JD, Solary E, Abla O, et al. The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms. Leukemia, 2022; 36(7): 1703-19. PMID: 35732831
  1. McMullin MF, Harrison CN, Ali S, et al. A guideline for the diagnosis and management of polycythaemia vera. A British Society for Haematology Guideline. Br J Haematol, 2019; 184(2): 176-91. PMID: 30478826
  1. WHO classification of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues, 2017.
 
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』が公開され、本臨床レビューに関わる項目を確認した。診断や予後分類について大幅な改訂はなく、本レビューの内容に変更はなかったが、真性多血症のJAK2遺伝子検査について、保険未収載ではあるが、外注検査による実施は可能であることを追記した。

概要・推奨   

  1. 多血症は、赤血球が異常に増えてしまう疾患であり、循環赤血球量が増加する絶対的赤血球増多症と赤血球量の増加が無く循環血漿量の減少による相対的多血症(ストレス多血症)に大別される。
  1. 循環血液量は、日常臨床では、ヘモグロビン(Hb)とヘマトクリット(Ht)を評価の指標として用いることが勧められる。男性でHb 16.5 g/dL、女性でHb 16 g/dLを超えていれば真性赤血球増多症(PV)の可能性を含めた精査が必要である。
  1. Hb(g/dL)/ヘマトクリット(Ht)(%)が、男性で19.5/60、女性で17.5/55を超えていれば、循環赤血球量が増加していると判断して絶対的赤血球増加症として対応することが勧められる。
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  1. JAK2遺伝子変異は真性赤血球増加症のほとんどの症例で認められることから、疑われる症例では検査が勧められる。

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 多血症は、赤血球が異常に増えてしまう疾患であり、循環赤血球量が増加する絶対的赤血球増多症と赤血球量の増加がなく循環血漿量の減少による相対的多血症(ストレス多血症)に大別される。
  1. 赤血球増加症(多血症)の鑑別:<図表>
  1. 赤血球ヘモグビン(Hb)濃度が、男性では16.5 g/dL、女性では16 g/dL以上であれば真性赤血球増多症の可能性を考慮し精査が必要である。
  1. 無症状で他の目的で行った採血や健康診断などの際に発見されることが多いが、ときに、頭痛、頭重感、めまいなどを訴えたり、赤ら顔に気づいて検査されて発見されることもある。
  1. 相対性赤血球増加症は、急性の脱水でも起こるが、よくみられるのはストレス赤血球増加症(Gaisböck症候群)である。
  1. ストレス赤血球増加症は、中年のやや小太りの男性に多く、多くは喫煙者である。治療は禁煙を含めた生活習慣の改善である。
  1. 循環赤血球量の測定は一般的な検査でなく通常行われない。Hb(g/dL)/ヘマトクリット(Ht)(%)が、男性で19.5/60、女性で17.5/55を超えていれば、循環赤血球量が増加していると判断してよく、絶対的赤血球増加症と考えられる。
  1. 絶対性赤血球増加症には、骨髄増殖性腫瘍の1つである真性赤血球増加症(PV)とエリスロポエチン(EPO)産生亢進やHbの酸素親和性の異常による二次性赤血球増加症がある。
  1. 二次性赤血球増加症では、EPO産生を亢進させる基礎疾患を検討する。通常、基礎疾患の症状が主で多血症の症状は目立たない。
  1. 赤血球増加症(多血症)の分類と原因:<図表>
 
  1. 循環血液量の測定は日常臨床で行える検査でないが、ヘモグロビン(Hb)とヘマトクリット(Ht)で代用可能であるので、これらを参考にすることが勧められる(O)。
  1. 循環赤血球量と血漿量を測定してある真性赤血球増加症(PV)患者77例と相対的赤血球増加症(AP)患者66例で、HbあるいはHtにより循環赤血球量が増加していることを評価できるか検討した。男性ではPV患者の35%、AP患者の14%でHb値が18.5 g/dLを超えており、女性でもPV患者の63%、AP患者の35%がHb>16.5 g/dLで、Hb値だけでは循環赤血球量の指標として用いることはできなかった。Htの範囲は、PV患者の男性では50~73%、女性で44~68%であったが、AP患者では59%を超えた症例はなかった。Ht値が60%以上であれば循環赤血球量が増加していると判断していい[1]
  1. 循環血漿量と赤血球量を測定した105例の多血症患者(PV 25例、二次性多血症 35例、相対的多血症 28例、本態性血小板血症 7例)でHbとHtについて検討した。循環赤血球量増加はPVの診断において76%の感度で、相対的多血症との鑑別の特異度は79%であった。循環赤血球量はHb、Htレベルと相関し、PVの診断において追加的な情報とはならなかった。Hb/Ht値が、男性で19.5/58、女性で17.5/53を超えていた症例のほとんどで循環赤血球量が増加していた[2]
  1. 追記:循環赤血球量の増加は、真性赤血球増加症、二次性赤血球増加症でみられ、ストレス赤血球増加症ではみられないことから、これらの鑑別において重要であるが、日常臨床で通常行われる検査ではない。Hb値とHt値を循環赤血球量を測定する代わりに、循環赤血球量増加を判断する指標として用いることができる。Hb/Htが、男性で19.5/58、女性で17.5/53を超える多血症では循環赤血球量が増加していると考えてよく、男性でHt ≧ 60%、女性でHt ≧ 55%であれば、循環赤血球量が増加していると判断していい。
  1. なお、WHO分類第4版(2016年改訂)の真性赤血球増加症(PV)の診断基準では、Hb/Htが、男性で16.5/49、女性で16.0/48とより低い基準を採用しているが、この基準を超えているだけではPVと診断できない。
問診・診察のポイント  
 
問診:
  1. 喫煙歴

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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
岡村隆光 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:神田善伸 : 講演料(旭化成(株),MSD(株),ノバルティスファーマ(株),ファイザー(株),サノフィ(株),中外製薬(株),アステラス製薬(株),協和キリン(株)),奨学(奨励)寄付など(協和キリン(株),中外製薬(株))[2024年]

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