今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 小泉賢洋 東海大学 腎内分泌代謝内科

著者: 深川雅史 東海大学 腎内分泌代謝内科

監修: 花房規男 東京女子医科大学 血液浄化療法科

著者校正済:2024/09/04
現在監修レビュー中
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、原発性副甲状腺機能亢進症に対する手術の適応について文献をアップデートし本文を修正した。

概要・推奨   

  1. 高Ca血症に対する一般的治療行為として、ループ利尿薬を用いるべきではない。
  1. 原発性副甲状腺機能亢進症患者の10~20%では、intact PTH値がその基準値の上半分内か、わずかな逸脱にとどまっている(35~65 pg/mL)(推奨度2)
  1. 無症候性の原発性副甲状腺機能亢進症に対する手術(副甲状腺摘出術)の適応は、症例ごとに慎重に吟味する必要がある(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 高カルシウム(Ca)血症は、補正Ca濃度あるいはイオン化Ca濃度が基準値を超過する場合を指し、それぞれの基準値は補正Ca濃度が8.5~10 mg/dL程度、イオン化Ca濃度が1.15~1.3 mmol/L程度とされている。重篤になると、思考力低下、記銘力障害、意識障害などの症状を来すことがある。
  1. 実臨床において比較的高頻度に遭遇する異常であり、原発性副甲状腺機能亢進症と悪性腫瘍が原因の90%以上を占める[1][2]
  1. 原発性副甲状腺機能亢進症は外来患者における高カルシウム(Ca)血症の最も多い原因であり、一方、悪性腫瘍に伴う高Ca血症は入院患者における高Ca血症の最も多い原因である。
  1. 原発性副甲状腺機能亢進症の発症のピークは40~60歳代であり、以前は骨病変や腎病変を伴う症例がみられたが、最近は軽度の高Ca血症のみを呈する症例が多い。
  1. 高Ca血症が存在する状況下で、intact PTH値がその基準値の上半分(35~65 pg/mL)を超えていれば原発性副甲状腺機能亢進症の診断がなされ、超えていなければほかの原因の可能性を検討すべきである[3]
  1. 悪性腫瘍に伴う高Ca血症は、副甲状腺ホルモン関連蛋白質(parathyroid hormone-related protein:PTHrP)やPTHなどの液性因子を介するもの(humoral hypercalcemia of malignancy:HHM)と骨局所での腫瘍による崩壊・融解によるもの(local osteolytic hypercalcemia:LOH)の2つに大別される。
  1. 悪性腫瘍や高齢者における高Ca血症では、脱水とそれに伴う腎障害の存在が大きく影響しており、体液量および腎機能の評価を行うことが重要である。
問診・診察のポイント  
 
問診:
  1. 薬剤歴:ビタミンD(高齢者で骨粗鬆症などに対して活性型製剤が過量に処方されている症例が多くみられ、サプリメントにも含有されていることがある)、サイアザイド系利尿薬、ビタミンA、副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド、アバロパラチド)。
  1. 家族歴:多発性内分泌腺腫症(MEN I:下垂体+副甲状腺+膵β細胞、MEN IIa:副甲状腺、甲状腺、副腎髄質)、家族性低Ca尿症性高Ca血症。
  1. 活動性:不動(immobilization)の可能性。
  1. 既往歴:悪性腫瘍、慢性肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、結核など)、甲状腺機能亢進症。
  1. 症状:全身(倦怠感、易疲労感)、消化器(食思不振、吐気・嘔吐、消化性潰瘍、便秘)、心(QT時間短縮、高血圧、血管石灰化)、腎(腎濃縮力障害による口渇・多飲・多尿、尿路結石)、精神(思考力低下、記銘力障害、意識障害) ※特異的な症状に乏しい。
 
診察:
  1. 頻脈、血圧低下、起立性低血圧、口腔粘膜の乾燥、頚静脈の虚脱等の脱水を示唆する所見の有無。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
小泉賢洋 : 特に申告事項無し[2024年]
深川雅史 : 講演料(協和キリン(株),(株)三和化学研究所,キッセイ薬品工業(株),鳥居薬品(株),小野薬品工業(株)),原稿料((株)三和化学研究所),研究費・助成金など(協和キリン(株)),奨学(奨励)寄付など(協和キリン(株),(株)三和化学研究所,中外製薬(株))[2024年]
監修:花房規男 : 未申告[2024年]

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高カルシウム血症

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