今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 井上享 大分大学医学部腎泌尿器外科学講座

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2023/12/06
参考ガイドライン:
  1. 日本泌尿器科学会:陰茎癌診療ガイドライン2021年版
  1. 2019年度版NCCNガイドライン
  1. 2018年度EAUガイドライン
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 2019年度版NCCNガイドライン、2021年度版陰茎癌診療ガイドラインに基づき治療方針などについて加筆修正を行った。
  1. 病期分類は、2017年に最新改訂版が発表されたAJCCによるTNM分類第8版に変更された。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 陰茎腫瘍は男性に発症する悪性疾患の0.5%未満、わが国での罹患率は100,000人あたり0.2人とまれである[1][2]
  1. 50歳以上の比較的高齢者に発症することが多いが、若年での発症もまれでない[3][4]。米国において、2022年に推定される陰茎がんの新規症例数及び死亡数はそれぞれ2,070、470である[5]
  1. 発症の危険因子として喫煙、包茎、亀頭炎、尖圭コンジローマ等の性感染症や先行するヒトパピローマウイルス(human papilloma virus、HPV)の感染が挙げられる[3][4][6][7][8][9]
  1. ほとんどは原発性で、組織学的に扁平上皮癌が最も多い[7][8][9]
  1. 陰茎亀頭部、包皮、冠状溝に好発し、無痛性の丘疹、疣贅、硬結、潰瘍や不整に突出した腫瘤として認められる[8][9]
  1. 遠隔転移は初期にはまれであるが、鼠径リンパ節転移を来しやすい[3][4][6][7][8][9]
  1. 扁平上皮癌が陰茎癌の95%を占め、それ以外には基底細胞癌、肉腫、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、乳房外Paget病などの組織亜型がある。
  1. 進行扁平上皮癌ではSCC抗原の上昇をみることがあるが、早期診断には有用でない[7][10][11]。陰茎癌の腫瘍マーカーは存在しない。SCC抗原は陰茎癌患者の約25%未満で増加する。
  1. 確定診断は必ず生検によりなされるべきである[7][8]
  1. 局所浸潤の補助診断に超音波[12][13][14]とMRI検査[14][15][16]が有用であり、リンパ節転移と遠隔転移の診断にはPET-CT/CTが有用であるが、非触知鼠径リンパ節の診断精度は低い[7][8][17][18][19][20]
  1. 根治療法は手術であり、上皮内癌では陰茎温存手術も選択され得るが、浸潤癌では陰茎切断/全摘除術とリンパ節郭清術が基本である[7][8][9]
問診・診察のポイント  
  1. ほとんどは原発性で、50歳から70歳に発症のピークをみる。ただし、50歳以下の比較的若年での発症も26%程度と、まれではない[3][4]。全体としては年齢とともに発生率は増加する。平均年齢67歳。
  1. 発症の危険因子である喫煙、包茎や先行するhuman papilloma virus (HPV)の感染、尖圭コンジローマの既往に関する病歴を聴取する[3][4][6][7][8][9]。新生児期の割礼(陰茎包皮冠状切除)は浸潤癌の発症を予防するが、成人後の冠状切除は発症予防に寄与しないと考えられる[3]
  1. 受診まで長期間経過していることが多く[8]、いつから局所の異常を自覚していたかは重要である。
  1. 無痛性の局所症状、すなわち亀頭と包皮に好発する紅斑、丘疹、疣贅、硬結、潰瘍や不整に増大する腫瘤が唯一の自覚症状であることが多い。ときに排尿困難や、局所あるいは転移巣からの出血を訴える[8][9]
  1. 包茎では病変が包皮内板に限局し、包皮外板により隠れている可能性がある[8]。包茎では必ず包皮を翻転させて視診および触診を行う。
  1. 腫瘤が増大すると表面に感染を併発しやすく[8][9]、浸出液や膿の付着をみることがある。
  1. 局所の触診は海綿体浸潤の診断に重要であり、両側の鼠径部の触診にてリンパ節腫大の有無を確認する[7][8][9]。腫大リンパ節の部位と大きさ、個数および可動性の有無を診断する。
  1. 全身倦怠感、体重減少、食欲不振は、転移を伴う進行癌の徴候の可能性がある[8][9]

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
井上享 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:中川昌之 : 特に申告事項無し[2024年]

ページ上部に戻る

陰茎腫瘍

戻る