今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 尾田琢也 おだこどもアレルギークリニック

監修: 野口善令 豊田地域医療センター 総合診療科

著者校正/監修レビュー済:2024/11/13
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、最新のレビューやガイドラインを参照したが、本臨床レビューの内容においては変更なし。

概要・推奨   

  1. 血小板減少症は、血小板数により、軽度(血小板数100,000~150,000 /μL)、中等度(血小板数50,000~99,000 /μL)、重度(血小板数50,000未満)――の3つの重症度に分類されるが、血小板数と出血危険性との関連は絶対的ではない。
  1. 血小板数が5,000~10,000 /μLを下回った場合には、誘因なくしかも致死的となる出血を来す危険がある。また、粘膜出血があれば、出血危険性が高いと判断する。
  1. 外来患者の無症状で偶然発見された血小板減少と入院患者の血小板減少とでは原因や重症度が異なることに注意しながら、鑑別を進める。
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 血小板減少症は、正常の血小板数分布の下側2.5パーセンタイルを下回る場合と定義されており、血小板数の正常値下限は、150,000 /μLとされる。血小板数により、軽度(血小板数100,000~150,000 /μL)、中等度(血小板数50,000~99,000 /μL)、重度(血小板数50,000未満)――の3つの重症度に分類される。質的な異常がなければ、血小板数が50,000 /μLを下回らない限り、外傷や手術の際にも過剰な出血を来すことは少ない。また、血小板数が20,000~30,000 /μLを下回らない限り、誘因なく出血することは少ない。しかし、血小板数が5,000~10,000 /μLを下回った場合には、誘因なくしかも致死的となる出血を来す危険がある[1]
  1. このような目安があるものの、血小板数と出血危険性との関連は絶対的ではなく、安全な血小板数を決めるのは難しい。粘膜出血があれば、出血危険性が高いと判断する。
  1. 出血危険性を評価する際には、血小板機能異常や凝固異常の有無がないかどうかを確認することも重要である。
  1. 通常、血小板減少症の際には、出血危険性を考慮するが、一部の疾患では血栓症の危険性も考える必要がある。ヘパリン誘発性血小板減少症(動脈および静脈血栓)、抗リン脂質抗体症候群(動脈および静脈血栓)、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)(通常静脈血栓)、血栓性微小血管障害に分類される血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)、溶血性尿毒症症候群(hemolytic-uremic syndrome:HUS)、薬剤誘発性血栓性微小血管障害が代表例である。
  1. ワクチン起因性血栓性血小板減少症(Vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia:VITT)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ社)のまれな副反応である。ヘパリンの先行投与がないにも関わらず、ヘパリン誘発性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)と同様に動脈および静脈血栓を生じる。ワクチン投与後4〜28日後の発症に注意が必要である[2]
  1. 血小板は、骨髄で巨核球より作られ、全血小板のうち約1/3は脾臓にプールされている。8~10日の寿命を終えると、単球・マクロファージにより回収される。
  1. 血小板減少症は以下の3つのメカニズムにより引き起こされる。
  1. すなわち、①骨髄での産生減少、②脾臓での捕捉増加、③血小板破壊促進・消費、④輸液や輸血による希釈――である。
  1. 原因検索のためには、脾腫の有無を評価し、末梢血液塗抹標本の観察を行い、必要に応じて骨髄穿刺または骨髄生検を検討する。
  1. 偽性血小板減少症は、エデト酸(EDTA)を抗凝固薬として用いて採血を行った場合に、血小板が凝集したり、血小板が白血球へ付着したりしたために起こる検査上のアーチファクトである。
  1. 偽性血小板減少症は、病的意義はないが頻度はもっとも高い。抗凝固薬をEDTAからクエン酸かヘパリンに変えて採血すると血小板数は正常化する。
 
偽性血小板減少症の末梢血スメア

EDTAを用いた採血管で血小板数が51,000 /mm3であった。末梢血塗抹目視(Wright染色、×100)(A)では、凝集した血小板()が確認された。クエン酸を用いた採血管に同一患者の血液を採取し、末梢血塗抹目視(Wright染色、×100)(B)を確認すると、血小板凝集が抑制()されており、血小板数は309,000 /mm3であった。

出典

Lee AC.
Pseudothrombocytopenia: What every clinician should know.
Pediatr Neonatol. 2021 Mar;62(2):218-219. doi: 10.1016/j.pedneo.2020.12.002. Epub 2020 Dec 15.
Abstract/Text
PMID 33376066
 
  1. 骨髄での血小板産生減少は、幹細胞の障害や幹細胞の増殖を妨げるような障害で起こる。通常、複数の造血細胞系列に影響が及び、さまざまな程度の貧血や白血球減少を伴う。骨髄での巨核球細胞数の減少を確認できれば、診断できる。急性白血病、再生不良性貧血、悪性細胞の骨髄浸潤、骨髄線維症などの骨髄増殖性疾患、化学療法や放射線治療後、アルコール、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、銅欠乏、ウイルス感染(human immunodeficiency virus:HIV、cytomegalovirus:CMV、Epstein-Barr virus:EBV、水痘など)などにより起こる。薬剤の反応として巨核球単独の減少を来し、血小板が減少することもある。免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura:ITP)では、免疫性血小板減少以外に血小板産生障害によっても血小板が減少する。
  1. 脾臓での血小板捕捉増加は、脾腫により起こる。肝疾患に続発する門脈圧亢進症と骨髄増殖性およびリンパ増殖性疾患で起こる腫瘍細胞の脾臓浸潤などにより起こる。
  1. 血小板破壊促進・消費は、血管の異常、フィブリン血栓、血管内の人工物などが血小板の寿命を短縮させることで起こる非免疫性血小板減少症と、免疫学的機序を介してマクロファージの貪食により起こる免疫性血小板減少症がある。
  1. 非免疫性血小板減少症の原因として、敗血症、血管炎、TTP、HUS、DIC、抗リン脂質抗体症候群、妊娠高血圧腎症(子癇前症)、子癇、HELLP症候群、体外循環、巨大海綿状血管腫などがある。
  1. 免疫性血小板減少症の原因として、ウイルスあるいは細菌感染、薬剤、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)などがある。
  1. 薬剤誘発性血小板減少症のメカニズムには、骨髄での血小板産生減少と免疫性血小板減少がある。
  1. 抗腫瘍薬や大量のアルコール摂取により骨髄での血小板産生が減少することがあり、この場合は薬剤中止後も数カ月続くことがある。
  1. 薬剤によっては免疫反応により血小板減少症を起こすことがあり、この場合は薬剤中止後5~7日以内に血小板数は回復することが多い。
  1. 血小板減少症は、全身性エリテマトーデス(SLE)や抗リン脂質抗体症候群などの膠原病や骨髄異形成症候群などの血液疾患の初期症状であることがある。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. これまでに血小板減少を指摘されたことがあるか

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
尾田琢也 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:野口善令 : 特に申告事項無し[2024年]

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血小板減少症

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