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著者: 水野昌宣 済生会宇都宮病院 神経内科/岩手医科大学附属内丸メディカルセンター 脳神経内科・老年科

監修: 高橋裕秀 昭和大学藤が丘病院 脳神経内科

著者校正/監修レビュー済:2025/01/29
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2023
  1. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性散在性脳脊髄炎(平成23年3月)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2023』の発刊に伴い、以下について加筆・修正した。
  1. 同ガイドラインではADEMに関しても記載がなされている。
  1. 近年、MOG 抗体陽性例は,ADEM から除外される傾向にある。
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆・修正した。
  1. 痙攣発作時に新規抗てんかん薬であるレベチラセタムの点滴を使用することが増えているため、痙攣発作時に使用される薬剤の追記をした。

概要・推奨   

  1. 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の急性期にはメチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法が推奨される(推奨度1)
  1. ADEMの急性期にはステロイドパルス療法を用いるが、反応が不良な症例に対し単純血漿交換や免疫グロブリン大量静脈療法、シクロホスファミド静注療法が有効な可能性もある(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis; 以下ADEM)は、急性発症で単相性の経過をたどり、中枢神経に炎症機序による脱髄性病変が散在する疾患である。感染後、予防接種後、数日~8週間後(多くは1~3週間後)に発症する。
 
脱髄の説明

髄鞘が主に障害を受けることを脱髄という。
a:中枢神経のしくみ
b:脱髄をおこした中枢神経

 
  1. すべての年齢で発症し得るが、主に3歳から9歳の小児に多くみられる。わが国の報告では、15歳未満の小児は、罹患率が年間10万人あたり0.64人、男女比は2.3:1、平均年齢5.7歳[1]。また、小児脱髄性疾患の全国疫学調査では、罹患率は0.4人/10万人/年と、平均発症年齢5.5歳とされ、先行感染あり62%、ワクチン後発症が18%とある[2]。サンティアゴの報告では、罹患率が年間10万人あたり0.4人、ドイツで0.07人と地域差がみられた[3]
  1. ワクチン接種後のADEMに関しては、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチン、天然痘、黄熱病、腸チフス、結核、狂犬病、ポリオなどが知られる。発症率に関しては100万回のワクチン接種に対して1~3.5人とされる[4]
  1. 2021年8月の時点で、COVID-19感染後のADEMの報告が散見されてきている。基本的な治療は通常のADEMと変わらないものと思われるが[5][6]、急性出血性壊死性脳炎、急性出血性白質脳炎、致死性壊死性脳炎などさまざまな重篤な中枢神経疾患の症例報告もなされており、ADEMの重症型も含まれると思われる。また、COVID-19による肺炎などで全身状態が悪い症例も含まれており、予後に関してはデータの蓄積が必要と思われる。
問診・診察のポイント  
  1. 一般に用いられる診断基準や特異的なマーカーが存在しないため、病歴聴取が大切である。特に感染性(特にウイルス性)脳炎、多発性硬化症/視神経脊髄炎との鑑別は困難を要することもある。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
水野昌宣 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:高橋裕秀 : 特に申告事項無し[2024年]

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急性散在性脳脊髄炎(ADEM)

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