今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 早野聡史 熊本赤十字病院 内科

監修: 大曲貴夫 国立国際医療研究センター

著者校正/監修レビュー済:2022/07/20
参考ガイドライン:
  1. 日本神経感染症学会、日本神経学会、日本神経治療学会:単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン 2017
  1. 米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America):The management of encephalitis: clinical practice guidelines by the Infectious Diseases Society of America
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、疫学、問診・診察、診断、予後に関して改定を行った。
  1. 単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン 2017に基づき、改定を行った。

概要・推奨   

  1. 発熱・頭痛に意識障害、異常行動、神経巣症状を認める場合には、単純ヘルペス脳炎を含めた髄膜脳炎を鑑別とし、早急な診断のための検査を行うことが推奨される(推奨度1)
  1. ヘルペス脳炎に特異的な所見はなく、その他のウイルス性髄膜炎・脳炎でも同様の所見を認めるため、臨床所見・髄液所見より単純ヘルペス脳炎を疑う場合には、PCRなどの確定診断検査を行うことが必要である(推奨度1)
  1. 単純ヘルペス脳炎患者の初診時の髄液PCRは、発症72時間以内のごく早期の時期には偽陰性になる可能性がある。臨床所見と画像所見より単純ヘルペス脳炎を疑うが、髄液PCR検査が陰性の場合には3~7日後に再検査を行うことが推奨される(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患(疫学・病態)のまとめ  
  1. 単純ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)による脳炎で、ウイルス性脳炎の中で最も多く、全体の10%を占める[1]
  1. 単純ヘルペス脳炎の発生頻度は年間3.5人/100万人と報告されている[2]
  1. 成人の単純ヘルペス脳炎の90%以上がHSV-1による感染であり、HSV-2による感染は少ない[3]
  1. 単純ヘルペス脳炎は、症状だけでは脳炎・脳症との鑑別は困難であり、その他の感染性(ウイルス性、細菌性、真菌性)脳炎や辺縁系脳炎を中心とした非感染性脳症との鑑別が必要である。
  1. 季節性はなく、通年で生じ、すべての年代に認めるが、5~30歳と50歳以上の2峰性に多く、男女差はない[3][4]
  1. 無治療では70%が死亡し、適切な治療を行っていても半数以上に神経学的後遺症(記憶障害、人格障害、てんかんなど)を生じ[5]、治療後に再発する症例もある[6]
問診・診察のポイント  
  1. 症状は、発熱(90~100%)・頭痛(74~81%)に加えて、意識障害(97~100%)、人格変化(85~87%)などの症状が特徴的である[6]
  1. けいれん(38~62%)、運動障害(40%)、記憶障害(24~45%)、失語(36~76%)、自律神経障害(80%)、嚥下困難、異常感覚、幻臭、片麻痺・視野障害・片側空間無視などの神経巣症状が出現することもある[4][6][7][8]
  1. 発症時期ははっきりせず、数日から1週間の経過で神経症状が急速に進行することが多い。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
早野聡史  : 未申告[2024年]
監修:大曲貴夫 : 特に申告事項無し[2024年]

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単純ヘルペス脳炎

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