今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 福武敏夫 亀田メディカルセンター 脳神経内科

監修: 永山正雄 国際医療福祉大学医学部・成田病院 脳神経内科、集中治療部

著者校正済:2023/02/22
現在監修レビュー中
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 対麻痺の主原因である脊髄症の発症~進行経過の図表を加えて鑑別を分かり易くした。
  1. NMOSDの関連項目を増やし、特にMOG抗体陽性脊髄炎を設定した。
  1. COVID-19感染/ワクチン関連脊髄炎、IgG4関連肥厚性脊髄硬膜炎、脊髄硬膜動静脈瘻、脊髄ヘルニア、Stiff legs症候群、サーファー脊髄症を追加した。

概要・推奨   

  1. 頚椎症性脊髄症の術後の転帰を判断するには、臨床的要素や感覚誘発電位検査をもとにすることが勧められる。
  1. 頚椎症性脊髄症患者では、経過、年齢、筋電図検査などによる症状把握が推奨される。
  1. 圧迫性頚髄症の術後予後判定に術前・術後のMRIが有用である。
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  1. 中年の脊髄障害患者では、ビタミンB12の測定が推奨される。
  1. 血清ビタミンB12のカットオフ値にはコンセンサスがないが、脊髄障害患者では測定と早期治療が望まれる。
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 対麻痺とは両下肢の、対称性の運動麻痺(筋力低下)のことであり、歩行障害として現れる。その意味では本来、症候を指すが、家族性痙性対麻痺のように、病名として用いられることもある。
  1. 病変部位は通常、頚髄下部から腰髄の脊髄にあり、例外的に大脳や末梢神経に求められる。筋原性の両下肢脱力は対麻痺とはいわない。
  1. 上位運動ニューロン、すなわち錐体路を構成する皮質脊髄路の障害では、腱反射の亢進や筋緊張の痙性(痙縮性)も現れ、下位運動ニューロン障害では、筋萎縮や筋緊張の弛緩性も現れる。
  1. 伴い得る主な合併症候は、さまざまの体性感覚症候や膀胱直腸障害である。
  1. 主な内科的原因には、感染性ないし炎症性脊髄炎、HTLV-I関連脊髄症、視神経脊髄炎(NMO)、多発性硬化症(MS)、ビタミンB12欠乏症(亜急性連合性脊髄変性症)、甲状腺機能亢進症(低K性周期性四肢麻痺)、家族性(遺伝性)痙性対麻痺がある。ときに脊髄血管障害(脊髄梗塞、脊髄硬膜外血腫、脊髄動静脈瘻など)、銅欠乏性脊髄症、ヘモジデリン沈着症、アルコール性脊髄症、膵性脊髄症、血管内悪性リンパ腫症、ホモシスチン尿症、潜函病性脊髄症、両側前頭葉病変(大脳鎌髄膜腫、他)、ポリオ、なども原因となる。
  1. 手術もあり得る外科的な原因には、変形性脊椎症・椎間板ヘルニア、脊髄外傷、脊髄腫瘍、脊髄空洞症がある。脊髄血管障害には内科的病態と外科的病態が含まれる。
 
  1. 遺伝性痙性対麻痺は下肢の進行性の筋力低下と痙性によって特徴づけられる遺伝的に規定される疾患であり、大多数の臨床的・遺伝学的に不均一な疾患に含まれる。(参考文献:[1][2][3][4]
  1. 現在、59の対応する痙性対麻痺遺伝子を伴う79の異なる痙性歩行疾患の遺伝子座があり、すべての遺伝様式がある。SPG4が最も多い。
  1. 染色体劣性遺伝のものは多様な他の症状を伴い、複雑型といわれ、優性遺伝のものはたいてい純粋型である。
  1. 精神遅滞とMRI上の脳梁の非薄化はSPG11とSPG15を示唆する。
  1. 次世代シーケンスの導入により、他の神経変性疾患(筋萎縮性側索硬化症やニューロパチー、小脳性運動失調など)との遺伝子的・表現型的オーバーラップが明らかになっている。
  1. 神経病理学的検討は限られているが、軸索変性が皮質脊髄路と薄束の遠位端に及んでいる。
問診・診察のポイント  
  1. 最初の大きな目標は外科的原因かどうか、さらに緊急手術が必要かどうかを明らかにすることであるが、問診・診察で絞り込んだ後でMRI検査が必要となることが多い。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
福武敏夫 : 原稿料((株)医学書院)[2024年]
監修:永山正雄 : 特に申告事項無し[2024年]

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